10年後、外国人客が日本人口の半数に。需要は地方に向かう~『FOODIT TOKYO 2019』レポート(前編)

セミナー・イベントレポート2019.10.10

10年後、外国人客が日本人口の半数に。需要は地方に向かう~『FOODIT TOKYO 2019』レポート(前編)

2019.10.10

10年後、外国人客が日本人口の半数に。需要は地方に向かう~『FOODIT TOKYO 2019』レポート(前編)

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「外食の未来が生まれる場所を作ろう」とはじまったカンファレンス『FOODIT TOKYO』が、2019年9月25日に開催された。5度目となる今回は来場者数が1000人を越えるなど過去最大の盛り上がりをみせ、熱気を帯びたトークセッションが繰り広げられた。

過去、繰り返し取り上げられてきた、慢性的な人手不足や低迷する生産性といった外食産業の課題。進化するテクノロジーは飲食店経営に、どのような未来への道筋を示すのか。飲食業のリーダーと食を支えるIT関連のスピーカーが、毎回議論を重ね続けてきた。FOODIT TOKYO実行委員長の中村仁氏(株式会社トレタ代表取締役)は冒頭の挨拶で、「食の未来がITで変わるのは確かだが、ITは方法論のひとつにすぎない。新たな価値観、発想の転換で未来が生まれる1日にしてほしい」と語った。

多様化し変容する社会に、飲食店はどう向き合うのか。今回はIT活用にとどまらない提言が、全15セッションそれぞれの切り口で行われた。その中でも共通して、“将来的な国内人口の減少と増加するインバウンド”への対策に言及していた3セッション。その模様を前編で紹介する。

目次

インバウンド需要の変化をとらえハードとソフトの両面で対策

アジア圏の経済発展などを背景に増加する訪日外国人観光客(インバウンド)は、2018年に年間3100万人を超えた。政府は観光立国化を目指し、2020年までに4000万人、2030年までに6000万人に増やす目標を掲げている。

人口減少に向う日本で、インバウンド人口が国内人口の半数を超える日が10年後、あるいはもっと早く訪れることを指摘した、株式会社ワンダーテーブル代表取締役社長・秋元巳智雄氏。

秋元「インバウンドの多い新宿エリアに出店している弊社のしゃぶしゃぶ業態『鍋ぞう』では、多い時には9割が外国人客です。今、国内全49店舗に年間約40万人が来店しています。その上をいくのが、がんこフードサービスさん。関西圏を中心に96店舗の和食業態を展開するグループ全体での外国人客は、年間約148万人に上ります。ラーメンなどのファストフード系を除くレストラン業態では、おそらく日本一の数字です」

インバウンド人口が増えたとはいえ、なぜこれほど『鍋ぞう』や『がんこ』が外国人客から選ばれるのか。業態が和食という単純な理由ではない。秋元氏とがんこフードサービス株式会社代表取締役社長・小嶋達典氏は共に、15年ほど前から訪日外国人の集客に力を入れており、近年のインバウンド需要の変化をとらえていた。

■訪日観光客をとりまく時代の変化

これまで(2000年前後)2019年
団体旅行個人旅行
一見さんリピーター
モノ消費コト(体験)消費
ガイドブック等を活用ブログ、SNSを駆使

 

小嶋「世界的な日本食ブームは変わりませんが、著しい変化は情報収集の方法です。インバウンドのお客様はSNSが非常に好きで、スマホひとつで情報を手に入れます。今や日本人が知らない小さな店までよく知っていて、たとえば新婚旅行で狭い焼鳥屋へわざわざ訪ねる方たちもいます。日本の立ち飲みを満喫することがアミューズメント、まさにコト体験なんです」

変わるインバウンド需要に、小嶋氏と秋元氏は実際どのように取り組んでいるのか。看板やホームページの多言語化はもちろん、利用動機をつかむための一例に小嶋氏はネット予約をあげた。

小嶋「言葉が通じない相手との電話のやりとりは店側、客側、双方にとってストレスです。ネット予約ができるだけでもお客様が店を選ぶ理由になります。また、SNSや旅行クチコミサイトなどでの集客も大事です。これはワンダーテーブルさんの得意分野ですね」

株式会社ワンダーテーブル
代表取締役社長 秋元 巳智雄 氏

秋元「クチコミサイトはユーザーが多い、トリップアドバイザーと大衆点評をおさえています。ご来店されたらSNSに情報を発信してもらうためにもWi-Fiの設備は必須です。加えて、中国や韓国、台湾ではすでにスマホ決済があたり前で、キャッシュレスに対応していない時点で選択肢から外されてしまいます」

これらはいわばハード面の対策だ。より重要なのはソフト面の対策だという。

小嶋「何をすればモノからコトになり、おなかだけでなく心も満たしていただけるか。答えがあるのは現場です。がんこでは本部から指示を出すのではなく、それぞれの店舗が考えておもてなしに工夫をこらしています」

たとえば客自身に寿司を握ってもらい、職人の握った寿司と食べ比べるイベントを開いている。そこでは料理長が片言ながらも英語で対応し、参加者から喜ばれているそうだ。

小嶋「外国のお客様は料理を食べるだけでなく、現地の人と喋りたいんです。従業員も、お客様の喜びをまのあたりにすると意識が変わってきます。ちょっとした会話を3ヶ国語くらいできるようになった寿司職人もいます」

秋元「多言語でサービスするには、外国人スタッフの積極的な雇用も必要ですね。日本人スタッフにも異文化を学んでもらう機会になります。当社ではEラーニングなどを用いて相互の文化理解を進めているところです。インバウンドへの取り組みは今後、飲食店の継続的なテーマです。来年のオリンピック・パラリンピックをひとつのきっかけに、できることをぜひ考えていただきたいですね」

現在は都市圏や観光地を中心に成長しているインバウンド市場だが、今後、増え続ければ需要は地方にも向かうだろう。働き手の減った日本に押し寄せる外国人客。その時なにが起き、飲食店はどうなるのか。次の各セッションの提言に、そのヒントが見出せるかもしれない。

美食の街に学ぶ、食を通じた地域経済活性化のポテンシャル

経営の“脱マッチョ”をテーマに掲げて登壇した、カフェ・カンパニー株式会社代表取締役社長・楠本修二郎氏。「マッチョ経営をやめる」とはどういうことか。店舗を増やさない、儲けないということではないという。


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