効果的なQSCの取り組み方法
ここまでは、QSCの概要や必要性について述べてきた。それでは、どのようにQSCに取り組めば良いのかを具体的に解説していく。
結論から言うと、この3つがおすすめだ。
・自店舗のQSCの現状と改善の把握
・チェックシートの活用
・現場の声による分析・改善
より詳しく見ていこう。
自店舗のQSCの現状と改善の把握
はじめに取り組んでいただきたいのが、自店舗のQSC状況の把握だ。
改善点が明確になっていないと、別の部分にリソースを割き続けてしまい、一向に顧客満足度が向上しないといった事態も考えられる。そのため、前段で述べた「QSCとは」を参照に、自店舗ではQSCのどの点を強化すべきなのかを改めて把握しよう。
チェックシートの活用
次に、いつ誰が店舗にいても同じ水準でサービスを提供できるようにチェックシートに落とし込もう。また、チェックシートでは「◯時に◯◯が◯◯の掃除をする」といったように細かい部分まで決めることがポイントだ。
ここが大雑把になってしまうと、あるスタッフは定期的に掃除をするが、他のスタッフは掃除をしないなど、統率を取りにくくなってしまうため注意しておこう。
【チェックシート項目の例】
チェックシート項目には、商品の品質、接客の質、店舗の清潔さなど、QSCの各要素を評価する項目を設定する。以下はチェックシート項目の例だ。
Qualityに関するチェック項目の例 |
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・使用する食材は定められた基準を満たしているか ・調理工程はマニュアルに従って実践されているか ・料理の外観は指定された基準を遵守しているか ・顧客からの品質フィードバックを収集する方法は設けられているか |
Serviceに関するチェック項目の例 |
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・顧客への挨拶は笑顔に徹底されているか ・従業員同士でムダ話をしていないか ・混雑時の対応で顧客が不満を持っていないか ・クレーム発生時の対応手順は適切に守られているか |
Cleanlinessに関するチェック項目の例 |
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・顧客席の衛生状態には不備がないか ・テーブルや椅子は定期的に検査され、修正が必要な場合はすぐに対応されているか ・トイレは一定の間隔で掃除されているか ・カウンター、棚等は清掃と整理が適切に行われているか ・調理器具は、使用後に洗浄し、清潔な場所に保管しているか |
現場の声による分析・改善
来店した顧客や従業員からのフィードバックや提案を活用することで、QSCの現状をより正確に把握し、効果的な改善策を立案することが可能となる。
メジャーな方法はアンケートの活用だ。アンケートは週や月などの定例で集計するが、その際に従業員からの提案の場を設けてみるのも良いだろう。従業員の参画を促すことで、店舗全体のQSC向上への意識を高める効果も期待できる。
QSCを実現する企業の事例4選
QSCの重要性を認識し、体系的に取り組んでいる企業は多く存在する。
具体的な事例として
・マクドナルド
・ファミリーマート
・KFC
・すかいらーく
の4社を紹介する。
マクドナルドのQSCへの取り組み
マクドナルドにはQSCに関する世界共通のグローバル基準があり、『基準をクリアしない商品やサービスはマクドナルドから世に出ることを一切許されない』と公式HPにも明記している。
また、生産地から加工場、物流、店舗までの品質管理、衛生管理を実現させるため、工程毎に基準を設定し、内部監査による自己点検、第三者機関による外部監査を設けている。
参考:マクドナルド公式HP「品質改善の道のり」
ファミリーマートのQSCへの取り組み
QSCの向上には、店舗運営に関わる全ての人の協力が必要となる。そんな中でファミリーマートは、QSCを高いレベルで実践しているストアスタッフを様々な賞を設けて毎年表彰している。
また、近年ではQSC向上を主な業務とした「QSCトレーナー」を居住地の近隣直営店に配属している。従業員の働きやすい環境の提供やモチベーション管理の参考となる事例といえる。
