60年代からIT化に着手するも、かえって事務作業が複雑に
【Q】老舗の「心斎橋ミツヤ」をはじめ、多くの飲食店を展開されています。
代表取締役社長 小儀 俊彦 氏(以下同):当社は昭和18年創業で、当初は大阪・ミナミの繁華街で純喫茶「心斎橋ミツヤ」を運営していました。「ミツヤ」ではあんみつや、昔懐かしいオムライスなどを提供し、現在も多くのお客様に親しまれています。他にも「昔洋食 みつけ亭」や「ミツケキッチン」、カレー専門店「ピッコロ」「蜜家珈琲店」など30店舗を運営しています。そのほとんどが大阪、兵庫でのドミナント展開で、ショッピングモールや百貨店へのテナント出店を進めてきました。東大阪には関連会社が運営しているセントラルキッチンがあり、店舗で使う食材の集中調理、大量仕入れによるコスト削減を実現しています。
【Q】非常に早い時期からシステム化に取り組んでいたそうですね。
先代社長が工学部出身で、1968年には会計のコンピューターシステムを導入するなど、IT化には積極的でした。会社にも電算室という部屋があり、会社規模の割にはかなりのシステム投資をしてきたと思います。しかし、上手く業務の中に組み込み電子化に移行することができず、入力作業が二重になったり、仕入先とは引き続き、電話やFAX、専用伝票でのやり取りが必要で、非常に非効率的でした。伝票は手書きで、入力に3人がかりで半日かかっていました。社内便で送られてくる際の書類の紛失や請求漏れも多発し、大きな課題になっていたのです。
また、締め日に支払明細書という分厚い書類を郵送していたため、郵送作業にも時間とコストがかかっていました。さらに、お取引先様にはその郵送した書類と自社の請求金額と突き合わせて確認する労力をかけてしまっていました。お取引先様のためにも一刻でも早く、この状態を脱したいという思いがありました。
【Q】手作業では、仕入れ金額などの把握も大変ですね。
仕入れは料理長と工場長が担当しているのですが、古いシステムでは単品価格の足し算集計ができず、どこのメーカーの商品かも把握できていませんでした。当社では外部のお取引先様のほか、セントラルキッチンへも各店舗から発注しています。
元々、発注は電話回線を使ったシステムを利用していたのですが、機械の故障や衛生面などの課題がありました。古いシステムの刷新を検討したものの、大手に依頼すれば何千万という費用がかかります。どうすればいいのか迷っていたところ、インフォマートを紹介していただきました。
3人がかりで半日かかっていた請求処理が、ほぼゼロに
【Q】店舗とセントラルキッチンでの受発注をシステム化された効果はいかがですか。
『BtoBプラットフォーム 受発注』を導入したのは、JF(日本フードサービス協会)でのご紹介がきっかけです。まずは費用の安さに驚きました。導入にまつわるサポートも丁寧で、特に難しいところもありません。従業員もすぐに使えるようになりました。これまでは帳票の入力に3人がかりで半日以上かけていたのが、データをCSVで落とすだけなので作業時間がゼロになり助かっています。これまで毎月、請求金額の突き合わせ作業をお願いしていたお取引先様も「確認作業がゼロになる」と大歓迎でした。今では『BtoBプラットフォーム』がなければ会社が成り立たないほどです。
さらに、課題だったシステムの故障がなくなり、通信コストも大きく削減できました。店舗や工場に専用端末を置かなくてすむので、衛生面でも安心です。今までは電話やFAXでのオーダーも多かったのですが、それもほとんどなくなり非常に楽になりました。
【Q】『BtoBプラットフォーム規格書』も導入されていますね。
『BtoBプラットフォーム 規格書』は、テナント店舗でのアレルギー情報をはじめとする成分表示や、お客様からの質問対応などに使っています。導入して10年以上になりますが、特に百貨店さんは細かなところまで表示を求められますので非常に便利ですね。以前は確認などのたびに、工場の検査官が手作業で資料を探していましたが、電子化したことでデータをクラウド上からいつでも取り出せるようになったのは大きいですね。お客様にとっても問合せをしてすぐに回答がもらえるのは安心だと思います。
【Q】インボイス制度の開始が10月に迫っていますが、対応状況はいかがですか?
『BtoBプラットフォーム 請求書』で改正電子帳簿保存法に対応でき、すべて紙でやり取りしていた請求書のデジタル化ができました。インボイス制度への対応は、2022年10月頃からお取引先様への通知を始めました。
当社は創業以来80年にわたり大阪でやってきたので、お取引先様のつながりも長く、皆さん真摯に対応いただいたのかなと思います。主要なお取引先様から、事業者番号の回答をいただくことができました。
バックオフィスのIT化を進め、心の通った接客サービスを充実させたい
【Q】今後の展望についてお聞かせください。
バックオフィス業務については、まだまだDXの余地があると思っています。特にシフト管理は手書きなので、早期にクラウド化したいですね。一方で接客業務にはリアルな部分を残し、血の通った温かみのあるサービスを今後も提供していきたいです。飲食業はある種のエンターテイメントだと思います。当社はチェーンレストランではありますが、サービスは画一的にせず、特色あるお店にしていきたいです。
お客様からは「昔よくおばあちゃんに連れてってもらった」「若い頃よく通った」などのお声もいただきます。親子でご来店された方が親になり、またお子さんを連れて来てくださるなど、3世代にわたってご利用いただく方も珍しくありません。今後も、懐かしさの中にまた新しさがあるような、子どもからお年寄りまで多くの方に愛されるローカルチェーンとして邁進していきたいと思います。
株式会社心斎橋ミツヤ
創業:1943年10月18日
本社所在地:大阪市中央区心斎橋筋2-3-16
事業内容: 喫茶、洋食、カレー専門店、セルフカフェといった飲食店の経営、食品や洋菓子の製造販売
公式ホームページ:https://www.mitsuya.co.jp/