給食業界における現状の課題
給食業界は学校や病院、介護施設など1度に大勢へ向けて食事を提供する役割を担っている。しかし抱えている課題も多く、持続性のある経営をするためには解決すべきことがいくつもあるのが現状だ。ではまず給食業界には、どういった問題があるのか見ていこう。
慢性的な人手不足
現場は基本的に早朝出勤しなければならず、一日中立ちっぱなしで室温の高い部屋での肉体労働が求められる。
加えて労働環境に見合うだけの報酬が得られず、給与面での魅力を感じにくいことも要因の1つと言えるだろう。例えば国税庁の「令和5年分 民間民間給与実態統計調査」では、平均給与の項目で宿泊・飲食サービス業が2,641,000円と最も低い結果となっている。
参考:国税庁「令和5年分 民間民間給与実態統計調査(p143より)」
少子高齢化が進む日本では、飲食のみならず多くの業種で人手不足に悩まされている。そんな中で新たな人材を確保するには、労働環境の改善や給与・待遇の見直しなどの様々な工夫を凝らし、魅力ある職場づくりを行うことが大切だ。
材料・人件費等のコストの高騰
世界的な情勢の変化による石油価格の高騰や為替円安などの影響で、原材料となる食品価格が上がり続けている。それと同時に最低賃金や社会保険料なども年々上昇しており、様々な要因が重なりあって人件費を含めた様々なコストが高騰している状況だ。
そのため現状のサービスや人材を維持するだけでも運営コストは増大しているため、給食業界はより費用対効果の高い施策や利益を出さなければならない状況になっている。
HACCPへの対応
2021年6月より、HACCPに基づいた衛生管理の完全義務化が開始された。これにより食品業界では、以前にも増して食中毒や異物混入などへの予防・対策を講じる必要がある。
しかしマニュアル作成や日々の記録・管理、安全性や品質の向上など、実施するべき項目はとても多い。衛生管理の徹底を従業員へ周知することも必要不可欠であり、社内全体で取り組む大きな課題の1つと言えるだろう。
関連記事:HACCP義務化への飲食店の対応は?わかりやすい解説と対応Q&Aまとめ
給食業界のDXがもたらすメリット
給食業界が前述した様々な課題に対応するにも、人材をすぐに確保するのも難しく、増大した分の費用を売上で回収することも容易ではない。そこで、比較的実施しやすい対応策の1つとして挙げられるのがDX(デジタルフォーメーション)である。では具体的にDXには、どんなメリットがあるのか紹介する。
業務の効率化や発注・管理の手間削減
DXの大きなメリットとして挙げられるのが、日々の業務改善による効率化や自動化である。例えばAIによる献立作成システムでは、用意された料理のデータから栄養バランスや原価、調理方法などに応じて柔軟な立案を行うことが可能だ。
必要な食材の量を事前に把握し業務計画を立てやすくなるため、準備から調理、配膳までの業務がスムーズになり、従業員の業務負担を軽減できるメリットが挙げられる。
また受注処理などの自動入力ができるケースもあるため、同じ内容を繰り返し打ち込むといった手間を省きやすい。デジタル化することで原材料の在庫状況や使用量などを把握しやすくなるため、時間がかかる煩雑な事務作業などの手間を削減することも可能だ。
ペーパーレス化などによるコスト削減
デジタル技術やツールにより業務の効率化が実現できれば、様々な面でのコスト削減につながる。具体的には、以下のようなものだ。
- 業務の効率化や自動化による人件費の削減
- 価格の安定した食材選びと最適なメニュー立案により仕入れコストを削減
- 発注の最適化や適切な在庫管理による食品ロスの削減
- ペーパーレスによる紙の削減
- マニュアル化やオンライン研修を利用した教育コストの削減
事務作業がアナログなままだと、誤字脱字や数え間違いなどの人的ミスも発生するため、過剰在庫や食品ロスなども増えてしまいがちだ。デジタル化により作業の標準化を図るだけでも、一定の改善が見込めるのもDXの大きなメリットと言える。
HACCP対応の効率化
給食現場のDXは、HACCP対応にも様々なメリットをもたらす。例えばHACCPに基づいた衛生管理では、特に重要とされる工程を「重要管理点」に設定し、衛生面における大きなリスクを抑える取り組みが求められる。
