食品等事業者が知っておきたい、2023年以降の法改正予定まとめ

法令対策2022.10.17

食品等事業者が知っておきたい、2023年以降の法改正予定まとめ

2022.10.17

食品等事業者が知っておきたい、2023年以降の法改正予定まとめ

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法制度は時代とともに移り変わる国民の意識、生活様式、社会環境、国内外の情勢などにより、大小様々な内容の制定や改正が検討され、実施されている。大きな法令の制定や改正があると施行までに猶予期間が設けられ、期間内に対応を終えられるよう求められる。

一方で中小規模の割合が高い飲食店や食品メーカー、卸などの食品等事業者にとって、法令内容の理解や社内環境の整備、書類の作成などの対応は容易ではない。
2023年以降に施行される法改正について紹介する。制度の内容、施行日を把握し、早めに備えておこう。

目次

2023年以降の法改正一覧

2023年以降の法改正では、労働環境や原材料の表示、社会保険や請求書関連の制度が挙げられる。

すでに施行されているものの、猶予期間が終了することで対応しなければならない制度もあるため見落とさないよう注意したい。 

施行年月日法令改正内容
2023年4月1日遺伝子組換え表示制度
参考:消費者庁
分別生産流通管理をして意図せざる混入を5%以下に抑えている原材料等の任意表示をより厳格化
2023年4月1日育児・介護休業法
参考:厚生労働省
労働者数が1,000人超の事業主は育児休業の取得状況について公表を義務化
2023年4月1日働き方改革関連法
参考:厚生労働省
中小企業において、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率を25%→50%に引き上げ
2023年4月1日労働安全衛生法
参考:厚生労働省
食料品製造業において、新たに職務につく職長(現場で指揮または命令する者)に対し、安全衛生教育の実施を義務化
2023年10月1日インボイス制度
参考:国税庁
売手(インボイス発行事業者)は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイス(適格請求書)を交付しその写しを保存する
買手が仕入税額控除の適用を受けるには、取引相手(売手)であるインボイス発行事業者から交付を受けたインボイスの保存等が必要
2023年10月1日景品表示法
参考:消費者庁
広告であるにもかかわらず広告であることを隠す「ステルスマーケティング」が景品表示法違反になる
2024年4月1日働き方改革関連法(自動車運転業務)
参考:国土交通省
自動車運転業務における時間外労働の上限が年960時間に規制される
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2024年10月1日年金制度改正法(社会保険の適用拡大)
参考:日本年金機構
被保険者数が常時50人超の事業所で働く短時間労働者(条件あり)にも社会保険の加入が義務化
2020年5月年金制度改正法
参考:厚生労働省
2025年4月1日雇用保険法(高年齢雇用継続給付の見直し)
参考:厚生労働省
雇用保険で給付される高年齢者雇用継続給付の最大給付率が15%から10%に引き下げ

食品等事業者が注目すべき2023年以降の法改正

2023年以降に施行される法改正の中でも、食品等事業者に大きな影響を与える制度についてはしっかりと理解を深めておく必要がある。

遺伝子組換え表示制度

2023年4月からは、遺伝子組換え表示制度における「任意表示」の内容が細分化される。対象となるのは、「分別生産流通管理を行い、意図せざる混入率が5%以下の大豆およびとうもろこし、またはそれらを原料とした加工食品」だ。

該当する商品については、以前のような遺伝子組換えの不使用表示が認められず、代わりに「分別生産流通管理を適切に実施している」旨の表示が推奨されている。そして遺伝子組換えの混入がないと認められる場合にのみ、「遺伝子組換えではない」等の表示が可能となる。

法改正に伴い、これまで「遺伝子組換えではない」「非遺伝子組換え」等の表示をしていた商品の見直しが必要となるだろう。

【ポイント】
遺伝子組換え表示を実施する際には、不適切な表示を行わないよう注意しなければならない。例えば「遺伝子組換えの原材料はほぼ含まれていません」のような曖昧な表現は、消費者が誤認してしまう恐れがある。

