膨大な手作業で、仕入表と請求書一覧の金額に差異が発生
【Q】秋田県を中心に飲食店を多数展開されていますね。
管理部 清橋雪子氏(以下、同):備長炭火やきとりと竈めし「酉や喜兵衛」や、職人にぎり「あっぱれ寿司」をはじめ、居酒屋や焼肉、海鮮料理といった和食業態13ブランドを9社のグループ会社で運営しています。店舗数は秋田県内に21店舗、宮城県仙台市に3店舗、あわせて24店舗です(2023年6月時点)。1975年の会社設立以来、おもてなしで地域社会に貢献し、時代が求める飲食店の構築を目指してきました。
私自身は2015年11月に入社し、管理部において人事総務と経理の実務およびシステム保守を担当しています。前職ではシステム開発会社でツールを活用した業務改善や運用構築とシステムの操作指導を行っていました。
【Q】これまでどういった業務のシステム化に取り組まれましたか?
まず着手したのは給与計算です。当時すでに従業員数は600名近く、20数店舗という規模ながら、各店舗がバラバラの書式で勤怠記録を提出し、給与担当者がエクセルに入力し計算していました。給与計算のシステム化後は、手書き伝票だった会計のシステム化に取り組み、さらに次の一手が受発注システム『BtoBプラットフォーム 受発注』とクラウド請求書システム『BtoBプラットフォーム 請求書』の導入です。
【Q】受発注業務には、どのような課題があったのでしょうか。
問題になっていたのは、各店舗の納品書を元に算出する仕入額と、取引先から来る実際の請求書の金額に、毎月少なからず差異が生じていたことです。
発注は各店舗がFAXや電話で行い、納品時に受け取る納品書を1枚ずつエクセルに入力して仕入表を作成します。入力後の納品書は管理部で集約し、管理部でも納品書をもとに仕入表を作成していました。取引先からの請求書は管理部で受け取り、請求一覧表を作成します。毎月行われる店長会議で店舗は仕入表を、管理部は請求一覧表を提出するのですが、本来は一致しているはずの金額があわないんです。原因は店舗での入力漏れや納品書の紛失でした。
どうにかならないか再三議題にあがっていて、ある時の店長会議で、受発注管理システム『BtoBプラットフォーム 受発注』の導入を検討しては、という流れになり私に声が掛かりました。
その時点では、私自身は各店舗の受発注業務に直接接点はなく、実際どのように発注し、納品書はどうやり取りしているのかも知らない状態でした。ただ、検討にあたって受発注のプロセスをヒアリングすると、現場の人たちが忙しい中、手間をかけている作業は、もっと省力化できるのでは、ムダを減らせるのではという思いが強くなっていきました。
『BtoBプラットフォーム 受発注』は外食産業で利用企業が4万社を超え認知度も高く、実績も豊富です。実際、導入にあたって取引先向けにオンライン説明会を開催した際に、40数社集まった取引先のうち7割の企業がすでに導入していて、「アジマックスさんも『BtoBプラットフォーム 受発注』で発注するんですね」という反応でした。
これだけ導入実績があるシステムが、もし自社と合わないのなら、それはこちらのやり方に問題があるので自社の業務フローをシステム側に合わせて改善すればいいと思いました。たとえば店舗と管理部で二重に仕入表を管理する必要はあるのか疑問でしたし、その作業をなくすだけでも現場の負担は減らせます。
【Q】同時に経費の請求書の受け取りに『BtoBプラットフォーム 請求書』も導入されました。
電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も視野にあり、受発注をシステム化するなら、同じシリーズの『BtoBプラットフォーム 請求書』も一緒に導入したほうが良いだろうと思いました。
対象は食材以外の清掃やメンテナンス、店舗設備の入れ替えや広告代理店などの販売促進費で、月に160件ほど受け取る請求書です。取引先によっては複数店舗の取引が1枚の請求書にまとまっている場合もあります。弊社は店舗によって運営しているグループ会社が異なるため、請求額を店舗や法人格にそれぞれ書き出して按分する、という作業が必要です。
膨大な量になる請求書は、食材などの納品書と請求書をチェックする買掛金担当と、食材以外の未払い金担当に分かれて2人でチェックしており、届いていない納品書や請求書を取引先や店舗に確認するなどしているとすべての確認作業に5日ほどかかっていました。
導入当初から9割を超えるデジタル化率。店長の意識も変わった
【Q】導入の効果はいかがですか?
