中村「地方では1年に数回、参加費一人15万円する一晩限りの食の体験サービス『DINING OUT』というものがあります。募集を開始すると15分で売り切れてしまうそうです。これは飲食業界以外の方がやっているのですが、飲食業界の人がまずできなかったことが私にはショックでした。我々が持っている、飲食店とは場所を構えて長くやっていくものという先入観をリセットして、アイデアを考えられればと思います」
清宮「一風堂ブランドを考えるとき、ラーメン屋の定義とは何かというところから探しています。美味しい商品を出すことは重要ですが、空間やサービスに何を求められているかを整理して、出店のチャネルや店舗運営のあり方を、オリンピックにかけて変えていかねばなりません」
瀬川「海外のラーメン店では、体験されることはだいぶ違っていますよね」
清宮「私どもの海外でのラーメン展開は、レストランスタイルでやっています。店の作りも100席ほどでサーブの仕方もレストラン形式にして、アルコールもアペタイザーもお出しして、シメにラーメンという流れです。だけど日本のラーメン屋の良さは活かして、厨房を180度オープンにしてシズル感を出しながら、日本の掛け声や活気の良さを現地のメンバーがやっています」
ニューヨークの一風堂は開業して8年間、1日多いときで1,000名が来店し、月の売上は7,000万円にのぼる。ラーメン店とレストランを融合したことが、海外の消費者から受け入れられているという。
清宮「一番大きなポイントは日本がどうなるかだと思います。それこそインバウンドといわれていますが、実数で見ると現在はたいしたことありません。ただし、フランスのように国民の数以上にインバウンドがあり、日本もそうなれば、飲食業界とインバウンドは密接につながっていくでしょう。自分たちの店や会社の中だけで考えるのではなくて、“世の中の動き”と“自分たちのブランドのあり方や価値”を、総合的に判断しなくてはいけない時代になっています。ポジティブに捉えて、価値の再定義をしていきたいですね」
飲食店の価値の再構築は、経営者一人ひとりに求められる。1,000名を超える来場者で満員となった会場では、今回のイベントテーマとなった生産性について考える姿が様々に見受けられた。これからの飲食店を経営していくなら、固定観念にとらわれず、自店の価値は何か、お客は何を求めているかを見つめ直し、飲食本来のあり方を考える機会を作ってほしい。