飲食店の価値を解体・再構築する
瀬川「そもそも価値を作るのは難しいことです。一番難しいのは我々の価値観がどう変わっていくか予想しづらいところですが、現状を見れば伺えることができるでしょう」
例えば、音楽業界ではネットでの配信サービスや音楽イベントが盛んになり、イベント会場ではアーティストやフェスのグッズ、飲食サービスが売上の中で存在感を増すようになっている。また、ホテル業界では10年ほどで民泊が世界中に普及し、191カ国6,500都市に400万の施設が登録され、通算2億人が利用するようになった。
瀬川「飲食業界でも手ぶらで利用できるBBQや、飲食店から料理やシェフを持ち出すサービスなどが広がっています。この共通点は、利用者は“唯一無二の体験”に払う費用が非常に増えていることです。外食体験はどのように解体できて、再構築できるのでしょうか」
清宮「私はラーメンの一風堂を中心に店舗展開していますが、ラーメン業界は中食との競争が続いています。大手食品メーカーのインスタントラーメンのクオリティが上がり、コンビニでは100円台で売られています。さらにラーメンだけでなく外食全般でもニッチ化が進んでいて、トレンドも年度ごとに変わっています。その中で価値の解体と再構築をどうすべきかと、今まさに考えているところです」
子安「私は商業施設のレストランフロアのプロデュースなどをしていますが、自前主義をゼロベースで考え直したらいいのではと思います。例えば朝食マーケットを考えた時、コンビニやファストフード店などでは客単価300円や500円で商売が成り立ちますが、新たにハコもヒトも料理もすべて自前で揃えていては成り立ちません。しかし、ビジネス街の飲食店の朝の時間を借りて、そこで朝3時間だけ働けるスタッフを雇って、お弁当を売っていただくなど組み合わせていったら、成立するかもしれません」