また法改正の前に製造された商品は、表示内容の差し替えを行なっていなくても販売すること自体は可能だ。しかしこちらも消費者が正しく選択できない恐れがあるため、できる限り施行前のうちの表示切り替えが推奨されている。

【対応策】
● 該当商品の表示を差し替える
● 具体例:「分別生産流通管理済み」「IP管理品」など
● そもそも遺伝子組換え食材の不使用表示をやめる

遺伝子組換え表示制度のより詳しい内容や対応策については、「2023年4月に新たな遺伝子組換え表示制度が施行。食品メーカーの「任意表示」への対応法」を参照。

インボイス制度

インボイス制度は、仕入や納品の際に発行する請求書を「適格請求書(インボイス)」という新たな様式でやりとりする仕組みのことだ。より細かい税率や消費税額を記載することで、正確な消費税の納付を促す目的がある。

具体的には、これまでの「区分記載請求書等保存方式」の様式に加えて、適格請求書発行事業者の登録番号や適用税率などを記載しなければならない。基本的には適格請求書発行事業者への登録と、現行の請求書に必要な事項を追加して記入することで対応できる。

【ポイント】
インボイス制度に対応するためには、適格請求書発行事業者への登録が必要不可欠となる。しかし売上1,000万円未満で免税事業者として届出している場合、登録事業者になれない。そのためインボイス制度へ対応するには、これまで免除されていた消費税の納付が必要な課税事業者になる必要が出てくる。

そしてもう一つ、インボイス制度に対応しないと仕入税額控除を受けられない点に注意しておきたい。飲食店などの買い手側は、登録事業者である売り手から仕入れないと支払った消費税分の差し引きができなくなる。

一方で、売り手側である卸売業者などは適格請求書を発行できないと登録事業者である他の競合に乗り換えられてしまう懸念がある。課税事業者であるならインボイス制度への対応は迅速に行っておくべきだ。

【対応策】
● 売手は適格請求書発行事業者への登録、請求書に必要な事項の追加
● 買手は発行された適格請求書の保存、仕入先とインボイス対応への相談

インボイス制度の詳細や対応策については、「2023年10月開始のインボイス制度。飲食店が知っておきたい、仕入税額控除と対応すべきこと」と「食品卸・メーカーのインボイス制度対応法。請求書発行側がすべき取り組みを分かりやすく解説」を参照。

早急に対応して社会的な信頼を高める

今後も時代の流れに応じて、様々な法改正が行われるだろう。変化に柔軟に対応していくことは、健全な事業経営を行う上で必要不可欠になる。特に今回紹介した遺伝子組換え表示制度やインボイス制度は、多くの食品事業者に該当するものであり、対応しなければならない重要な項目だ。

早い段階で法改正へ対応をしていくことで、意図せぬ脱税や消費者への被害を未然に防ぐことにつながる。消費者や取引先との関係性を深めるためにも、素早い情報収集を行い、自社で取り組みが必要なものについては余裕を持って対応しよう。

[参照]
消費者庁「知っていますか?遺伝子組換え表示制度」(PDF)
厚生労働省「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律 の概要(令和3年法律第 58 号、令和3年6月9日公布)」(PDF)
厚生労働省「2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」(PDF)
国税庁「インボイス制度の概要
国土交通省「食品に係る物流効率化実施の手引き」(PDF)
厚生労働省「建設事業及び自動車運転業務の上限規制の適用について
日本年金機構「令和4年10月からの短時間労働者の適用拡大・育児休業等期間中の社会保険料免除要件の見直し等について
厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました
厚生労働省「高年齢雇用継続給付の見直し(雇用保険法関係)」(PDF)

※最新の情報は遺伝子組換え表示制度に関する情報(消費者庁)をご覧ください。


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