知り合いの業務委託からはじまったFC展開
【Q】2012年に「麺屋 武一」1号店を出店されました。
代表取締役社長 大澤 武 氏(以下同):もともと電機メーカーで会社員として働く傍ら、副業としてラーメン店などの経営を約10年経験しました。2011年に会社を退職して、翌年に「麺屋 武一」を出店しています。鶏白湯ラーメンが人気になり、お店はすぐに軌道に乗りました。
人気店になったこともあり、知り合いの飲食店が経営に困っているという話から、業務委託という形でラーメン店を3店舗ほど出店したのです。それがFCの始まりといえます。
【Q】御社はFC加盟店が店名もメニューも決められるステルスFCを採用されています。
知り合いの業務委託で始めた頃から、ステルスFCでの展開でした。というのも、会社員時代に有名ラーメン店のFCに加盟して出店していたのですが、時代とともにどうしても陳腐化してしまい、ラーメンマニアのお客様からの評価が下がってしまったのです。
ラーメン店の経営にとって、ラーメンマニアのお客様はとても大切です。彼らがグルメサイトやSNSなどで付ける点数やコメントなどの口コミ評価が、加盟していたFC本部のメニュー開発が鈍るとともに下がってしまったのです。自店舗でオリジナルのラーメンを作っても、お客様の評価は「チェーン店にしては美味しい」という程度で、点数にはつながりませんでした。
その後、会社員を辞めて独立し、FC店だった店をオリジナル店として新規オープンしたところ、グルメサイトの点数はぐんぐん上がりました。この経験から、ラーメン業態でFC展開するなら同一ブランドのチェーンではなく、メニュー提供のみのステルスFCとして展開するほうががいいと思ったのです。
それに、ステルスFCは口コミ評価だけでなく話題にもされやすいです。私が一番大事にしている口コミは、地域で働いている方や近所にお住まいの方が、職場や家庭で話題にするかどうかです。チェーン店では、どうしても話題性が弱くなります。一方、個店として認識されるステルスFCは、口コミとして広がりやすいのです。
またチェーン店では、ある店舗で食中毒や火災などの事故やトラブル、お客様のいたずらなどがあった際にブランド全体に影響が出るのに対し、ステルスFCの場合はそういった影響は受けにくいというメリットもあります。
さらに、FCオーナーさんの独自メニューなどオリジナリティを出しやすい点もありますし、1人のFCオーナーさんが同じ県内で複数店舗を出店したいという際、当社では貝出汁や鶏白湯、煮干し、担々麺、豚骨、ご当地ラーメンなど選択肢を多くご提供できるので、バッティングすることがありません。
【Q】選択肢はどのくらいあるのでしょうか?
当社が提供するメニューは、スープ40種、かえし30種、麺140種、香味油20種、チャーシュー15種で組み合わせは1000を超えます。だからといって、オーダーメイドではありません。セミオーダーで展開しています。
セミオーダーというのは、業態は鶏白湯業態、煮干し系中華そば業態、貝出汁業態など、いくつかの業態があって、FCオーナーさんにはそれぞれの業態で基本となる定番メニューを提供していただきます。その上でオーナーさんのやりたいことをやっていただきます。例えばご当地メニューがやりたいのであれば、当社がメニュー開発もします。ただし、メニュー開発の料金はいただきません。
なぜかというと、料金をいただいてしまうと、そのメニューは加盟店のものとなります。料金をいただかないことで、開発したメニューを私たちも活用できます。そうすることで、目玉となるメニューができるFCオーナーさんと、新たなレシピが増える当社のどちらにとってもメリットになるわけです。
【Q】FCのロイヤリティもゼロですね。
当社では、フリーネームの加盟店からロイヤリティをいただいていません。というのも、同じチェーン店の看板を掲げてロイヤリティをいただく場合、売上に関わらず品質維持のためにSVが相応のフォローをする必要があります。他社のFC本部の中には、ロイヤリティを受け取っても期待するほどのフォローがない企業もあります。
逆にロイヤリティをいただかずにフォローしたり加盟店へ伺ったりすると、FCオーナーさんから感謝されるほどです。もちろん当社でもフォローはしていますし、お店にも伺います。
FC加盟で大切なものは、オーナーの思い
【Q】加盟店の出店支援で重視するのは何でしょうか?