参考:ファミリーマート公式HP「「エクセレントトレーナー」制度を導入」
KFCのQSCへの取り組み
KFC(ケンタッキーフライドチキン)は、公式HPに『「人」なくしては事業が成り立たない“ピープルビジネス”です。』と明記してあるように、とにかく人を第一主義としている。
これらを実現するための具体的な行動や思想として、仲間を称えるチャンピオンカードの導入や、QSCに加えて「hospitality(おもてなし)」をポリシーに掲げている。
参考:KFC公式HP「働く人々をしあわせに」
すかいらーくHDのQSCへの取り組み
すかいらーくホールディングスでは、現地現物で確認して行動することが大切だと考え、2022年より収益改善プロジェクトで成果を上げている店舗に社長が訪問し、取り組みの秘訣をマネジャーやアルバイトの方にインタビューするといった取り組みをしている。
結果的に、売上拡大やコスト削減におけるアイデアが積極的に集まるようになった。
参考:すかいらーくホールディングス公式HP「顧客基点の店舗営業戦略」
QSC面以外で集客を増やすコツ5選
ここまでQSCに関する概要や実行例、企業の事例などを紹介してきた。QSCを向上させ、集客面につなげたいと思う方が多いのではないだろうか。
続いてQSC以外で集客を増やす方法を5つ、それぞれメリット・デメリットとともに紹介する。
店頭PR、ポスティング
店頭でのPR活動やポスティングは、地域の顧客に直接訴求できる効果的な手法である。店頭PRの場合、ボードとペンさえあれば可能なため、比較的コストがかからず簡単に設置できる点も大きなメリットだ。対して、店の近くにいる人にしかアプローチできないのがデメリットとして挙げられる。
店頭でPOPなどを設置する際には「日替わりメニュー」や「季節限定メニュー」など通行人が目を引くような内容をベースにすると良い。
SNSツールの活用
SNSツールは、情報発信や顧客とのコミュニケーションが可能なため、広範囲の集客が期待できる。X(旧Twitter)やFacebook、Instagram、Tik Tokなど、現代には多くのSNSが存在するため、各SNSの特徴を理解し、自社のターゲット層に合わせた媒体を選ぶことが重要だ。
メリットは、SNS上で広告の出稿などを行わない限りは基本的に無料、投稿自体も簡単にできるため、導入するハードルが低いことである。対して、フォロワー数やファンを増やすためには定期的な発信を要し、時間やコツが必要となる。
グルメサイト、口コミサイト、Googleビジネスプロフィール
グルメサイトや口コミサイト、Googleビジネスプロフィールを活用することで、自店舗の情報や評価を多くの人に伝えることができる。
来店客による口コミは、良くも悪くも来店者からのリアルな声が届けられるので説得力があり、集客効果にも繋がりやすいのがメリットだ。デメリットとしては、例えばGoogleビジネスプロフィールでいうと、多くの人が評価している店舗=ユーザーの求める情報を提供できているお店であるとGoogleに認識され上位に表示される仕組みになっているため、口コミに左右されやすい点だ。
メールマガジン
メールマガジンは、店舗の最新情報やキャンペーン、イベント情報などを定期的に顧客に提供することで再訪を促すことができる。郵送DMに比べて販促費用も抑えられる。
一方で、これから始めるという場合は、SNSの普及もあり、メールアドレスの収集が難しい。自店舗で行うにも、原稿や配信リストの作成や配信準備など意外と時間がかかる。
近隣店舗のリサーチ
近隣店舗のリサーチは、市場のトレンドを掴み、自店舗の位置付けを明確にするために重要である。また、他店舗の取り組みから学び、自店舗の改善に生かすことも可能である。
【リサーチ内容の参考例】
・人気メニューや価格帯
・口コミサイトの内容
・広告などの宣伝方法
しかし、エリアによっては近隣店舗が多い場合があり、リサーチをするためにはネット上で調べるだけでなく実際に近隣店舗に行ってみる必要もある。あるいは外部に調査を依頼する方法などもあるが、こちらも想定以上に時間や調査費用がかかるため、注意しよう。
ここまで紹介したQSC面以外で集客を増やすコツ5つについて、より詳しく知りたい方は下記の記事も参考にしてみて欲しい。