ステーキのあさくま、コロナ打撃から1年で黒字回復。QSC向上、メニュー開発の取り組み

飲食・宿泊2023.08.04

ステーキのあさくま、コロナ打撃から1年で黒字回復。QSC向上、メニュー開発の取り組み

2023.08.04

ステーキのあさくま、コロナ打撃から1年で黒字回復。QSC向上、メニュー開発の取り組み

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「ステーキのあさくま」を主軸に、東海地方や首都圏などに65店舗(2023年7月現在)を展開する株式会社あさくま。コロナ禍の影響を受けたものの2023年1月頃から急速に回復し、2022年度決算は3期ぶりに営業利益を黒字に戻した。

そのコロナ渦中にあった2022年6月に社長に就任したのが代表取締役の廣田陽一氏だ。新体制になってから1年で業績を上向かせたQSCの取り組みと今後の展望について話を伺った。

目次

社長就任からの1年間を振り返って

【Q】社長就任の経緯から教えてください。

代表取締役 廣田陽一氏(以下同)「ステーキのあさくま」は、テンポスバスターズなどを運営する株式会社テンポスホールディングスのグループ企業です。テンポスでは、社長職を立候補者のなかから投票して決める「社長の椅子争奪戦」を4年に1度開催しています。

私もチャンスがあれば立候補したいと思っており、いろいろな部署を経験し、新規事業の立ち上げなどに積極的に携わってきました。テンポスバスターズの西日本営業部長まで進んだところで立候補し、“ステーキのあさくま社長の椅子争奪戦”の決選投票で社長に選んでいただきました。

【Q】社長就任後、まず着手したことは何でしょう?

株式会社あさくま
代表取締役 廣田 陽一 氏

ステーキのあさくまは、お客様に喜んでいただくことを至上としています。特別な日に、ゆったりとした空間で、安心・安全な環境でお食事を楽しんでいただく。ときにはサプライズ演出などもあって、お客様に感動していただくというスタンスで、この1年はとにかく臨店に次ぐ臨店の毎日でした。

その際に気付いたのが、駐車場から店舗入り口までの動線上が清潔でない店舗があったことでした。枯れ葉が溜まっていたり、ドアのガラスに指紋が残っていたりする光景が見受けられたのです。 

人手不足もあり、料理の提供を優先するのは当然とはいえ、こうした見栄えの悪さは、お客様の不満足に繋がります。せっかく来ていただいたのに、入口でがっかりさせてしまえば、お客様のリピートには繋がりません。

まずはそういうお客様の不満足の解消に取り組みました。そのために月間3,000件ほど寄せられるお客様からのアンケートすべてに目を通し、現場でもお客様目線で細かな点までじっくりと点検しました。

QSCの強化とその方法

【Q】どのように改善されていったのでしょうか?

代表的メニュー ビフテキのサーロイン
300g3,980円 (税込4,378円)

QSC(品質、接客、清潔)向上のための社員トレーニングです。これは喫緊の課題でした。まずは「いつまでに掃除するのか」「どのように継続するのか」について、店舗ごとに決定し、報告するよう指示しました。各店舗からすぐに返答は来ました。ところが、臨店した際に見てみると、清掃が十分でない店もありました。

人気第2位 鬼おろしもりもりハンバーグ
150g1480円(税込1628円)

そこで、何時にどこを清掃するというチェックシートを作りました。直後に成果は上がったのですが、継続できなかったり、入口は清掃するけど駐車場まで行き届かなかったりというケースもありました。作業が目的となっていて、きれいにすることがゴールだと認識できていなかったのです。店長はとてもがんばっているのに、アルバイト従業員に指示が行き届いてないこともありました。

そのため、私自身が店舗に赴いて、店長やアルバイトと一緒に清掃をしました。人を巻き込んで取り組むこと、ゴールとなる状態を共有したのです。そうして、マネージャー、店長、パート・アルバイトへと意識の共有を進めていったのです。

