CSVアワード最優秀賞!Pay it Forward宮﨑氏の考えるCSV経営と今後の展望

飲食・宿泊2023.05.23

CSVアワード最優秀賞!Pay it Forward宮﨑氏の考えるCSV経営と今後の展望

2023.05.23

CSVアワード最優秀賞!Pay it Forward宮﨑氏の考えるCSV経営と今後の展望

  • bnr_menu-plus_300.jpg 買い手
  • bnr_v-manage_300.png 買い手

2023年3月、若手飲食店経営者で構成される団体「外食SX」が主催する「CSV AWARD 2023」で、株式会社Pay it Forwardが最優秀賞を受賞した。

2018年創業の若い会社ながら、同社は2021年に錦糸町に第1店舗目となる「マグロと炉端 成る」を開業し、わずか1年で坪月商40万円を超える繁盛店に成長した。続いて2022年には門前仲町に「マグロスタンダード 門前仲町店」をオープンさせ、“マグロ焼肉”というキャッチフレーズで人気を博している。2023年5月10日には「マグロスタンダード 錦糸町本店」もオープンした。

CSV AWARD 2023
授賞式の様子
左:株式会社 和音人
狩野 高光 氏

さらに卸問屋直売業態として武蔵小杉に魚屋「鈴治(すずはる)」を開業。新横浜に2023年2月オープンの「すし酒場さんじ」、2023年7月に五反田の立ち飲み寿司居酒屋のプロデュース業も行う。

経済的価値(利益の獲得)と社会的価値(社会課題の解決)の両立をする経営スタイルであるCSV経営をどのように実践しており、人気店である「マグロスタンダード」はどのようにできたのか、代表取締役の宮﨑元成氏に話を伺った。

目次

CSVアワード獲得までの取り組み

【Q】これまでの経歴とCSV経営を意識したきっかけを教えてください。

株式会社Pay it Forward
代表取締役
宮﨑 元成 氏

僕はPay it Forwardを立ち上げる以前から飲食業界で働いており、その時に働いていた飲食企業では「もったいないプロジェクト」や「お困り事解決」を実施していたので、それがスタンダードでした。

そのため、実は僕がCSV経営という言葉があるのを知ったのは、「まぐろと炉端 成る」を運営してしばらく経ってからのことだったんです。その時に、もともと自分が大事にしてきた「お取引先様の課題を解決する」ことがCSV経営だったのだと気づきました。

【Q】意図せずにCSV経営を実施していたということですか?

そうですね。僕ひとりで何ができるわけじゃない。だとすれば「何ができるのか?」という視線で考えたときに身近な「お困りごと解決」ならできると考えました。

例えばフードロス問題なら飲食店を通して貢献できそうだと思い、すぐに取引のあるすべての企業様に何か困ってないか聞いて回ったのです。すると八百屋さんからはネギの頭やキャベツの芯が余っていると。ネギは薬味に、キャベツの芯はコールスローに使えると思ったので、「それを買いましょう」と申し出ました。

またあるお取引先様からはそばが2週間後に200食廃棄になると聞いて、とりあえず全部仕入れさせていただき、Facebookでシェアしました。店舗でも「2週間で捨てなきゃならないんです」とスタッフやお客様へ伝えたところ、お客様は「それなら2つちょうだい」と協力していただけたのです。

酒屋さんや肉屋さんにも声をかけて、こういったお困りごとを聞いてきたことで、いまでは廃棄せざるを得ない食材を自然と回していただけるようになりました。

これはCSV経営においての経済的価値を生み出すことですし、社会的課題の解決にも繋がります。同時に店舗としても経費を抑えられ、お取引先様は食料廃棄せずに済む、お客様も社会課題解決に参画しているという満足感が得られます。第三者にとってもいいことがあり、Win-Win-Winの関係ができていると感じます。

【Q】仕入れ内容が日々異なるとメニュー開発が大変では?