開店資金については、一般的なFCに比べて当社のモデルはかなり低い設定ですので、資金面のウエイトは大きくありません。それよりも、FCオーナーさんの思いや、やりたいことが大切です。複数店舗を展開したいとか、行列店を作りといった夢やビジョンが知りたいです。裏を返せば、単に儲けたいからとか、利回りはどれくらいかといったことを最初から話題にされる方は、残念ながらお断りすることもあります。
また、鶏白湯や煮干し系など、業態ありきで物件を探すお手伝いすることもありますが、やはり物件ありきで、その物件に合う業態を考えた方が確実です。物件がロードサイドか繁華街かで客層も違いますし、周辺の競合店によって業態はもちろん、営業時間や値段も変わります。
それにお店を実際に運営される方によっても業態は変えていかなければいけません。飲食店をしっかりできる企業もあれば、50歳を過ぎて脱サラして加盟される方もいます。当然、店舗運営でできることも違ってきますから、人と物件を見て、それに合う業態をおすすめしています。
受発注システムの機能で、FC運営が効率的に
【Q】現在のFC加盟店は100店舗以上です。請求管理はどうされていますか?
創業当初は、加盟店への請求はすべて手計算で行なっていました。店舗ごとに仕入れ金額をまとめて請求書を発行していましたが、店舗が増えるにつれてとても処理できないと判断しインフォマートの『BtoBプラットフォーム 受発注』を導入しました。
オプション機能の『FC管理機能』と『センター機能』で、加盟店への販売・請求管理をしています。この機能で加盟店ごと、FCオーナーごとに金額をまとめられます。また、当社と仕入れ先との仕入・支払管理などの事務作業もスピードアップしましたし、ミスが減りました。今では仕入れ先から加盟店さんまでの請求処理を、システムの請求書ボタンを押すだけでワンストップでできるようになっています。
インフォマートの強みは何より、飲食業界での圧倒的なシェアだと思います。以前使用していたシステムでは、仕入れ先に対して新たに導入してもらう必要がありましたが、インフォマートであれば、ほとんどの仕入れ先がすでに導入済みです。そのため、すでに持っているログインコードのままで、当社と取引を始められます。仮にインフォマートを導入していなかった場合には、「業務効率が上がりますし、今後確実に必要になると思うので」とお話できるので導入してもらいやすいです。
原材料高騰のいまだからこそ、経営の見える化をする時
【Q】原材料が高騰しています。どのような対策をしていますか?
原材料は業界の全体的に上がっているので、仕入先を変えてどうにかなる問題ではないと思っています。仮に新しい仕入先が安い価格を提示してきたとしても、流通経路など明確な理由がない限り、数カ月後には「これではやっていけないので」となるのは必然です。
となると、ラーメンを値上げするしかありません。当社の直営店が値上げをためらうと、FC加盟店も値上げしづらくなります。ですから、直営店が率先して値上げをして、それを加盟店に示しつつ、食材の値上げも了解いただいています。
ただし、ラーメンの値上げをするにあたり、同じメニューをそのまま値上げするのではなく、価値も一緒に上げていきます。メニューを入れ替える、トッピングを変えるなどして、少しでも価値が上がるような工夫をしています。
食材費は大きなウエイトを占めますが、人件費も光熱費も高くなっています。そういう時代だからこそ経営の見える化がとても大事です。何もしないでいるのと、見える化して対策するのでは、月に2~3%の利益差は出ると思います。それが毎月、毎年積み重なれば大きな違いとなります。原価が高い今こそ、脱どんぶり勘定をするときではないでしょうか。システム化することで、デイリーで原価が分かるようになります。飲食店経営における見える化の第一歩です。
株式会社テイクユー
設立:2012年11月1日
本社所在地:東京都港区新橋5-35-10新橋アネックス3階
事業内容:1.ラーメン店、焼鳥店の運営 2.ラーメン店プロデュース&ボランタリーチェーン本部 3.食材の卸売販売
公式ホームページ:https://ramenpro.com/