コロナ禍からの景気回復で石炭・液化天然ガスの需要が世界的に高まり価格が高騰した影響で、電気料金が値上がりしている。そこにロシア・ウクライナの情勢の緊迫化が加わり、エネルギー問題に拍車をかけている状態だ。日本国内の大手電力会社は、今年5月の電気料金の値上げを発表し、過去5年間で最も高い水準になっている。
室温管理が必要な食品加工業者やハウス栽培の野菜農家なども燃料費高騰の影響を受け、経費が数百万円単位で上乗せされることもありそうだ。加えて小麦や水産物の販売価格も値上げ傾向が続いている。
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コロナ禍で困窮する日本の食産業に追い討ちをかける値上げラッシュの背景には何があるのだろうか。電気料金、ガソリンなどの燃料費の高騰の要因を探るとともに、エネルギー問題が野菜や資材、運送費の値上げにどう関係しているのか紐解いていく。
電気料金の値上げは9カ月連続 過去5年において最も高い料金に
東京電力をはじめとする大手電力会社10社の5月分の電気料金は過去5年間で最も高くなっている。東京電力は、4月から146円の値上げに踏み切り、全国で最も値上げ率が高い結果となった。
各電力会社が4~5月にかけて、値上げした金額については以下の通りである。
平均的な家庭の一カ月あたりの電気料金 | 2022年4~5月にかけての値上がり | |
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北海道電力 | 8,379円 | 57円増 |
東北電力 | 8,536円 | 105円増 |
東京電力 | 8,505円 | 146円増 |
中部電力 | 8,214円 | 138円増 |
北陸電力 | 7,211円 | 24円増 |
関西電力 | 7,497円 | 24円増 |
中国電力 | 8,029 円 | 24円増 |
四国電力 | 7,915 円 | 24円増 |
九州電力 | 7,221円 | 60円増 |
沖縄電力 | 8,847 円 | 24円増 |
東京電力の今年5月の一カ月あたりの電気料金は8,505円で、前年同月比では24.6%増、1年間で1,683円も値上がりしている。
法人契約の場合は家庭用電力のプランと料金形態が異なるため、どれくらい値上がりするのか一概にはいえないため、ここでは家庭用電力のプランを元に一カ月あたりの飲食店の電気代をシミュレーションしてみよう。
仮に昨年5月の一カ月あたりの電気料金が10万円で、今年度も同じ電力を使用したとすると、今年5月の請求額は25.6%増の125,600円になる。単純計算ではあるが、一カ月あたり25.6%増、つまり25,600円の電気代が上乗せされると、年間の電気代は30万円ほど増えることになる。
電気料金の値上がりによる経営逼迫(ひっぱく)を懸念する企業では、電気料金プランの見直しが進められており、夜間料金が安いプランや電気とガスのセット割が適応される契約に切り替えるなどの対策を立ててコスト削減に努めているところもある。
ガソリンが174円に値上がりする原因とは? 13年ぶりの高値水準を記録
電気料金の値上げは、燃料の輸入価格の上昇が影響している。それと同じ要因で国内のガソリン価格が13年ぶりの高値水準を記録した。国の委託で石油製品価格を調査している石油情報センターが3月30日に公表したデータによると、3月28日のレギュラーガソリンの店頭現金小売価格は1リットルあたり174円で、依然として価格高騰が続いている。
全国のレギュラーガソリン給油所小売価格調査(経済産業省 資源エネルギー庁)
原油高高騰の長期化を受けた政府は、石油元売会社に1リットルあたり25円を上限に補助金を支給し、石油価格高騰の抑制する処置を下しているが、状況改善の目処は立っていない。これを受け政府は、原油価格上昇に関する特別相談窓口を各地に設置し、原油価格上昇の影響で、経営困難となる中小企業者に対しての資金繰りや経営に関する相談を受け付ける体制を整えた。
エネルギー問題でハウス栽培野菜の価格も高騰 毎月の負担額が150万円以上増えている企業も
こうした原油価格の高騰は、食品卸売業や食品加工業にも影響している。
食品関連の企業では品質維持のため、室内の温度管理が行われている工場も多いが、その燃料である重油価格が高騰していることから、毎月の負担額が150万円以上増えている企業も見られるという。
また、原油価格の高騰は室温管理が必要なビニールハウス栽培のコストアップにもつながっている。ワンシーズンで200万円以上の燃料費がかかる農家も珍しくないことから、たとえわずかな燃料費の値上がりでも経営に大打撃を受けてしまうのだ。
こうした複合的な要因が重なることで、食品業界でも価格改定がやむを得ない状況になっており、消費者からも家計への影響を実感しているとの声が上がっている。ロシア・ウクライナ情勢による様々な価格高騰が、日本の食卓にも少しずつ影をおとしてきているようだ。