僕は基本的に料理ができません。だからこそ柔軟な発想に繋がっていると考えています。僕の発想を元にキッチンスタッフさんが自由に調理してくれる。この形が理想なのだと思っています。

元々あるメニューでも、素材を入れ替えれば新しい料理ができると思っているので、たとえば肉屋の料理を見て、これをマグロに変えたらどうなるかなと考えます。それを店に帰ってスタッフに話して、とにかくイメージだけは伝えるようにしています。

【Q】CSV経営の考え方をスタッフに落とし込むにはどうしていますか?

当社のスタッフは、ほぼ全員がCSV経営について理解していると思います。その理由は、定期的な勉強会で何度も伝え、店長との面談でもCSV経営の話をするので、スタッフにも浸透しています。

そのため有り難いことに、メンバーみんなが同じ方向を見て仕事ができる環境は整いつつあると思っています。

【Q】スタッフの働きがいにも繋がっているということですね。

そうであればいいとは思いますが、「やりがい」という言葉だけで済ませないように気をつけたいとも思っています。飲食業というのは人と食に関わる産業です。飲食に関わる以上は、人と食の社会課題の解決に向けて動いていきたいと思っています。

また、僕は前々から飲食業が「選ばれる職業」になって欲しいと思っているので、「やりがい」だけでなく労務管理の見直しに取り組んでいます。そのため、当社では月11日休みをスタンダードにし、2024年には月12日休み、週休3日制の導入も考えています。

しかしそのためには利益構造を変えなくてはいけません。居酒屋のメニューの原価は、スーパーにいけば明白で、お客様も知っているため単価が上げられない。ですが例えば、市場に出回らないマグロのレバーなら、多少の値段設定に自由が利きます。労務改革を行うために利益構造を変えていく。その軸として、このCSV経営を利用していきたいと思っています。

【Q】具体的にはどんな形で表れていますか。

当社では業績評価の指標、いわゆるKPIとして落とし込んでいるのが従業員満足度(ES)と顧客満足度(CS)です。

あくまでも僕の大事にしている基準ですが、すべてを点数化して、各店舗でこの数字を追いかけてもらうことで、店の売り上げにも影響があるのは間違いなさそうです。わかりやすく定量化しておくことで、スタッフへの浸透にも繋がっています。

ただし、あまりにチェック項目が多いと、今度は手段であったことが目的化してしまいがちです。数字を上げようと思うあまり、目的を忘れてしまう。ですが、本当の目的はいいお店だと思ってもらうことです。それは働きやすい環境作りという、採用に向けた意味合いもあります。

いずれにせよチェック項目が多いと、それに振り回されてしまいます。そのため当社では、チェックポイントをきちんと評価できる基準があり、スタッフが納得感を持って取り組める9項目のみにしています。

宮﨑氏の考える人気店を作り上げるポイントとは?

【Q】2店舗目となる「マグロスタンダード」の設立経緯を教えてください。

2022年のコロナ禍にオープンした店舗ですが、こちらは僕の父がやっていた海鮮居酒屋を引き継ぐことになった関係で、物件ありきのお店でした。

門前仲町駅から3分圏内。市場が近いこともあって周囲には安い海鮮居酒屋もたくさんあります。僕がこの場所で普通の海鮮居酒屋を続けても勝算はなく、もっと業態を尖らせる必要がありました。

そこで思いついたのが“マグロ焼肉”です。門前仲町にはマグロを売りにした店がなく、焼肉店が多くありました。それに健康志向の人が増えているなかで、よりヘルシーな魚を焼肉のように食べられる店があったら、そのお店を目的に来てもらえるのではないかと考えたんです。

