調理技術の平準化が店舗経営の前提を変える

ファウンダー 堀江 貴文 氏
インターネットが私たちの生活に浸透してから約30年が経過しましたが、この間に起きた最も大きな変化は情報の民主化です。かつて一部の職人だけが独占していた秘伝の技術やノウハウは、今や誰もが安価に、そして即座に手に入れられるようになりました。例えば料理レシピの投稿サービスを振り返ってみると、かつては文字ベースのサービスが主流でしたが、今は短尺の動画サービスがその座を奪っています。動画であれば、閲覧者が文字を読み解く力に左右されず視覚的に調理工程を理解できるため、誰でもプロに近い味を再現できるようになったのです。
このような技術の平準化により、プロの料理人とアマチュアの境界線は驚くほど曖昧になっています。私はかねてより、寿司屋の修業に10年もかける必要はないと申し上げてきましたが、実際に短期間で技術を習得した若者が現場で活躍するケースは確実に増えています。
また、流通の変化も見逃せません。スーパーマーケットで手に入る食材は限られていますが、今はインターネットを通じて、ベーカリーのプロが使うような最高級の小麦粉を個人でも簡単に取り寄せることが可能です。包丁にしても、業務用にメンテナンスされた鋭い道具を使うだけで、食材の味は格段に良くなります。このように、道具や食材、情報の質が底上げされた現代では、味覚の偏差値を60程度にまで引き上げることは、以前よりもずっと容易なことなのです。
AIを経営の武器として使いこなすスピード感
味の追求が一定の水準に達した今の時代、経営者が最も注力すべきはバックオフィス業務の効率化と、意思決定のスピードを上げることです。私は自身の経営判断において、生成AIを全面的に活用しています。これまで専門的なリサーチを行うには、検索エンジンでいくつものサイトを巡り、膨大な時間をかけて情報を整理する必要がありました。しかし、AIを使えば複雑な市場調査やシミュレーションの結果を、わずか1分程度で得ることができます。さらに質問を重ねて情報の解像度を高めていけば、迷いのない迅速な経営判断が可能になります。
この圧倒的なスピード感は、外部のコンサルタントを頼る場合と比較するとさらに際立ちます。かつて大手コンサルティング企業に年間1,000万円単位の費用を払って作成させていたようなレポートも、今は月額数千円から数万円のAIサービスで十分に代替できる時代なのです。情報の収集や分析といったバックオフィス業務はAIという軍師に任せ、私たち経営者はAIが導き出したデータをもとに、最後の決断を下すことに集中すべきでしょう。これこそが、これからの飲食店経営において標準となるスタイルだと言えます。











