カニやサケの価格高騰
ロシア・ウクライナ情勢で日本国内の食卓に大幅に影響を受けるものがカニやサケといった水産物である。日本の主な水産物の輸入先は以下の通りで、ロシアからの輸入は全体の約7%を占めている。
■日本の主な水産物輸入先
日本がロシアから輸入している水産物は次の通りである。
■ロシアから日本の水産物輸入品目内訳
水産物 | 金額(全体のロシアの割合) |
---|---|
サケ、マス類 | 189億6200万円(9.5%) |
エビ | 60億8000万円(3.8%) |
カニ | 292億3140万円(61.8%) |
タラ類 | 32億8020万円(7.1%) |
財務省「貿易統計」(令和2(2020)年)を元に作成
ロシアからの輸入水産物は、カニやサケなどが多くの割合を占めている。もしも日本が禁輸措置を行った場合、上記の品目が輸入できなくなり日本国内において水産物の高騰が予測される。このほかにも、ロシアからは「イクラ」「たらこ」「うに」「甘エビ」などを輸入していることから、それらの供給量が大幅に減少する可能性があると考えられる。
小麦や食品油の原料も値上げの可能性がある
日本は小麦の9割を外国から輸入している。農林水産省によると2016~2020年の5年間を平均すると488万トンの小麦を輸入しており、そのうちアメリカが49.8%、カナダ33.4%、オーストラリア16.8%という割合だ。
ロシアやウクライナから直接小麦を輸入しているわけではないが、米シカゴ商品取引所では小麦の先物価格が2008年3月以来の約14年ぶりに高値を記録。国際価格が高騰することは、日本国内の小麦の再値上げにつながるのではないかと不安視されている。
ロシアの麦類の生産量は世界有数。小麦は中国、EU、インドに続き4番目に多く、近年の平均年間生産量は約7688万トンである。ウクライナも小麦は世界で7番目に多く年間2654万トン 生産されている。今回の混乱で生産や輸出が低迷し世界的に品薄になることが予測でき、各国がこれまでのコストで小麦を仕入れることが困難になり価格高騰が懸念されている。そもそもロシアによる軍事侵略が始まる前から世界的に小麦製品の価格が高騰しており、日本国内においても小麦製品の価格の見直しが余儀なくされている状況だ。
そのほかのロシアでの生産量の多い作物は以下の通りである。
ロシアの主要耕種作物 | 2020年収穫量 |
---|---|
小麦 | 8,590万t |
大麦 | 2,094万t |
トウモロコシ | 1,388万t |
ライ麦 | 238万t |
エン麦 | 413万t |
豆類 | 345万t |
ヒマワリ種子 | 1331万t |
テンサイ | 3392万t |
馬鈴薯 | 1961万t |
大豆 | 431万t |
菜種 | 257万t |
特にヒマワリ種子、テンサイ、馬鈴薯は世界の中でも有数の生産量を誇る。食用油の原料となる大豆や菜種の生産量も多いことから、国内の油脂メーカーにも波紋を広げる可能性があると考えられている。
関連記事:「食品メーカーの値上げ動向と原材料高騰対策」に関しても読んでみる
ロシアからの輸入が長期にわたって停止するリスク
カニを取り扱う商社は、主な仕入先がロシアになっていることが多い。そのため、ロシアからの輸入が停止してしまうと大幅な影響が出ると懸念されている。ロシア産のカニが長期的に輸入されなくなることで国内での価格がさらに高騰するだろう。
一方、輸入小麦の価格は政府売渡価格が変わらない限り、急に高騰することはない。そのため小麦を使用した麺類、菓子類などの製品の値上がりにすぐには結びつかない。しかし、世界的に小麦の価格が高騰することから、政府売渡価格にも影響が生じれば消費者への負担が増えると考えられる。ロシアやウクライナから直接輸入をしていない食料品に関しても価格の高騰や品薄が懸念されている今、今後の動向を注視していく必要がある。
関連記事:「ロシア・ウクライナ情勢で懸念されるエネルギー問題」に関しても読んでみる
[参照]
◼️農林水産政策研究所 研究成果報告会「ロシア、ブラジル・アルゼンチン、オーストラリアコロナ禍と農業(2021年11月30日)」(PDF)
◼️財務省「貿易統計 報道発表 令和2年度分(確報)(令和3年5月28日)」(PDF)
◼️水産庁「令和元年度以降の我が国水産動向」(PDF)