フードロスやサスティナブルの効果も狙って、マグロの脳天や頬肉、レバーといった希少部位を、様々な調理法で提供することで、お客様が来てくれるようになりました。

【Q】当初、新規顧客はどのように開拓していったのでしょう。

まったく新規のお客様を狙うというよりは、1店舗目の「マグロと炉端 成る」のお客様を巻き込む形で、お客様の紹介者を増やすというスタンスで新規顧客を開拓していきました。

「マグロと炉端 成る」の良さをご理解いただいているお客様が連れてきてくださるので、よりファンを取り込みやすくなります。美味しいものを出し、きちんと接客することで、「友人を紹介したい」と思ってもらえる店作りを心がけました。

あとは口コミです。InstagramやTikTokなど、様々なSNSを試しましたが、やはり今もっとも世間的に頼りにされているのが、Googleの口コミや食べログの点数評価とコメント数だと思っています。

【Q】接客の上で気を付けていることはありますか?

実は接客に関してはスタッフ任せなんです。もちろん当社の理念の徹底などは行っていますし、旬の食材についてのレクチャーも行っていますが、基本はスタッフに自由にやってもらっています。

当社のスタッフは何も言わずとも、その日入荷した仕入れ品をどう活かせるかを自然と意識できるんです。CSV経営の底力はそういうところに表れるのだと、いつも心強く思っています。

業界への期待と今後の展望

【Q】飲食店以外の業態やプロデュースなどもされていますね。

2023年にオープンした魚屋「鈴治(すずはる)」はその1つです。これは武蔵小杉の複合施設のなかに卸問屋直売所が集まる「コスギ グリルマーケット」という場所にあります。魚屋さんでありながら、グリルテーブルが設置されたイートインスペースがあるので、買ったお刺身をその場で食べたり、魚を焼きながらお酒飲んだりできます。

さらに、新横浜に「すし酒場さんじ」をプロデュースさせていただきました。元々「すしとおでんの居酒屋」というコンセプトがありましたが、それだけでは埋もれてしまいます。そのため、熟成魚を使ったすしで唯一無二の業態にしようと考えました。

今後も卸や小売業態、または多業態のプロデュースは続けていくつもりです。というのも、これも労務改革に繋がると考えるからです。

「鈴治(すずはる)」は昼営業の店のため、社員の働き方の選択肢を広げることになります。あるいは週休3日を実現し、2日休んだ残りの1日を別のパートナー店舗で働いてもらえます。仕事の幅も広がり、給料も上がります。当社のメンバーにとって、より魅力ある職場に近づくはずだと考えています。

【Q】最後に同業者へ向けたメッセージをいただけますか。

当社でやりたいことは、飲食業界を選ばれる人気業界にしたいということです。だからこそ月11日休みが実現できる会社を作りました。いまは直営店を4店舗(2023年5月現在)展開していますが、4店舗だけならうまく回っています。

ですがここで展開していくことをやめれば、「飲食業界が選ばれる未来」には繋がっていきません。飲食企業の規模で考えると直営が30店舗ほどになってはじめて、発信に影響力が出てくると考えているため、まずは30店舗を目指そうと考えています。

外食SXや当社の取り組みをきっかけにしてCSV経営を知ってもらい、自社で取り組もうという企業が1社でも増えると嬉しいです。

マグロスタンダード
●門前仲町店
オープン:2022年3月9日
住所:東京都墨田区富岡1-25-4ニックハイム八幡103
営業時間:17:00~27:00(不定休)
アクセス:門前仲町駅から徒歩3分
坪数・席数:21坪・42席
客単価:4,000円

公式ホームページ:https://maguro-standard.com/
●錦糸町本店
オープン:2023年5月10日
住所:東京都墨田区江東橋2-15-6 ファーストビル 1F
営業時間:平日:16:00~25:00、土:13:00~25:00、日祝:13:00~24:00(定休日なし)
アクセス:錦糸町駅から徒歩3分
席数:43席

公式ホームページ:https://maguro-standard-kinshicho.com/

注目のキーワード

すべてのキーワード

業界

トピックス

地域