インボイス制度の対応、やらないとどうなる?売り手側のメリット・デメリットと手順を解説

法令対策2023.03.13更新:2023.10.26

インボイス制度の対応、やらないとどうなる?売り手側のメリット・デメリットと手順を解説

2023.03.13更新:2023.10.26

インボイス制度の対応、やらないとどうなる?売り手側のメリット・デメリットと手順を解説

  • bnr_menu-plus_300(汎用)
  • bnr_v-manage_300_photo2.png(汎用)

2023年10月から開始されたインボイス制度について、食品等事業者はどの程度把握できているだろうか。特に請求書を発行する食品メーカーや卸売業などの売り手企業にとっては、今後の取引先との関係維持に関わる重要な取り組みとなるため、理解を深めておくことが重要だ。

今回は、インボイス制度の概要から対応する流れについて分かりやすく解説する。また課税事業者と免税事業者がどんな判断を下せば良いのか、それぞれの対応についても詳しくまとめているため、方針を決める際の判断材料にしてほしい。

目次

インボイス制度とは?

インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、より詳細な税率や消費税額を記載した請求書を取り扱うようにする制度のことだ。その請求書を発行・保存することで、事業者が仕入税額控除を受けられるようになるのがポイントだ。

売り手企業がインボイス制度へ対応するには、従来の区分請求書の様式にいくつかの追記事項を加えた「適格請求書(インボイス)」と呼ばれる請求書や納品書などの書類を発行しなければならない。

しかし適格請求書を発行するためには、インボイス制度の登録事業者になる手続きをし、登録番号を取得しなくてはならない。食品メーカーや食品卸売の事業者は、そうして記載要件を整えた適格請求書の発行する必要がある。

インボイス(適格請求書)とは?

インボイス(適格請求書)は、これまでの区分請求書では記載しきれていない複数税率や消費税額などの情報を盛り込んだものである。記載要件は以下の通りだ。

インボイス(適格請求書)の記載要件

①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号

②取引年月日

③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)

④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率

⑤税率ごとに区分した消費税額等

⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

 

これまでの区分請求書と比較して、適格請求書になることで記入する項目が増える。特に8%と10%の異なる税率を取り扱う場合、それぞれの項目毎に税率や消費税額を分けなければならない。

インボイス発行事業者の登録時に交付された番号を請求書に記載することも、適格請求書に必要な記載要件となる。記入する項目が増える分、漏れやミスなども生まれやすいため注意したいところだ。

インボイス発行事業者になるかの判断

インボイス制度へ対応するかどうかは、自社の事業内容や取引先、消費税を納税・免除することで発生する損益などを総合的にみて判断する必要がある。特に請求書を発行するのは売り手側となるため、自社の商品を取引先に販売する食品メーカーや卸売業にとっても重要な選択だ。

では具体的にインボイス発行事業者になるかは、どういう基準で見定めればいいのだろうか。

課税事業者がインボイス制度へ対応するメリットとデメリット

すでに消費税の納付を行っている課税事業者でも、インボイス発行事業者になるかどうかは任意だ。食品メーカーや卸売業などの売り手側は、取引先が飲食店などの事業者であるケースが多いため、インボイスを発行する重要性も高い。

 メリットデメリット
インボイス
発行事業者に
なる
・インボイスの交付・保存が可能になり、取引先が仕入税額控除で損をすることがなくなる(取引先との良好な関係を継続しやすい)

・登録申請といった手続き、発行したインボイスを保存するなどの手間が増える

・従来の請求書からの切り替えが必要

インボイス
発行事業者に
ならない

・従来の請求書フォーマットを利用できる

・登録申請やインボイスを保存するなどの手間がかからない

・インボイスを交付できず、取引先で仕入税額控除ができなくなる

 

取引先からすると、仕入税額控除ができないインボイス未対応の事業者から仕入れを行うのは、対応事業者から仕入れを行うのと比較して、支払う消費税額が増えるデメリットに繋がる。

インボイス発行に対応していないことが要因で、結果的に取引先数が減ってしまうリスクを背負うよりは、経理業務の手間が増えることになっても長期的な見通しを立てた場合、インボイス発行事業者になるメリットは大きいだろう。

免税事業者がインボイス制度へ対応するメリットとデメリット

続いて、免税事業者のメリットデメリットを見ていこう。免税事業者のままである場合、飲食店などの買い手から支払われた消費税分がそのまま利益となる。一方で、免税事業者がインボイス制度へ対応するには、インボイス発行事業者への登録に加え、課税事業者として消費税の申告や納付をするといった手間が増える。

課税事業者と同様に、インボイスを交付できないと買い手側が仕入税額控除できなくなるため、従来の取引を見直されるリスクが生まれる。メリットデメリットを考えインボイス発行事業者になるかの判断は必要となる。

 メリットデメリット
課税事業者と
インボイス発行事業者へ
登録を行う
・インボイスの交付・保存が可能になり、取引先が仕入税額控除で損をすることがなくなる(取引先との良好な関係を継続しやすい)