よくある例として挙げられるのが、加熱工程における温度や時間の管理などだ。DXによりリアルタイムでの温度管理やデータ記録を行うことで、異常やトラブルがあった際に早急な対応が可能になる。加えて、記入漏れなどのヒューマンエラーを防げるので、手作業よりも高精度な記録を実施できるのも大きなメリットだ。
また従業員の衛生教育や訓練などもDXで行いやすい。写真や動画を使ったマニュアルの作成、手順やルールを遵守した手洗い消毒の実施状況の確認などが挙げられる。社内全体の意識を高めて徹底したHACCP対応を行う際にも、DXによるメリットは大きいだろう。
給食業界のDXによる課題解決方法3選
では給食業界における現状の課題を解決するためには、どのような対策を実施するべきなのだろうか。具体的な方法について紹介していく。
受発注システムの導入によるコスト削減
給食業界では食材の仕入れから調理、在庫管理など多くの作業が必要になり、これらの業務には少なくない人件費がかかる。加えて原材料の高騰などにより、原価管理の重要性も高まっている。そうした課題を解決する方法として、受発注システムの導入が挙げられる。
例えば『BtoBプラットフォーム 受発注』などの受発注システムでは、献立ソフトや会計ソフトなどと連携し、食材の発注から請求処理までを一元管理することが可能だ。発注業務をWeb上で完結することにより、FAXや電話などのアナログ業務をなくしたペーパーレス化を実現。蓄積されていく取引データから原価率や月次決算などを算出する機能もあるため、原材料の高騰などにも素早く対応できる。
また給食現場では、管理栄養士が作成した献立に基づき必要な食材の発注を行う。しかしその作業には多くの時間がかかり、使用する頻度の多い食材などを把握しなければならず、担当者以外が発注業務を行うことが難しくなりがちだ。
そんな時も受発注システムであれば、献立に必要な食材が登録・リスト化されており、その中から商品を選んで数量を入力するだけで発注が可能になる。人件費などのコスト削減だけでなく、特定の担当者に依存しない業務の標準化を目指すことにもつながる。
定型業務の管理を店舗オペレーションツールで最適化
慢性的な人手不足にある給食業界では、いかに限られた人員で現場の業務を回せるかが重要になる。そこでDXによって日々の業務を効率化し、従業員の負担を軽減するためには、店舗オペレーションツールの導入が手段の1つになるだろう。
例えば『V-Manage』のような業務管理ツールでは、タスク管理機能により業務のサポートを実施できる。1日の業務を時系列で一覧化し、マニュアルとも紐づけられるため、従業員がその時にしなければならない業務を正しい順序で遂行することが可能だ。
業務の完了報告や対応スタッフなども記録できるので、タスクの実施状況を管理者が把握しやすい点も大きなメリットとなる。業務に不備や作業遅れが発生していれば一目瞭然のため、改善点もすぐさま導き出せるだろう。日々の業務効率を高めるのであれば、業務管理ツールの利用も視野に入れておきたい。
DXで社内の衛生管理を強化
HACCP対応を実施するには、原材料の搬入から保管、調理工程などの様々な場面で食品衛生上の厳しい管理が求められる。しかし日々の業務をこなしながら細かいチェックを行うのは容易ではなく、多くのリソースを割かれてしまう。そうした手間を限りなく削減する際にも、DXは非常に有効な手段となりうる。
『BtoBプラットフォーム 規格書』では、成分やアレルギー表示なども一元管理でき、学校給食のアレルギー表示等にも活用できる。『BtoBプラットフォーム 受発注』と連携してメニュー管理機能を利用すれば、加熱工程などの細かい指示をマニュアル化し、衛生面の管理や注意喚起にも役立つ。複雑化しやすいデータ管理を効率化するのなら、早めに管理システムへの移行を検討してみてはいかがだろうか。
DXで給食業界の課題解決へ
現代におけるIT技術の進歩は凄まじく、AIなどの台頭により人材の代わりとなる労働力も増えつつある。そんな中でDXを行うには、自社の目標と課題を明確化し、それに向けてどんな準備をすればいいのかを確認する必要がある。
優先すべき課題に迷う場合、現場の従業員の声を聞くのも1つの方法と言える。ゴールを設定しそれに向けて必要な準備を行うことで、スムーズなDXを実現しやすくなるだろう。会社にとって有効的にDXを実施できれば、IT化が進む現代では大きな価値となり得るため、検討しよう。