飲食業界に必要な2024年問題対策の進め方~日本外食品流通協会 小田会長

卸・メーカー2024.03.18

飲食業界に必要な2024年問題対策の進め方~日本外食品流通協会 小田会長

2024.03.18

「そのためには新規開拓が必要になります。いまある取引先を維持するのではなく、貪欲に新規の取引先を増やしていく。ただでさえドライバー不足ですから、いま自店舗の流通を見直す外食企業は少なくありません。そういった飲食店さんのニーズを開拓することはできるはずです」

さらに進めるべきことがあると小田会長は続ける。

「設備投資も進めていくべきです。たとえば立体自動倉庫を導入するのも一案です。マイナス25度の冷凍倉庫のなかでの作業は、人員が集まりにくい象徴のようなもの。これを自動化することで働き方改革にもなります」

冷凍庫に限らず、包装・仕分け・搬送の分野でのロボット導入による省人化も設備投資の一環として考えるべきという。

「重労働の作業をロボットに任せるといっても、やはり管理は人の手に頼らざるを得ません。コース見直しで余裕ができた人員を、倉庫の管理に充てるのもいいでしょう」

そしてもっとも重要だと小田会長が見ているのが、受発注にかかわるシステムの導入、事務処理のDXだという。

「2024年問題でもっとも憂慮されるのが、配送すべき時間に配送できなくなることです。そのためにはシステムを導入して、受発注を確実にすることが求められます」

食品流通の世界で圧倒的に時間が取られる業務は、じつは受発注のやりとりだとされている。食品には様々な規格があり、店舗ごとに加工が必要になることもある。こうしたイレギュラーな部分のやりとりには間違いが多く、神経を使わざるを得ない業務なのだという。

「これを未だに電話やFAXで行うこと自体が、効率を悪くしているともいえます。いまは様々な受発注システムがあります。計画的な発注が可能ですし、急な注文でも確実性が担保できる。リードタイムが稼げるので配送にも余裕が持てます」

すべての事業者に求められる改革への意志

もちろんここでも荷受け側の協力が必要だ。システム導入とひと言でいうのは簡単だが、小規模な個人店などには、そのための準備を強いることになる。当然、反発も予想される。その点、小田会長はこういう。

「コース変更と同じく、荷受け側に丹念な説明をして理解していただく必要があります。しかしその一方で、いま物流が危機的な状況にある中、業務を少しでも改革しようという意思のない事業者は、やがて淘汰されてしまうことになるでしょう」

確かに、今後考えられる配送料の値上げはもちろん、配送時間の変更、システム導入などに反発を続けていけば、やがて経済原則の中で淘汰されることは間違いなさそうだ。

「淘汰を回避するには、卸業と飲食店それぞれで業務の見直しを進めていく必要があります。卸業者は、生産性向上や人がやめない職場づくりはもちろん、受発注システムを活用することで商品のリードタイムを設定し、事前に納品量などを把握する。それに応じて配送コースの再編成も可能になります。飲食店は、多少のコストをかけてでもシステムを使った発注に切り替えていく。でなければ、対応コストが高くなって商品代やサービス面で割を食うことになってしまいます」

さらに小田会長はいう。

「もちろん受発注システムを運営する会社にも、改革に二の足を踏む飲食業者の交渉・説得のための労を執ってもらわなければなりません。上流・下流を問わず、食品流通にかかわるすべての事業者が一丸となって乗り越えていく必要があるのです」

飲食業界に押し寄せる困難には、業界全体で立ち向かうしかない。いま何ができるかを模索し、小さくても第一歩を踏み出すことが大事なのだ。

一般社団法人日本外食品流通協会 会長 小田 英三 氏

1994年オーディエー株式会社 代表取締役社長に2012年に同社会長に就任。一般社団法人 日本外食品流通協会の近畿支部長を歴任後、2018年から一般社団法人 日本外食品流通協会 会長に就任する。
日本外食品流通協会:http://www.gaishokukyo.or.jp/
オーディエー株式会社:https://www.foods-oda.jp/

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