課題を解決するデジタル活用の力~タケノ
株式会社タケノは、福岡県福岡市を拠点に50店舗ほど飲食店を展開している。主力業態の「竹乃屋」は地域密着型の飲食店として地元はもとより空港のフードコートや広島県への出店など積極的なエリア拡大を進めている。
仕入れ価格のばらつきと従業員教育の課題
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商品部兼エリアマネージャー
剛崎 誠 氏
タケノは多店舗展開を進める中で、仕入れ品のばらつきや従業員教育の属人化といった拡大期特有の課題に直面していた。同じ仕入れ品でもある店舗では100円、別の店舗では80円と異なる価格で仕入れていたという。また、新人従業員の教育が現場任せで進められた結果、教育の質やスキル管理にばらつきが生じ、運営効率が低下する要因となっていた。
剛崎「飲食業は人ありきの商売です。しかし、店長や従業員の経験や勘に依存している運営体制では、問題が発生する可能性も否定できません。そのため、数字に基づいた現場運営が欠かせません」
このような背景からタケノはインフォマートの『BtoBプラットフォーム受発注』を導入し、デジタル化による課題解決に踏み出した。
商品データを活用したコスト削減
『BtoBプラットフォーム受発注』の導入により、各店舗の仕入れ商品と単価を可視化。例えば、仕入れ品のマヨネーズについて、複数の仕入れ先と数量・価格を一覧化し、最も安価なものに統一することが可能になったという。こうして同一商品の最適価格を特定することで、価格の統一を実現した。

剛崎「本部が一括管理することで、現在は同一商品を統一価格で仕入れています。特に最近は仕入れ価格の値上げが多く、毎月のようにチェックしています。食材のほかにも、炭などの備品も消費量が多い店舗が分かったため、適切な使用方法を指導して消費量を抑えるようになりました」
さらに、仕入先に商品の一覧データを出してスケールメリットを活かした仕入れ交渉をした結果、発注作業の効率化や在庫管理の精度向上にも繋がったという。
剛崎「当社はこれだけ仕入れていますから、この価格に抑えられませんかという具体的な交渉ができるようになりました」
メニュー原価の即時把握と改善
同社では、メニューごとの原価を従来のエクセル管理から『メニュー管理機能』によるシステム管理へ移行している。これにより、理想の原価率と実原価の差異を早期に発見して改善に繋げる仕組みが整備されている。例えば、ある店舗で鶏肉の原価率が高くなっている場合、仕入れ量が多すぎるか、オペレーションミスによるロスが発生しているかなど、具体的な問題を現場で調査することが可能になる。
これにより、価格変動が激しい仕入れ品でも、迅速にメニューごとの原価を把握し、販売価格の適正化や仕入れ品が可能とる。
剛崎「最近は毎月のように仕入れ品の価格改定があります。当社ではエクセルで原価管理していましたが、時間がかかりまったく追いつけません。販売数の多いメニューの場合、店舗ごとにひと月の原価は10万円ほど差が出て、3カ月も放置すれば大きな損失になります。メニューごとの設定原価率と実際の原価率の差異をシステム上ですぐ確認することで、早期に原因を見つけられます」と説明する。
持続可能な成長を目指して
タケノが取り組むデータ活用術は、コスト削減や業務効率化にとどまらず、従業員の成長や店舗全体の競争力向上に繋がっている。
剛崎「データに基づく経営を実践して現場に数字を落とし込まなければ、たとえよいサービスを提供しても利益が残らずお店が存続できません。
店長、マネージャーは数字を確認しPDCAを回して、現場の行動を変え、それによる数字の変化を見て、利益を最大化することが本命です。それにより従業員が楽しく働ける環境づくりが可能になります」
多店舗の運営を標準化するデジタルツールの活用事例~明神丸
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経営本部営業部
部長 亀谷 領一 氏
株式会社明神丸は、高知県を拠点にカツオの藁焼きなど地元高知で培った鮮度の高い魚介料理を提供する居酒屋「明神丸」を運営。現在は四国エリアや東京、岡山、大阪などで13店舗展開している。
多店舗を運営する中で、特に店舗ごとの運営ルールのばらつきが問題だったと同社の亀谷氏はいう。各店舗の店長や従業員が独自の運営スタイルを採用する傾向があり、統一されたルールが浸透していなかった。さらに店長が変わるたびにルールが変更されるため、マニュアルが形骸化してしまうケースが多発していた。
