2025年4月から「くるみ」表示義務化
2023年3月9日に「食品表示基準の一部を改正する内閣府令(内閣府令第15号)」が公布され、くるみが特定原材料に規定されて表示義務の対象となった。同日から施行となったが、食品メーカーなどが包装資材の表示切り替えなどで準備するための経過措置は2025(令和7)年3月31日までとされた。完全施行は2025(令和7)年4月1日となり、この日から製造・加工・輸入・販売される加工食品はくるみの表示義務対象となる。
食品関連事業者がアレルゲンの表示を適切にするためには、経過措置が終わるまでに原材料供給事業者など、流通段階での管理も重要であるため、事業者間における管理状況の情報共有も可能な限り速やかに実施すべきとされた。
根拠規定 | 特定原材料等の名称 | 理由 | 表示の義務 |
---|---|---|---|
食品表示基準 (特定原材料) | えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(8品目) | 特に発症数、重篤度から勘案して表示する必要性の高いもの。 | 義務 |
消費者庁次長通知 (特定原材料に準ずるもの) | アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン(20品目) | 症例数や重篤な症状を呈する者の数が継続して相当数みられるが、特定原材料に比べると少ないもの。 特定原材料とするか否かについては、今後、引き続き調査を行うことが必要。 | 推奨 (任意) |
[参考]消費者庁「アレルギー表示とは」(PDF)
くるみがアレルギー表示義務化された背景
3年毎に実施される食物アレルギーによる健康被害の全国実態調査において、2018(平成30)年度の結果ではくるみの症例が前回調査から急激に増え、鶏卵、牛乳、小麦に次いで4番目に多かったことが判明した。2019(令和元)年7月の消費者委員会食品表示部会でこの結果が一過性でないかの確認や、義務表示対象品目に指定する場合の検知方法の開発と妥当性評価など、食品表示の義務化を視野に入れた検討がはじまった。
その後、2021(令和3)年度の全国実態調査結果でも平成30年度調査に続いてくるみの症例数割合が増加しており、増加が一過性とは考えられないこと、食品中のくるみの有無を科学的に検証するための公定検査法の確立の見通しがたったことから、2022(令和4)年12月に開催された食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議で、くるみを「特定原材料に準ずるもの」から「特定原材料」に移行させることが了承された。
特定原材料となるくるみの範囲
特定原材料となるくるみとは、日本標準商品分類番号698591(総務省公布)のくるみであり、主に流通している海外産(チャンドラー種やハワード種など)に加えて、国産(オニグルミ、カシグルミやヒメグルミなど)も表示の対象となる。また、くるみオイル、くるみバター等もアレルゲンとなるので注意が必要だ。
カシューナッツ、ペカンナッツ(ピーカンナッツ)の表示も望まれている
くるみ以外にも特定原材料に準ずるカシューナッツは木の実類の中でくるみに次いで症例数の増加等が認められることから、アレルギー表示をしていない食品関連事業者等に対し、可能な限り表示することをより一層努めるよう求められている。
また、くるみと同じクルミ科のペカンナッツ(ピーカンナッツ)は、流通量が少なくくるみほどの症例数は認められていないが、くるみと交差反応性が認められる場合がある。このため、ペカンを原材料とする加工食品およびペカンに由来する添加物を含む食品を取り扱う食品関連事業者等においては、一括表示枠外に「本品はペカンを含んでいます。くるみアレルギーの方はお控えください。」などの注意喚起表示を行うことが望ましいとされた。
[参考]
消費者庁「Q&A 別添 アレルゲンを含む食品に関する表示」(PDF)
消費者庁「くるみの特定原材料への追加及びその他の木の実類の取扱いについて(令和5年3月9日事務連絡)」(PDF)
消費者庁「第28次改正(令和5年3月9日消食表第102号(別紙)新旧対照表)」(PDF)
消費者庁「知っておきたい食品の表示(令和5年3月版・消費者向け)」(PDF)
内閣府令(表示の基準に関するもの)「新旧対照条文(令和5年3月9日内閣府令第15号)」(PDF)
消費者庁「令和3年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業 報告書」(PDF)
消費者庁「くるみの義務表示化の経緯等について」(PDF)
消費者庁「【資料1~2】第4回食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議」(PDF)
消費者庁「別添アレルゲンを含む食品に関する表示」(PDF)