現在、食材の全取引先は110社ほどあり、そのうちの約90%、100社近くと『BtoBプラットフォーム 受発注』で取引をしています。希少食材やお酒など現金取引しかできない10社程度の特殊な取引を除いて、ほとんどの発注業務をデジタル化できました。現場で一枚ずつ納品書を手入力していた作業もなくなり、納品書と請求金額の差異に悩まされることもありません。正確な仕入額がいつでもすぐ確認できるのは助かります。
『BtoBプラットフォーム 請求書』のデジタル化率は約85%です。残りの紙で受け取っている請求書も、『BtoBプラットフォーム 請求書』に入力しているので、2人で5日かけていた確認作業も今は1人で1日あれば会計システムへの取り込みまで完了しています。
また、数値では表せない効果ですが、店舗と管理部の心理的な距離が近づいた気がします。これまで商品や発注について管理部と店舗が話す機会はほとんどありませんでしたが、『BtoBプラットフォーム 受発注』の操作方法などの相談などを通じて、コミュニケーションもとりやすくなったように感じます。
最近、「ある食材について集計を取りたいんだけど、どうすればいい?」という質問が店長からあがってきました。蓄積されたデータを、原価管理や業務改善に活用しようと意識しているんだと嬉しくなりました。「集計のパターンを組んで、このボタンさえ押せば、食材の合計金額がすぐ出る」と毎月、月の半ばと月末で仕入額を報告しているそうで、ボタン1つというパターン化で業務を標準化し、データ分析の話までできるようになり、良かったなと思っています。
膨大な量の納品書や請求書の保管も不要になりました。これまで120席分のフロアにぎっしり保管書類が積み上げられていましたが、保管期間が過ぎた書類が今後減っていけば、このフロアを書類整理などの手間をかけずに新店舗にして利益を生むためのスペースにできます。
※紙で受け取った請求書は、電子帳簿保存法に対応していないため、原本の保管は必須です。
【Q】受発注システムで約90%、請求書システムで約85%と高いデジタル化率の秘訣は何でしょうか?
驚かれることも多いのですが、導入当初からこの数字です。取引先には導入前のオンライン説明会で弊社会長から業務をデジタル化する意義を伝えて対応をお願いしました。断られた場合も、なぜできないのか先方の理由をうかがって一緒に解決方法を考えましたし、お問い合わせもインフォマート社のカスタマーセンターへつなぐのではなく、なるべく自社で完結するよう心がけました。
たとえ自社で解決できずコールセンターをご案内したとしても、その後、「先日は大丈夫でしたか?」と一言フォロー入れるだけでも、取引先様の不安を和らげることができると思います。「気にかけてもらっているし、ちょっとやってみる」とお話しいただいこともあったので、フォローは大事ですね。
管理部はなかなか取引先様と接点がない部門ですので、システムを通じてコミュニケーションをとれたのは良かった点です。当初3カ月ほどは頻繁にお問い合わせも多くいただき大変なこともありましたが、取引先様と一緒に私たちも操作に慣れていったように思います。
地方で多店舗展開する飲食業がデジタル化するメリット
【Q】今後の展望をお聞かせください。
秋田で店舗を展開している弊社ですが、地方だからこそシステムによる効率化は必要だと思います。たとえば、雪深い季節にFAXの送信ミスによる誤発注が発生したら、必要な食材が届かないことも考えられ、店舗営業に致命的です。でも、データで発注していれば誤発注は防げますし、現状把握も可能です。地方だからこそ感じるデジタル化のメリットではないでしょうか。
受発注業務や請求書処理業務のように、デジタル化が大きく進んだ領域がある一方で、社内ではまだペーパーレス化もできていない業務も残っています。この社内デジタル格差は埋めていく必要があると思っています。
次の課題は、営業管理のシステムの導入です。『BtoBプラットフォーム 受発注』で正確な仕入データが保有できるようになりました。売上データが蓄積できるPOSレジと連携する営業管理のシステムを導入して、メニューの原価管理や粗利、ABC分析が行えるような形にしたいです。売れ筋商品の企画や業態開発のマーケティングなども、きちんとデータがあれば打ち手も見えてくると考えています。
株式会社アジマックス
事業内容 :居酒屋、とんかつ、焼肉、寿司、マンション経営、テナントビル経営、介護サービス事業
代表者 :代表取締役 佐藤 則夫
本社所在地:秋田市大町三丁目2番30号 アジマックス秋田川反ビル
公式ホームページ:https://ajimaxgroup.com/