食品卸のインボイス対応方法は?~日本加工食品卸協会が解説

法令対策2023.04.07

食品卸のインボイス対応方法は?~日本加工食品卸協会が解説

2023.04.07

食品卸のインボイス対応方法は?~日本加工食品卸協会が解説

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2023年10月から始まるインボイス制度は、売り手と買い手、双方に影響を与える。複数税率を扱う機会の多いフード業界はどのように対応すべきか。インボイス制度対応の専門部会を立ち上げ、加盟する企業に指針を示している一般社団法人日本加工食品卸協会(日食協)に、具体的な対応策や今後の展望について伺った。

目次

日本加工食品卸協会でインボイス制度対応の専門部会を立ち上げ

【Q】日本加工食品卸協会(日食協)について教えてください。

一般社団法人日本加工食品卸協会
専務理事 時岡肯平氏

日本加工食品卸協会 専務理事 時岡 肯平 氏(以下、時岡氏):当協会は、加工食品卸売業が加盟する業界団体です。前身である1927(昭和2)年に設立された「社団法人日本缶詰協会」(現在の「日本缶詰びん詰レトルト食品協会」)から分離し、「日本加工食品卸協会」として1977(昭和52)年に誕生しました。加工食品卸売業の唯一の業界団体であり、日本全国の94社が正会員として加盟しています。

先行きの見えないコロナ禍による観光・外食への影響や食料原料価格の高騰や物流費の上昇など、フード業界をとりまく状況は深刻で、メーカーと小売をつなぐ我々卸売業の役割は重要です。加工食品流通サプライチェーンの中間に位置する立場から、様々な活動や情報発信を行っており、「インボイス制度」に向けた対応もそのひとつです。

2020年6月にインボイス制度対応の専門部会を立ち上げて対応検討を進めており、「インボイス制度対応︲企業間取引の手引き(第2版)」を協会サイト上に公開しています。また、この手引書をもとに会員企業向けの説明会を実施したり、小売事業団体やメーカー団体等にも当協会の指針をお伝えし、相互認識共有をはかってきました。

【Q】インボイス制度対応の基本的な指針をお聞かせください。

一般社団法人日本加工食品卸協会 参与
インボイス制度対応専門部会 座長
大久保 敏男 氏

インボイス制度対応専門部会 座長 日本加工食品卸協会 参与 大久保 敏男 氏(以下、大久保参与):前提として、インボイス制度対応による運用の変更やシステム改修は経理処理を中心とし、「受発注・物流など、日次業務の運用への影響を極力及ぼさない対応とする」ことを推奨しています。

具体的な指針としまして、卸とメーカー、小売との取引におけるインボイスは「請求書および支払通知書」としています。請求書や支払通知書に、品代明細の証票として納品伝票等をあわせてインボイスとするのはかまいませんが、納品伝票単体をインボイスとすると、運用上大きな負担がかかります。

三菱食品株式会社
経理グループ主計ユニット 担当部長
インボイス制度対応専門部会副座長
磯谷成男氏

インボイス制度対応専門部会 副座長 三菱食品株式会社 経理グループ主計ユニット担当部長 磯谷成男氏(以下、磯谷部長):卸売業は日々膨大なアイテム数を継続して多頻度で扱いますので、個々の納品伝票すべてにインボイス要件を記載するのは実務にもそぐわない上、大がかりなシステム改修が必要です。

日食協では、卸と取引先間のインボイス(請求書および支払通知書)を取引内容によって交付単位として分類し、それぞれの交付パターンを整理しています。それぞれの取引状況と照らし合わせて参考にしていただければと思います。

交付単位と交付パターンを整理し最適なインボイスを検討

【Q】取引の慣行によって交付パターンが変わってきますね。

大久保参与:たとえば、メーカーと卸との取引では、交付された請求書の金額に追加修正がある場合は、訂正内容を支払通知書へ記載し請求書の再発行は依頼しないケースが多いです。その場合は、交付パターン②を推奨します。

 

※以下画像をクリックすると拡大します(別ウインドウ)

