有名店の経営者が語る繁盛の極意
飲食店は流行ではなく自分を売る仕事~だからこそ「個人店」の強さは不変です!!
東京・経堂の居酒屋『くいものや汁べゑ』などで数多くの有名居酒屋経営者を輩出してきた宇野社長。居酒屋を営んできた半世紀を「苦労をしたことがない」と振り返る。居酒屋はどの町でもでき、たった5坪の店で暮らしていける。大切なのは常に感謝の気持ちを忘れないこと、お客様を好きになることだと説いた。
「料理の技術がなくても、居酒屋はできます。たとえば刺身をきれいに切れないなら、ぶつ切りで成立するメニューを考えるとか、“できない”を理由に諦めるのでなく、その中でできることをみつけるのです。
目の前にあるもの、かかとが地についた状態で手を伸ばせば届くところに武器はたくさんあります。無理に背伸びする必要はないのだから、それは努力のうちに入りません。急に明日売り上げがあがったりはしないけど、10年と続けるうち、気がつけばいい店になっています」と、後進へエールを送った。
兵庫・加古川の小さな1軒の焼鳥屋から世界へ
2020年1月現在、国内外に1790店舗を展開するトリドールホールディングスの栗田社長は、勝ち戦ができる市場を探しだす嗅覚が必要だと語った。店さえやればお客は来るだろうと1985年、23歳の夏に開業した焼鳥屋は当初、大失敗。
そこで深夜から朝までの営業、女性向けの洋風焼鳥と、当時の焼鳥屋では珍しかった工夫で売り上げを伸ばす。さらにファミリー層向けのロードサイド、またフードコートへと勝負の場を時代にあわせて変えていった。
「自分が一番になれるところはどこか。答えはありませんが、ない答えを探すのが経営です。令和になって時代の潮目が変わってきました。人手不足の時代、たとえばフードテックは中国ではすごい発展をみせています。
テクノロジーは間違いなく人手不足を解決しますが、同時に外食が外食としてなくしてはいけないのがヒューマニズムです。丸亀製麺の手作りできたては、放棄してはいけない最後の砦だと思っています」
繁盛店づくりの原点は飽くなき「美味しさの追究」にあり
現在の焼肉業態の礎を築いた功績により、第16回外食アワードで新設された<外食レジェンド部門>に選出された、叙々苑の新井会長。「お客様に“もう一度”と思っていただく商品力が重要」と強調する。商品力とは、変わらぬクオリティの料理の味と心からの接客だという。また来たいと思っていただき、リピーターになっていただかねば繁盛店にはならない。
「叙々苑は高いのになぜお客様でいっぱいなのかと尋ねられることがありますが、味と接客に相応の価値があればお客様はお金を払ってくださいます。経営は利益を生まないと従業員を幸せにできません。幸せでない従業員の接客では、お客様も幸せを感じることはできないでしょう」と、ともすれば価格競争に陥りがちな焼肉業態に警鐘を鳴らす。
また、料理のことばかり考えるのでなく芸術的センスを磨くこと、家族客はお子様を生涯のお客様と考えて特に気を配ること、といった経験に裏打ちされた哲学が披露された。
飲食店の視点から時流を読み解く
飲食店がお金の流れから解放される日
軽減税率制度の導入にあわせ、国内でも推進されているキャッシュレス。タッチパネルでオーダーから決済までできるシステムや、アプリでQRコードを読み取るテーブルオーダーシステムなど、飲食店でも消費者の利便性を高めるサービスが登場している。それによって得られる購買データの蓄積は、データマーケティングに活用でき、飲食店にもメリットは大きい。
また、消費者向けでなく、飲食店と仕入れ先という企業間取引ではFAXや電話を使わない受発注システムが広がりはじめている。スマホから簡単に発注できるサービスがいくつも登場しているが、選ぶポイントとして「受注する仕入れ先側への考慮」という視点は必要とする大島氏。
「飲食店側の発注作業が一見、便利になっても、卸側が受注データを手入力する仕組みでは、結局人件費がかかります。言い方を変えると、クラウドサービスで提供される受発注システムなど、双方が同じデータを共有する仕組みで卸業者も楽になる仕組みなら、コストが削減でき、そのぶん値引きにつながる可能性もあるのです」
明日の来店客数は予測できる!!~データで経営を「見える化」すれば利益はこれだけ増える!!
