九州グルメの魅力を伝える9つの飲食店
IMD Alliance株式会社では飲食店の運営に加え、九州の旬な食材を使った弁当「博多ぐるめ便」の販売、ホテル開業のコンサルティングも手がける。もともと代表取締役の麻生 宏氏が長崎出身ということもあり、「海と山に恵まれた九州の素晴らしい食文化を、多くの人に広めたい」との思いがあったという。
展開している9店舗の飲食店はコンセプトがそれぞれ異なり、バラエティ豊かだ。緑に囲まれた一軒家でいただくクラシックスタイルのパンケーキが人気の「白金茶房」、広東料理をベースにしたフュージョン・シノワの「西中州 星期菜」、隠れ家で熟成肉料理を楽しむ「AUTHENTIC LIVING BUTCHER NYC」。ほかにも鮨や、海辺のロケーションにある絶景カフェなど、どれも人気で休日には行列ができるほどだ。
どのような店を出すかは、エリア、物件、コンセプト、業態の順に決めているという。
レストラン第二事業部 部長 長谷川 聖 氏(以下、長谷川氏):「出店場所が決まったら、その土地に合うコンセプトから業態を考えます。当社の代表の麻生によれば、『その場所での生活スタイルに対応させた店づくり』。
たとえば糸島のオーシャンビューが楽しめる『糸島茶房』の場合、年齢層は20~40代で上質なものを求める方々です。美しく広がる二見ヶ浦の海岸を目の前に、本格的な料理を出す。さらに、観光客が多いエリアでもあるので、若年女性のニーズを取り込むためパンケーキも提供し、既存のカフェ『白金茶房』のコンセプトを加えました」
質の高い料理やサービスを求める顧客のために、内装から従業員の制服、食器の見せ方にも徹底してこだわっているという。
アルバイトでも受け身にならず、提案しやすい環境
同社では、アルバイトスタッフの育成にも積極的だ。店舗経験を経て、現在は経理部でアシスタントマネージャーを務める中嶋氏は、次のように語る。
経理部 アシスタントマネージャー 中嶋 智子 氏(以下、中嶋氏):「当社には、正社員だけでなくアルバイトスタッフの方もメニュー開発に参加できたり、受身にならず提案できる環境があります。それが仕事のやりがいにつながり、皆さん主体的に頑張ってくださるのでしょう。
新型コロナウイルスの流行時には、カフェ以外の店舗で客足が減ったものの、現在は回復しているという。
長谷川氏:「新型コロナウイルスの流行によって、事業を見直すことができた部分はあります。これまでアバウトに見ていたところを詳細化し、他業種展開を進めたり、他社とのコラボ弁当を販売したりしました。厳しい中でもさまざまな工夫ができたのはよかったと思います」
アルバイトスタッフが考えたパンケーキがヒット商品に
アルバイトから正社員登用され、キッチンスタッフとして働く松永氏は、「アルバイト時代からメニュー開発をしていた」という。
スタッフ 松永 奈々 氏(以下、松永氏):「私は製菓学校の出身ですが、カフェ巡りをしているときに『白金茶房』を知り、1週間のインターンシップからアルバイトを経て正社員になりました。最初に開発したパンケーキがヒットしたときは、嬉しかったですね。ブルーベリーとホワイトチョコのブリュレパンケーキですが、『女の子が好きなもの』と、売れ筋の定番商品であるパンケーキの組み合わせから考案しました。
製菓学校時代の同級生のなかには、飲食業界に就職してもすぐに退職してしまう子や、そもそも飲食に就職しない子もいます。当社ではアルバイトだからといって毎日同じ仕事をするわけではなく、商品開発を任されることもあるので楽しいですね」
メニュー開発は、3カ月に1度。店舗から提案したメニューをマネージャー層や役員、代表が試食し、OKが出れば商品化となる。一度ダメだったメニューも改良を重ね商品化になることもあり、従業員のやりがいにつながっているという。
長谷川氏:「飲食業界のキッチンは依然として人手不足です。当社もアルバイトの雇用を大切にしつつ、人材会社と提携して、掲載サイトの選び方、写真の載せ方などを細かく精査しています。今後は福利厚生や研修制度もより充実させていく予定ですので、そこもアピールしていきたいです」
値上げに負けない、原価をコントロールした魅力的なメニューを作る
九州の旬な食材にこだわる同社だが、昨今の原材料高騰の課題にはどう対応しているのか。
長谷川氏:「原材料高騰の対策については、取引先との交渉が大事だと考えています。この商品はこのぐらいの量を仕入れますので、その分、値下げをお願いしますといった交渉はするようにしていますね。
あとはロスをなくすためにも、店舗厨房の見やすい位置に調理マニュアルを置き、1グラム単位で計量してもらっています。オーバーポーションになると原価率が上がってしまいますし、かといって量を減らせば顧客満足度が低下します。そのあたりをしっかりと管理し、原価率が低くても魅力がある商品を開発するよう心がけています」
DXをできるところから進めて業務改善
値上げへの対応に加え、できるところからDXによる業務改善も進めている。まずは受発注システムや請求書システムを導入し、受発注や棚卸業務、請求処理をデジタル化した。
中嶋氏:「以前はFAXで注文し、納品書の内容をExcelに入力、店舗ごとに送られてきた請求書と付き合わせて確認するという流れでした。かなりの時間がかかっていましたし、店舗スタッフの時はアイドルタイムに処理することも多かったですね。特に月末月初は束になってくるので大変でした。受発注システムと請求書システムを入れ、お取引先様の半分以上をデジタル化したことで、業務が効率的になったと思います。今後もシステム化を進めたいですね」
請求書処理は取引先の期日によって変わるが、システムに入力してあるので漏れなく処理できているという。こうしてバックオフィス業務のデジタル化を進める一方、店舗でのサービスは「人」にこだわる。
長谷川氏:「モバイルオーダーや配膳ロボットなどもありますが、当店には年齢層の高いお客様もいらっしゃいますし、操作が難しいものは置かないようにしています。配膳ロボットも、店の構造によっては通る場所がないことも多いので難しいでしょう。一方で、電子決済はレジの締め作業がラクになりますから、導入してよかったですね」
何年経ってもレベルの高いQSCを提供したい
同社では今後も、サービスの質にこだわっていくという。
長谷川氏:「お客様がいつご来店されても、レベルの高いQSCを提供していきたいと思います。短期的な流行ではなく、何年経っても同じクオリティのものを提供できるよう心がけています。
たとえば『白金茶房』で提供している丸い形のパンケーキは、“インスタ映え”が流行るずっと前から、10年以上にわたり提供してきた定番です。このクオリティを維持しつつ、お客様が『今度はお友達を連れて来たい』と思えるようなお店にしたいですね」
さまざまな業態で、ハイクオリティな定番を提供し続ける。そのための業務改善であり、人材育成なのだ。
IMD Alliance株式会社
設立:2010年
本社所在地:福岡県福岡市中央区白金1-11-7 IMD SQUARE 3F
事業内容:レストラン事業、ホテル事業、ホテル・旅館・レストラン開発、アライアンス ビジネス、ソリューション&コンサルタント、旅行代理店
公式ホームページ:https://imd-a.jp/