飲食店が取り組むべきDXとは?バックオフィス業務におけるITツールの活用事例を紹介

飲食・宿泊2024.03.07

飲食店が取り組むべきDXとは?バックオフィス業務におけるITツールの活用事例を紹介

2024.03.07

飲食店が取り組むべきDXとは?バックオフィス業務におけるITツールの活用事例を紹介

  • bnr_menu-plus_300.jpg 買い手
  • bnr_v-manage_300.png 買い手

様々な業界でDXが推し進められる中、飲食業界においてもその重要性は高まっている。DXは人手不足の解消や業務の効率化など、飲食店の課題解決に大きく貢献する手段になるからだ。

DXが「デジタル技術を活用した企業経営の取り組み」とわかっている方は多いだろう。とはいえ、具体的にどんな取り組みを実施すればよいのか、どのような方針を立てればよいのか、いまいち理解しきれていないという方も少なからずいるはずだ。

そこで今回は飲食店におけるDXの必要性やメリット、DX事例などについて解説していく。

目次

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

DXとはデジタルトランスフォーメーションの略語で、データやデジタル技術の活用によりビジネスモデルや企業そのものの変革を図る施策のことである。1つの例としては、ITツールを導入することで生産性や従業員満足度の向上、新たな価値の創出を目指すことが挙げられる。

そして重要なのは、デジタル技術を取り入れるのはあくまでDXの手段の1つということである。ITツールなどによる業務の改善や課題解決を通じて、未来を見据えた大きな利益につながる取り組みを実施することが本来の目的だ。

飲食店におけるDXの必要性

DXの手段の1つとして、クラウドサービスやAIロボットなどのIT技術の導入が挙げられる。しかし、一定の費用が掛かり、専門的な知識が求められるなどの理由からなかなか手を出せていない企業も多い。特に飲食店の中には、中小企業や個人事業主が多く、人的なリソースが回らないという懸念もある。

とはいえ、中長期的に物価高騰や人件費上昇によるコスト削減などの課題が顕著になっている今、飲食店でDXを推し進める有用性は高まっている。例えば中小企業庁のデータでは、「宿泊業・飲食サービス業の事業方針」としてデジタル化の優先順位がコロナ禍前後で2割ほど高くなっている傾向が示されている。

参考:中小企業庁「第2節 中小企業におけるデジタル化とデータ利活用

大手飲食チェーンでは、以前からデジタル技術の導入によるDXを推し進めているところも多い。しかし今後は、中小企業でも前向きに検討する必要性は高まっている。経済産業省でも、実践の手引書として中小企業向けのDX関連資料を公開しているため、ぜひとも参考にしてほしい。

参考:経済産業省「デジタルガバナンス・コード 実践の手引書

飲食店でDXを実施するメリット

飲食店でDXを推進することは、店舗で懸念される様々な課題の解決に役立つ。具体的には、以下のようなメリットが挙げられる。

人手不足の解消

飲食業界でよく取り上げられる課題として、慢性的な人手不足が挙げられる。以前まではコロナ禍の影響で客足が減少していたため、人員カットを余儀なくされていた店舗もあるだろう。しかし消費者の行動抑制なども緩和され飲食店への客足も戻りつつある現状では、多くの店舗で人材の確保に四苦八苦している。

デジタル技術を取り入れDXを推進することは、業務の自動化や効率化などにつながるため、従業員数の少ない店舗の業務負担を減らせる。例えば、仕入れ金額やメニューのレシピ、勤怠情報などのデータをクラウドサービスで管理することだ。これまで紙の帳票やエクセルに手入力していた事務作業を削減できれば、他の重要な業務に回せる時間が増えるのも大きなメリットとなる。

従業員教育や労働環境の改善

日々の業務に追われる飲食店では、接客や調理などの目の前の仕事で手一杯になり、新人教育や衛生管理などやりたいことがあっても優先順位の関係でなかなか手につけられない場合もあるはずだ。しかし後回しになりがちなタスクも、業務オペレーションの管理ツールなどで円滑に行えるようになる。

例えば、毎日決まって行うタスクの管理や業務マニュアル、チェックシートなどをツールで一元管理しておく。それによって従業員が今やるべきことをスムーズに確認でき、新人スタッフがマニュアルを見ながら能動的に仕事を覚えやすい。逐一指示を出していた店長や他の従業員の業務負担を削減できるため、結果として生産性の向上や労働環境の改善につながる。

