堀江「飲食店の究極の業態とはなんでしょうか。私がたどり着いた結論は、スナックです。私は全国どこへいってもスナックに立ち寄るんですよ。どんな町でもスナックはありますよね。そこでお客はスナックのママや常連の仲間に癒されに行きます。スナックにはコミュニケーションという本質的になくならない部分があり、それ以外のムダを削ぎ落としているから、地方でも成り立っているのです。飲食の根源的な価値は、実はコミュニケーションの部分だけです」
多くのスナックのメニューは、お酒と乾き物のつまみだ。お客がラーメンを食べたいといったら、出前で対応もしている。食材ロスは少なく、職人を雇う必要もない。コミュニケーションの場として成立すれば、お客は集まる。
堀江「コミュニケーションとは、単に人と人との会話だけではありません。インターネットで店舗を検索してウエブページを見る、店舗に入る、そこからすでにコミュニケーションは始まっています。繁盛しているお店は、情報をうまく出しています。お客に料理ではなく“情報を食べさせる”ことに成功してるんです」
例えば料理のおいしさを増すことも、情報とコミュニケーションによって可能だという。ラーメン屋であれば“店内にラーメンの由来を書く”、焼肉店のカウンターで“お客の前で肉をさばく”“部位の説明をする”といったパフォーマンスも情報とコミュニケーションだ。堀江氏は、そこにお客を満足させる価値があるという。
堀江「お客はパフォーマンスが見たくてお店に行くのです。おいしいものを食べるだけだったら、コンビニの冷凍食品である程度満足させられます。大手チェーンでもセントラルキッチンがあり、お店では料理を作っていません。実は、自店で料理を作ることに価値はないんです。究極は調理すら外注していいくらいです。成功している業態には、繁盛の理由、素晴らしいノウハウが隠されています。いいところをどんどん取り込みましょう」
飲食業界に身を置く者にとって、テクノロジーや消費者動向など様々な変化を踏まえ、改めて既存の価値を問わなければならない時代になっていくようだ。それでは、具体的にどう行動するべきか。この課題について効果を上げているサブライムの取り組みを紹介したい。
サブライムが取り組む、飲食店の価値の向上対策
サブライムは2006年の設立後、現在まで積極的なM&Aにより380店舗、売上230億円、従業員5千名の規模に成長している。代表取締役の花光雅丸氏は、飲食店の本来の価値を上げる取り組みを語った。
花光「飲食業界で働く方々には、接客や料理で人に喜んでもらいたいといった共通する思いがあります。しかし、現代の飲食業の環境は、それ以外の業務にかけなければならない時間が本当に多くあると感じています。もっと接客サービスに時間をさきたいと思われたことのある方も多いでしょう。外食の人手不足の本質は、この悪循環が、飲食で働きたい気持ちを持っている若者を離れさせてしまうことにあると感じています」
飲食業の本質的な業務に店舗が専念するため、サブライムはここ数年、様々な業務の効率化に取り組んでいるという。その一環として、2017年2月に電話予約などを受け付けるコールセンターを社内に設置したそうだ。