【Q】メニューも積極的に改善されましたね。

やはりコロナの期間中に激減したランチタイムのお客様を、あらためて増やして行く施策が必要だと感じました。ターゲットの主軸をお子様連れのお母様たちに絞り、その層にヒットするものは何かと考えたとき、品質を維持しながら、それでもリーズナブルな金額帯のメニューを増やすことでした。特に、1,500円以下で提供する平日の低価格ランチのメニューを拡充させました。

さらに、いずれのランチにもついてくるサラダバーを実験的に見直しました。それまで15 品だったものを、2023年2月から 45 品に拡大したのです。結果はすぐにアンケートに現れました。「サラダバー」の点数が上昇し、「再来店意思」の点数も上昇しました。サラダバーの充実が顧客満足向上に繋がっているのは確かでした。

ステーキのあさくま事業説明会資料より「サラダバーのお客様満足度アンケート結果」グラフと「2022年度四半期別売上高/営業利益」グラフ" title="ステーキのあさくま事業説明会資料より「サラダバーのお客様満足度アンケート結果」グラフ
[参考]ステーキのあさくま事業説明会資料(2023年5月22日)

【Q】従業員教育はどう取り組まれましたか?

ステーキのあさくま星崎店

そこがまさしく懸念されたところです。QSCを含めてもう一度意識の変革が必要だと考えました。そこで活用したのが、ビジネスチャットツールでした。メッセージのやりとりだけでなく、タスク管理やファイル共有、ビデオ通話などが可能なので、そうした機能をフルに活用して、とにかく情報の共有、意識の共有を推し進めました。

「もっとこうだったら効率的なのに」という声をスタッフから出してもらい、チャットツールを通じて実務レベルで実現していきました。ミッションごとにチームをつくって動きやすくするための連絡や情報共有が進みましたし、稟議申請が必要だった業務もこのツールで時短が実現できました。

他にも、お客様からの声を効果的にチャットツールに流しています。例えば「お客様からサラダバーが汚れているとご指摘が入っています」という情報を流すのです。

サラダバーの品目を増やしたことで、器やトングの数が増えます。その分、補充も頻繁に行わなくてはなりません。ドレッシング類で汚れる頻度もサラダの盛り付けが崩れる頻度も増えます。このため、サラダバーへの巡回の回数を上げる必要があります。そうした意識を喚起するために、あえてお客様の声を流すのです。QSCのいずれにおいても、こうした日々の繰り返しがスタッフの行動を変え、意識を変えていくことにつながります。

今後を展望して

【Q】廣田体制の2年目からは何を目指していきますか?

当社の従業員からは「あさくま」が好きだと伝わってきます。お客様からもアンケートを読むと愛されているとつくづく感じます。厳しいお声もありますが、改善が見られれば率直に褒めてくださいます。

あさくまの創業は1948年です。70年以上も営業しているだけあって、3世代にわたってご愛顧いただいているお客様が多くいらっしゃいます。そうしたお客様の声を総合すると、「あさくま」は、ファミレスよりややグレードの高いレストランとして認識され、特別な日に来たくなるお店だと感じていただいています。

当社が繁盛しているのは、お客様を驚かせ、喜んでいただき、また来たいと思っていただいているからです。さらなる繁盛のために、お客様の声に寄り添い続けてまいります。

その一環として、2023年5月よりお客様からお料理プランナーと称して、あさくまアプリ会員と店長が一緒にメニュー開発に取り組んでいただくお料理自慢を募集したり、ガーデニングキーパーと言って、一緒になって店舗内外の花壇や植木などを手入れして、「あさくま」の店舗に彩りを加えていただく取り組みも進めています。

提供メニューにおいても、一部店舗では、お客様ご自身に作っていただく綿あめやかき氷、焼きチュロスなど、体験型のメニューも増やしています。遊園地のようなワクワク感を大事にしたいという思いから実施しているプランです。

何が正解かはやりながら見据えていくしかありません。とにかくお客様の声に寄り添うことで、これからもずっと好きでいてもらえる「あさくま」を作り上げていきたいと思います。

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株式会社あさくま

本社所在地:愛知県名古屋市天白区植田西2丁目1410
設立:1948年12月10日
事業内容:レストラン経営による飲食事業、及びフランチャイズ事業
公式ホームページ:https://www.asakuma.co.jp/

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