サステナビリティなき飲食店には、お客も従業員も寄り付かない~『FOODIT TOKYO 2019』レポート(後編)

セミナー・イベントレポート2019.10.11

サステナビリティなき飲食店には、お客も従業員も寄り付かない~『FOODIT TOKYO 2019』レポート(後編)

2019.10.11

サステナビリティなき飲食店には、お客も従業員も寄り付かない~『FOODIT TOKYO 2019』レポート(後編)

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食品ロス削減が法律で制定されるなど、従来の消費社会から循環型社会への転換は、飲食店経営にも深く関わっている。目先の利益には直結しないが無関心なまま経営を続けると、未来に何が起こるのか。多様化する価値観にあわせ、いちはやく問題意識をもって取り組むことでしか、これから起こる外食産業の大変革は乗り越えられない。FOODIT TOKYO 2019レポート前編に続き、後編では、飲食ビジネスの持続可能性(サステナビリティ)に意識を向けた3セッションを紹介する。

目次

中小企業でも、サステナビリティなき経営に明るい未来はない

循環型社会が注目される背景には、2030年までの国際目標として国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)等がある。貧困や飢餓問題の解消を目指すSDGsは、大企業が取り組むもので小規模の飲食店には関係ない、と無頓着になっていないだろうか。

だが、たとえば土用の丑の日にコンビニにまで並ぶ絶滅危惧種のウナギ弁当、あるいは節分の恵方巻など大量のフードロスに、消費者は疑問を持ちはじめている。また、牛肉は生産時の環境負荷が高いとされ、欧米では消費を避けたり代替食品を開発したりといったミートレスの動きもある。

株式会社カゲン 代表取締役 子安 大輔 氏

「問題意識のない飲食店は、感度の高い顧客や働き手からも避けられてしまう時代になってきた」と、株式会社カゲン代表取締役・子安大輔氏は警鐘を鳴らす。

子安「国際社会では牛肉生産時の環境負荷も指摘される中で、日本は肉業態ブームです。安易に消費者は安く食べたい、飲食店も安く仕入れて安く売りたいと考えます。肉牛は家畜の中でも生産コストがかかり、本来高いのが当然です。しかし、生産者自身では価格をコントロールできません」

株式会社門崎 代表取締役・千葉祐士氏は「安さを求めすぎると結局、食に携わるみんなを苦しめることになってしまう」と訴える。

株式会社門崎 代表取締役 千葉 祐士 氏

千葉「農畜産業を支えている地方では、都心よりも人口減少、少子高齢化が加速しています。このような働き手のいないところから、安く仕入れ安く売って明るい食の未来があるのか、生産者は喜んで作ってくれるのか、冷静に考えたら分かるはずです」

千葉氏は岩手県・一関を拠点に門崎熟成肉を手がけ、「格之進」ブランドの肉業態で首都圏に16店舗展開している。目指しているのは、岩手の生産者の肉を東京に届けるプラットフォームづくりだという。

千葉「弊社では牛を一頭買いします。生産者が生産維持可能な価格で買い支え、いいものづくりを応援するためです。コストを担うためには自分でその価値を伝えながら売るしかありません。お客様には、食べることは単なる消費ではなく、いわば生産者に投資しているのだと知っていただきたいと思っています。

飲食店は社会全体の食のリテラシー向上に貢献することが重要です。お客様から関心と共感をいただくためには、こうした根底の思想を伝えること、また、業態のオリジナリティが必要でしょう。食ビジネスは自分で価値を作ることができる、とてもクリエイティブな仕事です。飲食に携わる人は、日本の未来を作っているんです」

子安「数年前からコミュニティの時代になるといわれているように、これからの飲食店の大きなテーマです。千葉さんが担っているのは肉のコミュニティづくりですね。瞬間風速的な売上でなく、思想に共鳴するファンを着実に増やすことが結果的に飲食店を持続させることになると思います。そのためには生産者への敬意が欠かせません」

飲食店経営を中長期的に考えていくうえで大事なのは、食材と向き合うことだと訴える小安氏。食材を安価なもの、形が整っていて調理しやすいものという視点だけで選んでしまっていないだろうか。

子安「これからの時代は、店舗や企業が発信するメッセージをお客様が敏感に受け取ります。見かけだけでなく理念を持ってやっていれば伝わります。食材選びは5年後、10年後を考え、少しでも食の持続性への視点を持つ機会にしてほしいと思います」

トレタ中村社長の視点。50年ぶりの変革期、ツールに振り回されないために

「外食元年」と呼ばれた1970年から、POSレジの登場により産業へと急成長した外食市場は、1997年の29兆円をピークに低迷期に陥ったといわれる。成功業態が出ると模倣店が乱立し、消費サイクルは短くなる一方だ。株式会社トレタ代表取締役・中村仁氏は、1980年代半ば以降を、POS以来の革命が起きなかった「失われた30年」と位置づける。折しも登場したグルメサイトでは、飲食店の業態やメニューの目新しさが求められ、消費されていった。そこには目の前の繁栄しかなく、持続性はなかった。

株式会社トレタ 代表取締役 中村 仁 氏

中村「これまでは“商品の時代”でした。業態重視とも言い換えられます。店舗運営技術は高度化し、店舗は小型化、業態は多様化、ニッチ化に向かいました。このとき、業態開発、メニュー開発、これらの主語はすべて店舗目線です。では2020年以降は何が起こるのか。これからは価値観が転換し、顧客の時代を迎えます」

時代は顧客体験(CX)の価値を高める顧客中心主義へとシフトするという。外食は解体と再構築が起こり、共感やつながりといった、コミュニティや社会貢献が重視される。新規客を消費する考え方からリピート思考へ、顧客関係づくりがより求められるようになる。


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