メーカー・卸間

インボイス制度対応ー企業間取引の手引き1

インボイス制度対応ー企業間取引の手引き2

インボイス制度対応ー企業間取引の手引き3

小売・卸間

インボイス制度対応ー企業間取引の手引き4

インボイス制度対応ー企業間取引の手引き5

インボイス制度対応ー企業間取引の手引き6

出典:インボイス制度対応ー企業間取引の手引き(第2版 /日本加工食品卸協会)を元に編集部作成

一方、卸側に適格請求書の交付義務がある小売との取引の場合、特に大手小売業の商慣行で請求書を交付しないいわゆる「請求レス」の推奨パターンは、③としています。

どのような取引でも、それぞれが発行している現状の請求書および支払通知書をインボイスにすることを前提に、双方がその要件を整えることを事前に相互合意しておくのが重要なポイントです。

留意点として、請求書と支払通知書を合わせてインボイスとする場合は請求書と支払通知書は請求ナンバーなどで相互の関連性を示す必要があります。

磯谷部長:「商品仕入」等の請求書に「物流の役務提供」等の支払を記載し一枚にまとめる場合は相手と自社、両方の登録番号が必要です(右図参照)。

請求書と支払通知書は別で交付する方がシステム上スムーズだとは思います。ただ、現時点でどの取引にどのような請求書を発行しているのかで、自社にあった方法を検討していただきたいです。

たとえば、請求内容に修正があった場合はそのつど修正インボイスを発行するのではなく、次月以降のインボイス上で行うといった、負担のかからない方法が基本になります。

【Q】振込手数料はどのように扱えばよいでしょうか?

令和5年度の税制改正大綱では、税込価額1万円未満の場合、返還インボイスの交付は免除されることになりました。

大久保参与:商習慣として買い手が支払通知書で振込手数料を相殺し支払っている場合があり、当協会では、「買い手が支払通知書に役務の提供等として記載するか、または請求書を発行」することを推奨しました。

その後、税制改正大綱で少額な値引き等(1万円未満)については、返還インボイス不要と発表されましたが、食品には複数税率があります。一律値引き(返還)として取り扱うのは困難であり、支払通知書又は請求書にてインボイスを発行するのが良いのではと考えています。返還インボイスを不要とする場合は、相手先と確認・合意し対応していただきたいです。

今後も関係省庁などの発表で対応内容が変わる可能性はありますが、基本的には商習慣として従来記載・発行していたものはなるべく運用を変えず処理するように、検討を進めていくのが良いのではないでしょうか。

登録番号の共有も進むインボイス制度対応

【Q】お取引先様への案内と登録番号の収集はどうしたらよいでしょうか?

インボイス制度では、適格請求書発行事業者として登録番号を取得し、取引先に案内すると共に取引先の登録番号も収集する必要があります。

大久保参与:当協会では、ご承諾いただいたメーカーと卸各社の登録番号を1275社分、「適格請求書発行事業者登録番号台帳」として協会サイト上にExcel形式にて公開しています(2023年2月時点)。
 今後、2023年3月末までに収集した登録番号を追加して公開予定です。五十音順の社名、登録番号、課税・免税事業者の判別を一覧にしていますので、登録番号収集を円滑に進める一助としていただければと思います。2023年12月公開終了を予定しています。

【Q】登録申請の期限が2023年3月31日から実質9月末まで延長されましたが、対応スケジュールに変化はありますか?

時岡専務理事:インボイス制度開始まであと半年、速やかな登録申請と取引先への連絡が求められます。各社とも本格的な準備はこれからだと思いますが、早期の対応の検討・計画を心がけていただきたいです。

日食協としても、手引書の指針に則って、小売、メーカーとの相互認識共有と、課題解決に務めてまいります。

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一般社団法人日本加工食品卸協会

所在地:東京都中央区日本橋本町2-3-4 江戸ビル 4階

事業内容:加工食品流通の近代化・効率化に関する調査研究及びその成果の普及、加工食品卸売業の構造改善に関する事業の実施及び指導、加工食品に関する知識の普及啓発及び業界の課題に関する見解の提示、加工食品卸売業の経営者及び従業員の教育研修、その他協会の目的を達成するために必要な事業

公式ホームページ:http://nsk.c.ooco.jp/

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