また、四国、関東、関西に店舗が分散している状況では、本社から離れたエリアの店舗運営状況を正確に把握するのが課題だった。特に管理業務では、従業員の健康チェック表や冷蔵庫の温度記録、ロス管理などの多くが紙ベースで行われており、本部の管理が非効率的だったり、記録の正確さに欠けたり、目的が形骸化してしまうなどの問題が生じていた。
亀谷氏は「ルールを紙に記載しても、結局活用されず、現場での実施率が低かったのです。現場で何が起きているか細かく見えないことが悩みの種でした」と語る。これらの課題が、効率的な店舗運営を阻害し、多店舗展開のペースに影響を及ぼしていた。
ルーティンワークのタスク化と業務の可視化
明神丸では、多店舗運営の課題を解決するため、インフォマートの店舗オペレーション管理ツール『V-Manage』を導入し、店舗運営の標準化と効率化を進めた。まず、店舗ごとのルーティン業務を細かくタスク化し、それぞれの手順を詳細に記したマニュアルや写真を作成した。これにより、店長や従業員がやるべきこととその手順を一目で把握できる仕組みが整った。例えば、開店準備や閉店作業、清掃業務など、これまでは店舗ごとに運営スタイルが異なっていた業務を統一。これにより、店長が交代してもルールを維持できる環境が実現した。
亀谷「タスクを具体的に示すことで、従業員が迷わず作業を進められるようになりました」
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写真添付必須化による確実性の向上
明神丸では決まった時間の清掃や点検業務などでは、清掃後の現場を写真で撮影し、タスク完了の証拠として『V-Manage』の管理画面にアップロードすることを必須とした。これにより、従来のような紙によるチェックに比べて確実性が向上し、清掃や点検の精度が飛躍的に向上したという。
亀谷「掃除や点検の抜け漏れを防ぐために写真添付を取り入れることで、作業の質が目に見えて改善しました。現場の負担は増えるかもしれませんが、それ以上に効果を感じています」
記録類の電子化と一元管理
健康チェック表や冷蔵庫温度の記録、ロスの記録といった従来は紙で管理されていた項目を『V-Manage』でチェックシート化し、店舗から本部への郵送作業を廃止した。これにより、記録にかかる時間や郵送コストを削減できただけでなく、データの二次利用も可能になった。例えば、電子化された記録を基に、店舗ごとの業務実施状況を比較分析することで、改善ポイントを迅速に特定することができるようになったという。
また、エリアマネージャーが複数店舗の情報を画面上でチェックできるようになった点も大きな進展だ。管理者はV-Manage管理画面で各店舗から報告されたタスクや写真を一元的に確認できるため、現場での作業漏れや不備がすぐに特定でき、改善指導が行いやすくなった。
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亀谷「記録の電子化により、これまで紙で郵送されてきた膨大な量の資料が不要になり、店舗間の連携もスムーズになりました。本部と現場の情報共有がこれまで以上に迅速に行えるようになったことは、デジタル化の大きなメリットだと思います」
店舗ごとのカスタマイズによる柔軟な対応
明神丸では、『V-Manage』を管理ツールとしてではなく、店舗ごとの運営スタイルに合わせてカスタマイズして活用している。例えば、居酒屋業態の店舗とフードコート内の店舗では営業形態が異なるため、それぞれに最適化されたタスク設定を行った。これにより、各店舗が独自の特性を生かしながら、標準化された運営ルールを遵守できる仕組みを実現した。
亀谷「店舗ごとの業態や営業スタイルに合わせて柔軟に設定を変更できるのが『V-Manage』の強みです。このカスタマイズ性が、多店舗展開を成功させる鍵になっています」
標準化で得た成果とさらなる挑戦
店舗オペレーション管理ツール『V-Manage』の導入により、明神丸は業務の効率化と従業員の負担を軽減した。店舗間での運営ルールの統一が進み、従業員の教育や指導がスムーズに行える環境を整えた。亀谷氏は「店舗運営を数字で追えるようになり、業務のムラを減らすことができた。さらに、従業員の定着率向上にも繋がっている」と述べる。
今後も同社では、新たな店舗展開に向けてデジタルツールを活用し、効率的な運営を進めていく計画だ。これにより、多店舗展開のペースを維持しながら、地域ごとの特性を活かしたサービス提供を目指していくという。