外食アワード2024 外食部門
株式会社エターナルホスピタリティグループ 代表取締役社長CEO 大倉忠司氏
大倉氏は1985年に創業した「鳥貴族」で大衆焼鳥の最大チェーンとしての地位を築き上げた。2022年9月に「やきとり大吉」を傘下に収めたほか、「焼とりの八兵衛」やミシュラン一つ星の「焼鳥 市松」とも協業し、多様なニーズに応えるブランド展開を推進している。2024年には「Global YAKITORI Family」を掲げ、ロサンゼルスや台湾、韓国進出など、焼鳥を世界に広める挑戦を本格化させている。
「2024年は弊社にとって第2の創業と位置付ける年でした。社名を『エターナルホスピタリティグループ』に変更し、本社移転、海外進出といった新たな挑戦を進めてまいりました。これらの取り組みを支えるのが、『Global YAKITORI Family』という長期ビジョンです。日本の焼鳥文化を世界の共通言語にし、次世代にも受け継がれる価値を創造することを目指しています。
2009年に外食アワードを受賞し、今回15年ぶりに再び評価いただきました。次は15年後の2049年に3回目の受賞を目指し、尽力し続けていきたいと思います」
株式会社バルニバービ 代表取締役会長CEO兼CCO 佐藤裕久氏
佐藤氏は「魅力的な飲食店が人を集め、街を活性化させる」という理念をもとに、バッドロケーション戦略を確立。繁華街ではない二等・三等地でも、飲食店を核に地域全体の価値を高める取り組みを続けている。兵庫県淡路島で手掛けたカフェ&レストランとオーシャンビューの宿泊施設のプロジェクトで地方創再生を実現した。
「兵庫県淡路島プロジェクトをはじめとする地方創再生の取り組みが評価されたことを嬉しく思います。建築費や食材、人件費の高騰など、外食業界を取り巻く環境は厳しい状況が続いています。それでも私たちは地方の可能性を信じ、新しい価値を生み出すことに挑み続けています。地方の土地に人が集まり、その土地が生まれ変わる。我々の取り組みはニッチな部分が多く、飲食業の本流とは異なるアプローチです。それが私たちのチャレンジだと考えています。
今年は新たに南あわじにも取り組みを広げていきます。外食業界における別視点からの可能性を示し続け、夢のある未来を創り上げたいと思います」
光フードサービス株式会社 代表取締役社長 大谷光徳氏
大谷氏は、立ち飲み文化は浸透しないと言われていた名古屋で、2008年に「立呑み 焼きとん 大黒」をオープン。その後も立ち飲み業態にこだわり続け、名古屋を中心に店舗を拡大。名古屋の立呑みと言えば大黒として定着させた。「10坪のイノベーションを起こす」というスローガンのもと、顧客との近い距離感を活かした接近戦や、店長やスタッフを巻き込んだファン化施策などを展開。現在は「大黒」「魚椿」など61店舗に成長している。2024年2月にはコロナ後初となる居酒屋チェーンの上場を達成し、居酒屋業界に新たな光をもたらした。
「創業から17年、小さな立ち飲み業態から始まった私たちが、ここまで成長できたことに驚きと感謝の気持ちでいっぱいです。立ち飲み文化は、飲食のスタイルを超え、人々が気軽に集まり、交流を楽しむ場を提供するものだと考えています。
これまで私たちが築いてきたのは、目の前のお客様を大切にするという信念です。開店当初にご来店された常連のお客様が、長年にわたり通い続けてくださる。そうした方々との絆が、私たちの成長を支えています。社内ではこれを『ライフタイムバリューの最大化』と呼んでおり、この理念が我々の強みであり成長の原動力となっています。
2024年に上場したことを通過点とし、今後もお客様に愛される店づくりを目指して努力を重ねていきます。小さな業態でもビジョンを持ち努力を続ければ、夢を形にすることができると信じています」
フランチャイズビジネスインキュベーション株式会社 代表取締役社長 山本昌弘氏
山本氏は、2022年9月に横浜で「鰻の成瀬」をオープン後、2年で200店舗を突破。2024年11月には300店舗を達成し、鰻専門店として日本一の地位を確立した。非日常食であった鰻を日常食として広めるため、提供スピードを3倍以上に短縮し、待ち時間10分を実現。アルバイトのみで運営できる仕組みを開発するなど、革新的なフランチャイズパッケージを構築した。
「私は2年半前まで飲食業界の素人で、飲食ビジネスの経験がありませんでした。そんな私が、居抜き物件で何か始めてみようという気持ちで鰻に挑戦しましたが、2年半後にこれほどの規模に成長していることに、自分自身が一番驚いています。
当社は非常に小さな本部で、社員は10名にも満たない規模です。スタッフや業者様、何より加盟店オーナーの皆様のお力添えがあったからこそ、ここまで来ることができました。こういった成果を礎に、さらに多くの方々に向けて『鰻の成瀬』というブランドを発展させていきたいと思います」
外食アワード2024 中間流通・外食支援事業者部門
一般社団法人日本飲食団体連合会 専務理事 高橋英樹氏
高橋氏は、コロナ禍で危機に直面した外食および関連事業者の声をまとめて国政に届けるため、2021年に日本飲食団体連合会(食団連)を設立。政府や与野党、中央省庁との意見交換を重ね、外食業界の課題解決に向けた具体的な政策提言を行ってきた。2023年5月のコロナ分類変更、扶養控除・配偶者控除の限度額引き上げ、コロナ資本性劣後ローンの改善、有事に備えた業界ガイドラインの作成など、外食産業の価値向上に向けた多岐にわたる成果が評価された。
「今回の賞をいただけたのは私一人の成果ではありません。コロナ禍の中で、故・服部会長のもとに全国の飲食業界の有志が集まって団体を作り、現在までに理事の皆様をはじめボランティアで活動いただいている方々のおかげです。
コロナを機に私たち外食産業は多くのことに気づかされました。肝心な足元を守るには、まず既存のルールを知り、その上で自分たちでルールを作ることが必要だと痛感しています。この受賞で調子に乗ることなく、天国で見守っている服鳥会長にしっかり報告できるよう、これからも精進したいと思います」
株式会社タイミー 代表取締役 小川嶺氏
小川氏が提供するスキマバイトサービス「タイミー」は、「働きたい時間」と「働いてほしい時間」のマッチングを可能にした。マッチング率の高さや迅速さにより、飲食店の柔軟なシフト調整を可能にし、飲食業界を中心に人手不足の解決に貢献している。お気に入り機能や労務管理機能を活用して、質の高い人材の確保も実現。コロナ禍後の新しい働き方を提案し、スキマバイト市場の成長を牽引している。
「タイミーは2016年の創業当初から外食産業を中心にご支援させていただいており、この業界には特別な思い入れがあります。現在、アプリの会員数は1000万人を超え、マッチング率も85~90%と高く、多くの求人が実際に稼働しています。これもひとえに、外食産業の皆様のご支援のおかげです。
『人が取れない』『アルバイトが決まらない』『すぐ辞めてしまう』といった外食業界の課題に、今後も真摯に向き合い、さらに質の高いサービスを提供することで、業界を支えていきたいと思います」
今回の外食アワード2024では、飲食文化を広げる挑戦や地域活性化への貢献、人手不足の解消、業界全体を支える革新的な仕組みづくりなど、外食業界が抱える課題に挑み、新たな価値を創出する取り組みが高く評価された。こうした挑戦は外食業界の発展を持続させ、業界全体に希望をもたらす。今後の事業者による新たな挑戦や革新がどのような形で生まれるか注目したい。