昆虫食のメリット・デメリットとは?企業活用事例5選

業界ニュース2023.06.15更新:2023.08.21

昆虫食のメリット・デメリットとは?企業活用事例5選

2023.06.15更新:2023.08.21

昆虫食のメリット・デメリットとは?企業活用事例5選

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メディアで話題の昆虫食。世界を見渡すと昆虫を常食している民族がいるものの、日本では多くの人が昆虫食に抵抗を示している。一方、メディアや食の展示会では、昆虫食に焦点が当てられることも多い。さらに、昆虫食を提供するレストラン・自販機の登場、SDGsの取り組みの一環として話題に上がるなど、人々の関心を引きつけている。なぜ昆虫食が注目されているのだろうか。

この記事では、昆虫食のメリット・デメリットを紹介するとともに、実際に食品メーカーで昆虫食を取り入れている事例をもとに、今後の動向を探る。

目次

昆虫食とは?

最近話題の昆虫食。幼虫やさなぎだけでなく、成虫や卵を食べている地域もある。メキシコでは300種類もの昆虫が食されていて、世界中では500種以上の昆虫が食べられていると推測されている。

日本では、江戸時代において庶民の間でイナゴやスズメバチなどの幼虫を始めとしてタガメ、ゲンゴロウ、 カミキリムシの幼虫などの昆虫食が親しまれていた。現代でも、イナゴの佃煮や甘露煮などは日本各地で販売されているが、多くの人は昆虫を食べる習慣がない。特に昆虫の見た目に対して拒否反応を示す人が多いことから、最近ではパウダー状に加工されたものが食品業界で注目されている。

参照:公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会「多彩だった日本の昆虫食

昆虫食が注目されている理由

昆虫食は特定の地域だけで親しまれていると考える人も多いだろう。しかし、近年では将来的な食糧危機が課題となっていることから、世界中で昆虫食に可能性を見出そうとしている。国連の報告書によると、世界人口は2030年には約85億人、2050年にはおよそ100億人に到達すると予測されている。

こうした急速な人口増加や、発展途上国と呼ばれる国の食習慣の変化により、世界的にタンパク質が不足すると問題視されている。世界的なタンパク質不足を受けて

昆虫食という言葉と一緒に「環境への配慮」という言葉も使われることが多く、昆虫食は気候変動対策として有効であると期待されている。その理由として昆虫の飼育は家畜の飼育と比較すると飼料、水の使用料が少なく、温室効果ガスの排出量も少ないため、環境への負担が圧倒的に少なく資源の節約にもなると考えられている。

さらに、昆虫食は多くのタンパク質を含有しており、栄養が高いということもメリットといえる。タンパク質は、健康な体を維持する必要な栄養素であるだけでなく、酵素やホルモンなど体の機能を調整する働きも担っている。良質なタンパク質を多く含む食品としても昆虫食は注目されている。

昆虫食のデメリット

一方、いくら将来的な食糧危機に備えて環境に配慮された昆虫食が良いと考えられていたとしても、昆虫を食べる習慣のない民族の中では、昆虫の見た目に拒絶反応してしまう人が大半だろう。

また、食糧農業機関(FAO)は、昆虫食はエビやカニなどの甲殻類と同様に、アレルギー反応を引き起こす可能性があるとも懸念している。日本では昆虫食が一般的でないことから、アレルギー表示の義務化が進んでいないことも留意しておくべきポイントだ。

参照:国連食糧農業機関「Are alternative proteins increasing food allergies? Trends, drivers and future perspectives

昆虫食の食品メーカーでの活用事例

社会的に昆虫食が注目される中、食品メーカーでは昆虫食を新たに取り入れる動きが見られる。その一部を紹介しよう。

株式会社CricketFarm

長野県で食用コオロギの養殖事業を展開する株式会社CricketFarmは、生産パートナー制度を設けている。これは食用コオロギ事業への参入業者を増やすことを目的としたプログラムで、実績のない企業様向けに、繁殖・飼育ノウハウなどを提供している。

HEDASymphony株式会社

昆虫食ブームが終わると、食肉に戻ってしまうのではないかと懸念し、昆虫食の普及と繁栄の取り組みを行っているのがHEDASである。同社では、イモムシの畜産と食材としての虫肉を世に広めようと、生のイモムシの販売を手がけている。このように昆虫食を一過性の食べ物としてではなく、昆虫食をタンパク源の供給先として、食肉と同等に位置づけしようとしているのが同社の取り組みである。

株式会社グリラス

徳島大学発のベンチャー企業・株式会社グリラスでは、食用コオロギに関連する品種改良・生産・原料加工・商品開発・販売を行っている。また、食用コオロギの製造だけでなく、2022年6月からはコオロギの飼育過程で発生するフラス(コオロギの排泄物)の有機肥料としての実用化を目指した実験が進められている。フラスには、肥料の三大要素であるリン酸が高い割合で含まれており、牛糞と鶏糞の中間程度の肥料効果が期待できるという。

グループの未来食研究開発センター株式会社

未来食研究開発センター株式会社では、鶏などの生き餌に使用されるミルワームを利用した代替ミンチ肉の開発に取り組んでいる。同社では、自然栽培由来のえさを使用して生育させることで、循環型農業の一環としてミルワームを生育することが可能である。ミルワームは、人間に必要な必須アミノ酸をすべて含んでいるだけでなく、乾燥重量あたりのタンパク質や脂質はヤギ・牛・鳥よりも多く、脂質は少ないといわれていて、高タンパク・低カロリーな食材で注目されているという。

株式会社BugMo

2018年の創業当初より食用コオロギの養殖技術、製造方法の研究開発技術を手がけてきた株式会社BugMo。同社ではコオロギの養殖環境を整備しながら、商品化に向けてさまざまな実験が行われている。その技術を応用し、各企業に向けて「事業で発生する残渣の利活用」「保有施設や保有技術の有効活用」「環境問題や食糧問題など地球規模での課題に取り組む商品開発」を行っている。

昆虫食の今後

多くの人が昆虫を食べる習慣がない日本では、環境に良い食材だからといって昆虫食が急速に進むわけではなく、実際に口にする人はまだ少数派である。日本トレンドリサーチが行った調査では、これまでに昆虫食をしたことが「ある」と答えた方は、全体わずか30%で、「ない」と答えた方の中で、たった9.1%が昆虫食をしてみたいと「思う」と回答した。「食べてみたいと思わない」その主な原因は、「気持ち悪いから」「衛生面に不安がある」などと虫へのマイナスイメージが起因しているという。

急速な地球環境の変化が危惧される中で、注目されている昆虫食。一過性のブームに留まらず、将来的に昆虫食が常食になる日は来るのだろうか。引き続き、昆虫食の動向を注視していきたい。

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