三重・伊勢神宮の内宮参道にある『ゑびや』。21世紀になってもそろばんと食券、手書きの帳簿類だった老舗の食堂で、独自のITシステムを開発した小田島氏。カメラで店前の往来を測りAI解析で入店率を出す、POSデータの顧客属性や注文品目に天候などを紐づけるといったデータ分析で、精度の高い来客数予測を実現している。
翌日分の予測ならほぼ9割。予測にあわせて無駄のない仕込みや人員配置が可能となり、売り上げは4倍に増えたという。小田島氏はITによる来店予測を活用するポイントを以下のように示す。
・無駄な仕込みをなくし、作業を自動化する。エクセルなどの属人化しがちな事務作業をそもそもやらなくていい仕組みにする。
・脱「勘と経験」。データを指標にし、根拠のある取り組みを行う。
・既存社員のエンパワーメント。一人ひとりが力をつけ、飲食業以外の能力も伸ばす。
そして、何よりも大事なのは社長がチャレンジし続けることとしめくくった。
【ネクストーーーク】企業を支える2番手のぶっちゃけ裏トーク ~こんな時どうする?飲食店あるある~!!
トップと現場の橋渡しを担う、飲食企業のナンバー2の面々が課題と対策を共有しあったトークセッション。人手不足や人材育成、定着させる取り組みといった雇用面や、禁煙やオリ・パラ対策、キャッシュレス決済といった時事問題までテーマは多岐に及んだ。
従業員教育と定着に関しては、コミュニケーションの重要性を全員が認識。社内イベントの企画や、モチベーションを上げるためのインセンティブ制度など、それぞれの取り組みを披露した。
今の世代は「学びたい世代」と指摘する声も。レクリエーション的なイベントだけでなく、ソムリエ講座など、技術が身につき働く楽しさ、やりがいにつながる仕組みも必要だという。
また、採用に関してはアプリを使った動画面接や、数時間など超短期の日雇いスタイルが話題となった。スマホで完結する面接は採用決定までかかる期間が短いため、同時に複数応募しているアルバイトの採用率が高まっているという。
パラリンピック開催まであと半年!外食産業の役割とは? 私たちが今すぐ出来るココロのバリアフリーとは?
「バリアフリー」に取り組むには、設備の導入や改修が必要で、とても手をまわす余裕がない、と考える飲食店は少なくないだろう。入り口の段差、エレベーターのない空中階、幅が狭く車椅子で入れないトイレといった物理的なバリア(障壁)を今すぐ、すべてバリアフリーにすることはできない。だが、「なんとかしよう、という姿勢を示すことはコストをかけることなく今すぐできる」とする、串カツ田中の貫氏。
「たとえばトイレの幅をはかって情報を提示するだけでも、バリアではなくなります。情報がホームページに載っていれば、お客様もウェルカムの意思表示が読み取れ、問い合わせしやすくなります」
バリアフリーのおもてなしは、物理的には整わなくてもまずは心がけだという。それは高齢者や障害のあるなしに関わらず、相手の立場に身を置き換えて考えるという接客サービスの基本にも通じることだろう。
明日から使える経営改善のヒントを惜しげもなく放出
【物件開発の成功秘話】成長を支えるスピード出店の秘訣!
2019年11月にカフェ・カンパニーとsubLimeの経営統合で誕生した、店舗数450店舗GYRO HOLDINGS。花光氏は50店舗くらいまでは出店エリアの商圏を把握するためすべて自分の足で物件を探し、大家との交渉も自ら行ってきた。「特に初めて出店する場合の立地は非常に重要で、納得できるまで出店すべきではない。一番が立地、次に業態、人の順で物事を考える」という。
「とはいえ、矛盾するようではありますが、一番重要なのは“人”です。物件を探すのも業態を作るのも、今や私ではないので、そこを担ってくれる私より優秀な人材に、いかに経営に加わってもらうかです」