・消費税の申告やインボイス発行事業者への登録など手間が増える

・これまで免税されていた消費税の納付義務が発生する

免税事業者の
まま

・インボイス発行事業者への登録や消費税の申告手続きをしなくてもよい

・消費税が免税される分、自社の利益に繋がる

・インボイスを交付できず、取引先は仕入税額控除ができなくなる

・取引に影響が出る可能性がある

 

また卸売市場や農協を介して販売されるものは、流通上の特徴から課税事業者と免税事業者から出荷された商品を見分けることが難しい。そのため、商品を卸している生産者が免税事業者であった場合、インボイスの発行が免除される「卸売市場特例」という制度が存在する。

ただし免除される条件には、
・農林水産省に認定された中央卸売市場
・都道府県知事に認定された地方卸売市場
・農林水産省が定める基準を満たしていること
などがあり、かなり限定的な点に注意が必要だ。

対象となる卸売市場や詳しい条件については、農林水産省のWebサイトを参考にしてほしい。

参考:農林水産省「適格請求書等保存方式(インボイス制度)における卸売市場特例の対象となる卸売市場について

インボイス制度に対応する流れ

適格請求書が発行できるようになるまでには、登録申請や請求書フォーマットの変更などの準備に時間を要するため、早めの準備が必要だ。ではどのような準備や手続きが必要になるのか、インボイス制度へ対応する具体的な流れについて見ていこう。

適格請求書発行事業者への登録申請

適格請求書は、インボイス発行事業者へ登録した事業者でなければ交付することができない。そのため、インボイス制度へ対応する食品メーカーや卸売業者の方は、まずは登録申請を済ませる必要がある。流れとしては、以下の通りだ。

・税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出
・審査結果を待つ
・登録が承認されれば、「登録番号通知書」が交付される

申請書は2023年9月30日までに提出する必要があったが、2023年10月現在でも申請書の提出が可能かつ必要となる。 申請書は税務署長が登録した日から適用となり、登録日から起算して15日前までに提出が必要となるため、期日に余裕を持って申請しよう。

登録されている企業は、以下のサイトから確認できる。

国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト

また登録申請書を提出する方法は2種類ある。申請してから登録通知が来るまでにある程度の時間がかかるため、できる限り早めに手続きを済ませておきたい。

書類で提出

書面に必要事項を記入し、「インボイス登録センター」へ郵送する。申請書の様式は以下からダウンロード可能だ。

参考:国税庁「適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)

事業所のある地域によって提出先は異なるため、国税庁のサイトから確認しておこう。

参考:国税庁「各局(所)インボイス登録センターの管轄地域

e-Taxで提出

「e-Taxソフト(WEB版)」or「e-Taxソフト(SP版)」などのオンラインサービスから必要事項を記入して申請する。

参考:国税庁「e-Taxによる登録申請手続

さらに免税事業者がインボイスへ対応するには、適格請求書発行事業者へ登録する前に管轄の税務署に「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者への登録申請が必要となる。

届出のフォーマットについては、国税庁のWebサイトからダウンロードできるため活用していただきたい。
参考:国税庁「消費税課税事業者選択届出手続

発行する請求書の形式を適格請求書に合わせる

インボイス発行事業者への登録を済ませた後は、従来の請求書フォーマットから変更や追記を行い、適格請求書の形式に合わせよう。

区分請求書適格請求書

①適格請求書発行事業者の氏名又は名称

②取引年月日

③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)

④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)

⑤書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号

②取引年月日

③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)

④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率

⑤税率ごとに区分した消費税額

⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

主に追記する内容は、適格請求書発行事業者の「登録番号」、税率ごとの「適用税率」と「消費税額」の3つだ。適用税率や消費税額は、従来の請求書に記載しているケースもあるが、「登録番号」については新たに記載する項目を設けなければならない。

インボイス制度に対応しているシステムにする

インボイス制度が導入されると、より複雑な経理業務が求められるため請求書作成ソフトや販売管理システムなどを検討する企業も増えるだろう。その際には、まず適格請求書のフォーマットに対応しているかどうかで判断するのも基準となる。

すでに導入している食品メーカーや卸売業は、現行の販売管理システムなどがインボイスに対応しているかを確認する必要がある。特に自社用にカスタマイズしている場合、今後の対応について検討するのが良いだろう。

インフォマートの『BtoBプラットフォームシステム』であれば、アップデートにより適格請求書へのシステム改修にかかる費用なども削減しやすい。

例えば『BtoBプラットフォーム受発注ライト』は、売り手企業が主導となり、FAX・電話による受注をデジタルへ移行させるシステムだ。さらに納品書インボイスの発行ができるため、従来の煩雑多様な受注業務を効率化するとともに、インボイス制度にも対応ができる。

参照:『BtoBプラットフォームシリーズにおけるインボイス制度への取り組みについて

今からでもインボイス制度への対応を進めよう

インボイス制度への対応は、取引先が仕入税額控除を行うために必要な取り組みだ。請求書の形式変更や取引先への連絡が必要なため、早めの対応を心がけたい。

BtoBプラットフォーム受発注ライト

注目のキーワード

すべてのキーワード

業界

トピックス

地域