人的ミス(ヒューマンエラー)の削減

データ入力業務を手入力や目視で確認している飲食店の場合、どうしても打ち間違いや計算ミスなどが発生することもある。そして一度ミスが発生すれば、状況の把握や修正作業などに時間を取られ、取引先へ迷惑をかけてしまうことが考えられる。

DX推進の過程でそうした様々なアナログ業務をデジタル化できれば、定期的な入力業務で起こるヒューマンエラーを回避しやすい。例えば、クラウドシステムの自動発注や原価計算、棚卸などの機能の活用だ。できる限り人の手で作業する部分を減らし、空いた時間をミスがないかの確認作業に回すことでより正確な情報管理を実施しやすい。

飲食店の業務別に見るDX事例

DXを推し進める上で考えなければならないのは、どの業務に焦点を当てるかである。というのも飲食店の規模や業態などによって、改善すべき点は異なるからだ。ここからは、飲食店の業務別にどのようなDX事例があるのか見ていこう。

株式会社Key table:受発注業務の管理体制の強化と効率化を実現

株式会社Key tableは2018年に創業し、「炭火野菜巻き串と餃子 博多うずまき」をはじめとした居酒屋ブランドなど18店舗の飲食店を経営している。事業規模が拡大していく中で、少ない人員による経理業務の限界化や手作業による入力ミスの発生が顕著になった。

そこでインターネットでできる受発注システム『BtoBプラットフォーム 受発注』を導入し、本部による一元管理と各エリア担当とのスムーズな情報共有を実現。それによりチェック体制の強化や棚卸しの作業時間を大幅に削減することに成功している。業務の効率化だけでなく、従業員の負担を軽減できた事例であることが伺える。

課題・経理業務を手作業で行うことによるミス
・担当者1人による作業で業務過多
実施内容・『BtoBプラットフォーム 受発注』の導入
・本部の担当者が一元管理
・各エリアマネージャーやブロック長への情報共有
成果・経理業務のチェック体制の強化
・2~3時間かけていた棚卸し作業を大幅短縮
・店舗毎の単価管理が正確に

参考:創業4年で飲食店18店舗を展開。ベンチャー企業の発注・請求書管理・棚卸改革方法~Key table

株式会社セカンドアロー:店舗のマネジメント業務をシステム化することで労働環境を改善

株式会社セカンドアローは、串カツ田中ホールディングスのグループ会社として2020年に設立された。主に「タレ焼肉と包み野菜の専門店 焼肉くるとん싸다」と「鳥と卵の専門店 鳥玉」を経営しており、フランチャイズ事業やM&A、システム開発なども担っている。

事業拡大に伴い、店長業務の負担増や管理職の育成が課題として挙げられた。それらの対策として店舗オペレーションの管理ツール『V-Manage』を導入し、マネジメント層へ周知することでIT人材の育成も行っている。結果として店長の労働時間を削減し、各店舗で安定した新人教育を実施できるようになったことで従業員満足度も向上した。DXに取り組むことで、労働環境の改善に大きく貢献したことを示している事例といえる。

課題・店長業務の負担が大きく、長時間労働も度々発生
・各店舗のチェック作業がきちんと出来ているか不透明
・新人教育にリソースが割かれ、他の従業員のパフォーマンス低下
・本部と店舗のコミュニケーションが複雑化
実施内容・全店舗へ『V-Manage』の導入
・各店舗に1台ずつタブレット端末の設置
・管理システムの使い方をマネジメント層へ周知
成果・管理・チェックツールの一元化で確認作業の負担を軽減
・店長の勤務時間を1~2時間短縮、午後休の取得が可能に
・新人教育にかかる従業員の負担やストレスを軽減
・本部と各店舗のコミュニケーションが円滑化

参考:「焼肉くるとん싸다」で『V-Manage』導入。アルバイトが活躍、社員の労働時間軽減に~株式会社セカンドアロー

株式会社TOMOSANKAKU:膨大な作業量の原価管理をメニュー管理システムで自動化

株式会社TOMOSANKAKUは、「焼肉酒場ともさんかく」6店舗とセントラルキッチンを経営している。コンセプトとなる「旨い肉をもっと気軽にもっと安く」をウリに、コスパを重視する若い世代から高い人気を得ている。

同社は以前、原価管理をエクセルで行っていたため、納品書からのデータ入力作業や確認が困難な状態となっていた。加えて情勢の変化により原材料が高騰することで、仕入れ品の価格が上昇した際にも気づかないことがしばしばあったという。

