養殖魚は危険?養殖の種類と天然魚との違いを解説

最新ニュース2023.06.23

養殖魚は危険?養殖の種類と天然魚との違いを解説

2023.06.23

養殖魚は危険?養殖の種類と天然魚との違いを解説

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近年、魚の漁獲量の減少について耳にする事業者も多いのではないだろうか。日本の漁獲量のピークは1984年の1282万トンだが、2020年には423万トンとなり、36年間で約3分の1に減っている。毎年のように鮭やサンマ、スルメイカなど何らかの魚種が不漁と報じられる一方、世界的な人口増加と水産物の需要の増加で水産物の取り合いが世界的に起こっているのだ。
参照:水産庁「図で見る日本の水産(令和4年12月)

こうした状況が重なった結果、注目されているのが養殖魚だ。しかし、自然環境下で育った天然魚と比較すると、養殖魚は人口的で安全性が低く、味も劣っているというイメージがあるかもしれない。

近年では、大学や水産業界が連携して養殖魚の安全性と品質向上を目指した開発が盛んに行われており、養殖魚のブランディング化も進んでいる。飼料や飼育環境下を工夫することで、魚に含まれる栄養素の強化や、臭みを減少させた魚の開発に成功しているのだ。この記事では、天然魚と養殖魚の違いや、安全性について詳しく見ていく。

目次

そもそも養殖魚とは?

魚を仕入れる際に、天然魚か養殖魚のどちらを選ぶか悩むことがあるだろう。養殖魚は、稚魚の段階から養殖場で育ち、水質・温度・えさなどが管理された中で育った魚のことを指す。国内ではさまざまな種類の魚が養殖されており、2021年の総生産量はブリ(40%)に次いでマダイ(27%)、カンパチ(12%)が挙げられる。
参照:全国海水養魚協会「グラフで見る養殖業

天然魚と養殖魚の違い

養殖魚と天然魚は、見た目である程度、判別することができる。たとえば天然のタイはサイズが大きく、尾びれや胸びれの形がはっきりとしていて、鼻の穴の数が全部で4つある。一方、養殖のタイはサイズが小さく、鼻の穴が2つで、特徴に違いがある。また天然のタイは鮮やかなピンク色をしているが、浅瀬で育った養殖のタイは少し黒ずんでいて、その違いは素人でも見分けがつく。

天然魚は、大自然の中で生活していることから、旬の時期には脂がのり、身が引き締まっている。光が届きにくい海中で育った天然魚は、鱗が日に焼けていないため、色鮮やかで見た目が良い。味は歯応えがあり、しっかりとした旨みと香りが良いものが多い傾向がある。しかし、旬以外の時期は味が落ちる、捕獲量が少ないため値段が高くなるなどの時期に左右される問題もある。

一方、養殖魚は季節問わず脂が多く、食感はやわらかく、まろやかな味である。見た目に関しては、天然魚と比べると浅瀬で育つため、表面に太陽光が当たり黒ずみがちだ。しかし最近では、生簀に遮光シートがかけられているところもあり、色鮮やかな養殖魚も販売されている。通年、変わらない味を楽しめるが、天敵がいなく激しい水流の影響を受けないため、全体的に小ぶりなものが多い。

 天然魚養殖魚
見た目色鮮やか日焼けして黒っぽい
旨みや香りが高いまろやか
旬の魚は脂が乗っている季節問わず、脂が多め
硬さ身が締まっている柔らかい

 

魚の養殖方法は?

養殖魚と一言でいっても、さまざまな飼育方法がある。たとえば、卵の段階から最終生育過程まですべて人の手によって育てられる完全養殖という方法だ。

完全養殖では、クロマグロ、タイ、サーモンといった魚が育てられており、すべての生育過程を人間がコントロールできるが、餌のコストがかかってしまうのが欠点だ。

また、卵の段階から養殖場で育つ完全養殖に対して、海や川で育った稚魚を捕獲して育てる蓄養という方法があり、特にウナギは畜養で養殖されることで有名だ。冬から春にかけて採れたシラスウナギを6ヶ月から1年半かけて養殖し、わずか0.2gの稚魚を300g前後まで飼育して出荷している。

養殖の方式による違い

養殖の方式としては海の中に生簀を入れて養殖する海上養殖と、山などでも養殖できる陸上養殖がある。

自然の海を利用する海上養殖は、水質管理ができないため、寄生虫が生簀に入ってしまう可能性がある。一方、陸上養殖は海から離れた場所で飼育されることが多いため、海水の代わりにミネラルが多く含まれている温泉水を利用する。特に水質やえさの管理が必要な種類の魚が陸上養殖で育てられている。

関連記事:漁業の課題と未来。ARKが創造する陸上養殖とは?

養殖魚は安心できるのか?

一般的な認識として、自然の中で育った天然魚が好ましいと考えがちだが、海洋汚染が進んでいる現代においては必ずしも安全ではない。特にマグロなどの大型魚類は、有害物質が凝縮されやすく、体内にマイクロプラスチックが残留している可能性がある。

しかし養殖魚でも飼育環境によっては、病気や寄生虫予防のために大量のワクチンや抗生物質が投入されていたり、餌に合成飼料が混ぜられていたりすることもあり、安全性の面で不安を感じる人もいるのが実情だ。

このような問題を受け、厚労省は2003年に食品中の残留農薬などを規制する法律を施行し、薬品の種類や使用料に制限を設けた。出荷する魚に薬品等が残留し人体に影響を及ぼさないよう政府が管理しているため、現在は養殖魚であっても安全面に配慮した魚が市場に出回っているといえる。
参考:厚生労働省「食品中の残留農薬等

養殖魚の利点はアニサキス食中毒のリスクが低いことだ。特に完全養殖であれば、冷凍のえさが使用されているケースが多く、アニサキスが寄生している可能性は限りなく低い。しかし、アニサキスは魚が口にしたものから寄生するため、稚魚を捕獲して養殖する畜養の場合は寄生している可能性がゼロではない。

人の手によって育てられた養殖魚のブランディング

人工的な環境下で人の手によって育てられた養殖魚は、自然下で育った天然魚と比較すると低く評価されやすい。しかし、最近では人が丁寧に育てることでブランディング化された養殖魚を企業や大学等の研究機関で扱う例が増えている。

たとえば、飼料に柑橘系の果実を混ぜて育てた「フルーツ魚」は臭みがなく、高い鮮度が保てると定評がある。餌の成分にこだわった「プレミアムDHAブリ」は、人間の体内の免疫反応の調整や脂肪燃焼を促進するといわれているDHAを通常のブリよりも高く含ませることに成功した。

企業や水産会社、大学などが連携してマイナスイメージの強い養殖魚に付加価値をつける動きは今後も期待できるだろう。

参照:高知大学「ブランド養殖魚

養殖魚と天然魚の違いは一長一短

今回は、天然魚と養殖魚のメリットデメリット、安全性について解説した。「養殖された魚」に何となく抵抗があった人もいるだろう。しかし、魚の漁獲量が減少している現状もあり養殖魚が市場に出回る機会が増えているととともに、養殖魚のブランディング化も進んでいる。

そのため、養殖魚が必ずしも危険とは言い切れない。目的に応じて天然魚か養殖魚の購入を検討しよう。

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