店舗のコンセプトと、それを実現するセントラルキッチン
【Q】創業の経緯を教えて下さい。
専務取締役 数江盛一郎氏(以下、数江専務):当社は2013年に千葉県柏市で『焼肉酒場ともさんかく』1号店をオープンして以来、現在は6店舗展開するほかセントラルキッチンの運営をしています。私が若かった頃、焼肉店の価格帯は大手チェーン店でも1人6~7千円、安価なチェーンでも4~5千円で、味はそれなりでした。ならば、客単価4千円前後で、旨い肉を出せれば勝ち目はあると考えたのです。
出店を狙っていた柏駅周辺では飲食目的の来街者層は大学生から社会人5年目ほどの若者が中心です。当店はその客層が月1回来店できる価格帯に設定しています。コンセプトの「旨い肉をもっと気軽にもっと安く」を崩さないよう、開店当初の原価からだいぶ上がりましたが、それでも客単価4,200円前後を維持しています。
【Q】価格を維持している工夫は何があるのでしょう?
数江専務:セントラルキッチンです。1店舗目のオープン後に稼働させて、今は全店舗の肉の仕入れを担っているほか食品加工卸として子会社化しています。
1号店を出店した時から店舗での仕込みが負担になっていたので、近くに物件を確保できたこともあり、セントラルキッチンを作って仕込みを分担しました。早くからセントラルキッチンを稼働させたので、 2号店も3号店も、仕込みはもちろん配置人員についても無理なく乗り切れました。新人教育も担っています。
しかし、今は食材が高騰する一方、人件費も上がっています。817円だった最低賃金は、1,026円です。店舗で値上げをおさえるため様々な場面で努力が必要です。食肉の仕入れでは様々な業者から仕入れて使えるかどうか判断し、安く仕入れられる部位のメニューを増やすといったことをして、メニューや仕入れ先は常に開発し続けています。
機能していなかった原価管理をなんとかしたい
【Q】原価の管理はどのようにされているのでしょうか?
数江専務:インフォマートの『BtoBプラットフォーム受発注※1』で仕入れをして、『メニューPlus※2』でメニューごとの原価を自動計算しています。最終的にメニューの原価を店舗のPOSレジに入力して、理論原価と実原価を見ています。
※1 『BtoBプラットフォーム 受発注』とは、飲食店や卸の受発注・請求書業務をWeb上でやり取りするサービスです。
※2『メニューPlus』とは、メニューごとの原価計算や調理マニュアルの作成・共有ができるサービスです。
システムを使うことで原価が上がっていることにすぐ気付くようになりました。以前は仕入れ品の価格を納品書で確認し、エクセルで計算していました。しかしこれでは作業が膨大すぎてどの店舗がいつ何をいくらで買ったのか記録を探すことも、エクセルを更新することも手が回りませんでした。
さらに、納品書を見てもどの品がいくら上がっているのか気付くこともできません。当時は翌月の請求書を見て初めて値上げに気づくほどでした。『メニューPlus』を導入したことで、こういった課題は解決しました。
店長 臼井亮太氏(以下、臼井店長):セントラルキッチンでの効果も大きいです。店舗でのメニューの原価算出はもちろん、セントラルキッチンでも『メニューPlus』で登録したメニューを紐づけて、メニューごとの原価を算出しています。
セントラルキッチン代表 成嶋亮太氏(以下、成嶋氏):セントラルキッチンで作るメニューは130件、店舗で作るメニューは400件ほどで、それぞれ『メニューPlus』に登録して原価を出しています。システムへの登録作業は、仕入れ品、仕掛品などの構造を理解すれば難しくはありませんでした。登録作業は慣れればはかどりましたし、一度登録を済ませてしまえばあとは原価が自動的に計算されるのでたいへん楽になりました。
数江専務:そういった店舗やセントラルキッチンの作業時間をすべて含めれば、月間5日分の人件費は浮いているでしょう。アルバイトの時給が1,000円として8時間で8千円。5日間で4万円の人件費が削減した計算になります。システムの利用料を考えると導入すべきという結論です。
成嶋氏:システムで自動算出された原価と電卓で計算していたときの原価を比べてみたところ、食肉のある部位ではキロ500円も違っていたことがあり驚きました。
数江専務:メニューを変えるタイミングが年に3~4回あります。以前は直近の納品書から原価計算してメニューを作っていましたが、時期によっては割高になっていることもあります。今後は知りたいときにすぐ原価がわかるので、原材料が高騰してもスピーディに効果的な対応ができると思います。利益率がよく販売数も多い商品を作っていく戦略です。
弊社では人件費と原価を合わせた目標値を60%としていますが、月によっては62%くらいに上がることもあります。しかし、人件費は簡単には落とせません。原価を落とすしかないので、まずは原価管理で2%を確保し、その後は工夫でさらに2%ほど落とせるという実感を得ています。
また、『メニューPlus』には、動画で調理工程を共有できる機能があり、今は少しずつ手順登録を進めています。これまで調理工程はワードやエクセルで印刷した紙を店舗スタッフに共有していましたが、タブレットで動画を見ながら確認できるのは画期的です。特に若い子には動画の方がより浸透しますし、品質のグレーな部分がなくなると考えています。
【Q】最後に、今後の展望についてお聞かせください。
臼井店長:飲食店は、就職先としてどうしても敬遠されがちですが、そのなかで「大学を卒業したら『ともさんかく』に入りたい」と言ってもらえる環境を作りたいですね。大卒で飲食店に入社するのが当たり前になって、飲食店でも一般企業と変わらず楽しくやって行けると思ってもらえる職場であり、会社になっていけばうれしいです。
数江専務:まずは「千葉県といえば『ともさんかく』だよね」と言ってもらえるようになればうれしいですね。それが、やがて千葉県以外にも広がっていくのが希望です。
それから従業員の満足度をもっと向上させたいと思っています。お客様だけでなく、従業員も経営陣も全員が喜べる経営を目指し、それを長く続けていくことが、長期的に見た展望です。ゆくゆくは海外展開を考えているので、合理化、効率化はより重要です。インフォマートをはじめ、様々なツールを駆使して時短や効率化を進めていくつもりです。
株式会社TOMOSANKAKU
本社所在地:千葉県柏市柏3-6-15 ATSビル1F
設立:2015年12月25日
代表者:代表取締役 佐藤英嗣
事業内容:飲食業、加工卸業、飲食コンサルタント、飲食店専門工事
公式ホームページ:https://tomosans.co.jp/