そこでメニューごとの原価計算を自動化するツール『メニューPlus』を導入し、いつでも迅速に確認できる環境を整えた。原価の見える化により、提供している数多くのメニューの販売価格や利益率の維持を実現している。

課題・原価管理の作業量が膨大
・原材料の価格把握が困難
実施内容・『メニューPlus』の導入
・ツールへ合計530品ほどのメニューを登録
成果・月間の人件費を4万円ほど削減
・システムの自動算出でメニューの原価もスムーズに把握

参考:ITで月間5日分の工数を削減。原価の自動計算で食材高騰に対応~焼肉酒場ともさんかく

株式会社心斎橋ミツヤ:商品規格書の一括管理で成分表示やアレルギー情報のサーチを高速化

株式会社心斎橋ミツヤは、「心斎橋ミツヤ本店」といった洋食ファミリーレストランなど30店舗を経営している。出店先の多くは、ショッピングモールや百貨店などだ。

同社は『BtoBプラットフォーム 受発注』で取引業務をシステム化するだけでなく、『BtoBプラットフォーム規格書』の導入でメニューのアレルギー情報を管理している。これにより、百貨店から求められる仕入れ品の表示情報の提出やお客様からの質問にもスムーズに対応が可能となった。

課題・メニューの成分やアレルギー情報を手作業で探し時間がかかっていた
・テナント先から細かい成分表示を求められる
実施内容・『BtoBプラットフォーム規格書』の導入
成果・クラウド上からデータを迅速に取り出せる
・お客様の問い合わせにスムーズに回答が可能

参考:受発注システムで請求処理にかかる時間がゼロに~株式会社心斎橋ミツヤ

飲食店でDXを成功させる上でのポイント

飲食店でDXを推し進めるためには、何点か気をつけるべきポイントがある。デジタル化には少なくない費用が掛かるため、できる限り成功率を高める取り組みや考え方はしっかりと押さえておこう。

DXの目的を明確にしておく

DXに取り組む際には、どんな価値を創出するのかといった明確な目的を定めておくべきである。なぜならもし業務の効率化が実現したとしても、その分生まれた時間や労力を有効活用できなければ、DXに取り組んだリソースが意味のないものになってしまうからだ。

一方できちんと目的があれば、飲食店のメリットとなることも多い。例えば、従業員満足度の向上を目的とした場合、スタッフの労働環境が良くなることでサービスの質が高まり、店舗の評判も良くなるといった相乗効果が期待できる。自社でどんな価値を生み出せるかをしっかりと考えた上で、DXを推し進めていこう。

従業員への周知徹底

デジタル技術の導入は、関連する業務の担当者にとってはとても重要な項目である。新しく導入されたITツールの操作や作業手順を覚えるなど、一時的に掛かる負担が増えるからだ。担当者や現場の従業員に取り組みを「面倒だ」と思われると、モチベーションの低下も招きかねない。

新しい業務の教育はもちろん大事だが、なぜデジタル化やシステムを導入するのかを従業員へ周知徹底しておき、協力的になってもらうこともDXの成功には欠かせないポイントとなる。

費用対効果を考える

管理システムやクラウドサービスなどのデジタル技術を導入するには、ある程度の費用がかかる。特に近年では月額制で初期投資を抑えられるサービスも多く、どの程度の出費であれば売上に見合っているかなども検討しておかなければならない。

たとえ業務が改善されたとしても、削減できた人件費などよりDXのランニングコストが上回ってしまうと赤字である。もちろん従業員満足度や労働環境の改善などに繋がることも大事だ。とはいえ飲食店の経営が成り立たなくなっては元も子もないため、費用対効果もしっかりと考えた上で導入したいところである。

DXは飲食店の未来を見据えた経営戦略(まとめ)

飲食店におけるDXとは、単にデジタル技術やITツールを導入するだけではなく、従業員や顧客に価値のあるものを提供し、企業利益につながる施策となる。5年10年と先を見据えた継続できる取り組みを行うことが重要だ。

例えば近年では、コロナ禍により実店舗への客足が遠のいた分、デリバリーサービスやテイクアウトなどに注目が集まった。このように情勢の変化で思わぬ価値が生まれることもある。未来で何が起こるかは予測できないことも多いため、まずは自社の課題解決につながる身近な取り組みから実施してみるのが良いだろう。

注目のキーワード

すべてのキーワード

業界

トピックス

地域