食品業界におけるFAX受注の利用率
食品業界では、昔からFAXが受発注業務の主な取引方法として利用されている。DXが推進されている現在、多くの企業はどのような状況になっているのだろうか。
食品業界におけるFAX受注業務の状況
インフォマートの資料によると、食品卸企業の約5割が主な受注方法としてFAXを利用している状況だ。その他の電話やメールを含めたアナログ受注は全体の約8割となっており、従来の方法で業務を遂行している企業も多い。
調査対象:BtoBプラットフォーム受発注を受注側として利用する、主に食品卸企業の正社員
調査方法:インターネット調査
調査期間:2023年8月24日~9月8日
回答者 :349名
いまだに多くの企業がFAXによる受注業務を実施しているものの、デジタル化に移行したいと考えている事業者がは約7割と多いのも事実だ。
上記の資料によると、「受注業務のデジタル化を前向きに考えている企業」は合計で約65.3%となっている。また「請求書業務のデジタル化に取り組みたいと考えている企業」も合計で65.6%と同程度の割合を占めている。
理由としては、やはりFAXなどのアナログ業務だと間違いが起こる、FAX用紙からの注文処理や入力作業、記録媒体の保管などが負担となっていることが挙げられる。「会社全体における1日当たりの受注時間をお教えください」という質問では、受注業務に2時間以上かけている企業が全体の約3割、1時間以上と答えている企業は全体の5割を超えた。
FAX受注が業界標準となった理由
食品業界に限らず、ビジネスシーンにおいて昔から受発注業務とFAXには強い結びつきがある。というのも、FAXは手書きの内容をそのまま送信できるため、署名や印鑑などの重要な情報を盛り込める便利なツールとして重宝されていたからだ。電話のような口頭でのやりとりに比べると、紙媒体で取引履歴を記録できる点も優れている。
またFAXは電話回線を利用してデータを送受信できるので普及率が高い。利便性において、FAXは欠かせない存在となっていた。加えて直感的な操作や視覚的にも確認しやすいなど、デジタルツールに疎い高齢者でも使いやすい。
特に食品業界では卸売市場での競りなど、取引相手との対面によるやりとりが一般的だったため、紙やFAXなどのアナログ文化が根強く残っているのも理由の1つと言える。しかしコロナ禍によるテレワークの普及などにより、現在では従来のアナログ業務をデジタルへ移行することの重要性が高まっている。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性
食品業界を取り巻く環境は常に変化しており、多様化する顧客ニーズへ対応するには、従来のやり方に固執していては生き残れない可能性もある。そこで求められているのが、「デジタルテクノロジーを活用した新たな価値の創出により、事業の変革や市場の競争優位性を高める」というDXへの取り組みだ。
具体的にはデジタル化による業務の効率化や販路拡大、サプライチェーンの強化や人材育成などの様々なものが挙げられる。それらの手段を活用することで、企業の利益向上やコスト削減につなげることがDXの主な目的だ。
食品業界におけるDXの必要性とその取り組み
上記のことから食品業界では、DXへの注目は年々高まっている。特に従来のアナログ業務をデジタル化することは、食品業界が抱える人手不足や品質管理、衛生管理などの様々な課題解決に役立つことが多い。
例えば「業務の効率化による人件費の削減」「ペーパーレス化によるコスト削減」「食材の管理能力の向上や人的ミスの抑制で食品ロスを抑える」といったことにもつながる。もちろん企業によって抱える問題は異なるため、自社にあった適切な取り組みを行うことが重要と言えるだろう。
FAX受注のデジタル化への移行
食品業界で受発注業務の主な手段として利用されるFAXだが、必ずしもデジタルへ移行する必要はあるのだろうか。FAXの利便性やコスト、デジタル化への具体的な移行方法から見ていこう。
FAX注文の廃棄が進む背景
いまだに多くの企業がFAXによる受注業務を実施しているが、現在ではそうした機器の利便性が高いとは言いづらい。なぜなら、受発注システムやクラウドサービスなどが普及しており、より効率的で迅速に業務を行えるツールがあるからだ。
例えば、FAXはある事業者と通信中に別の事業者から受信することはできず、回線エラーになって注文を受信できない。手書きによる注文書では商品の特定がむずかしいことも多い。 紙やインクの消耗もあり、書類の保管場所を確保する必要があるといった問題点が挙げられる。加えて機器が故障した場合には、修理や交換作業などで時間や費用が掛かってしまう。FAXは一度に複数の宛先に送ることが困難であり、手動で1つ1つ書類を送受信していると時間がかかってしまう点もデメリットだ。
デジタル化を行えば上記のような様々な問題を解決できるため、FAXからの移行を前向きに検討する企業も増えているのが現状だ。
FAX注文を電子デジタル化するメリット
FAX注文書をデジタル化するメリットには、主に以下のようなことが挙げられる。
- FAX回線の利用中による通信エラーが無くなる
- 商品や規格の特定が確実になる
- 入力作業の手間を減らし業務の効率化につながる
- クラウドサーバーへデータが保存されるので書類の保管スペースがいらない
- パソコンやスマホなどの端末から簡単にデータの確認や入力作業が可能
- ペーパーレス化により利用する資材の削減
デジタル化によりこれまで行なっていた手作業を自動化できれば、受発注業務に費やす時間と人件費の削減につながる。そして書類の内容がデータとして保存される点も大きなメリットだ。スマホなどから簡単に確認できることに加え、取引記録の保存も容易になる。
ただし、FAXで利用するインクや用紙などの消耗はなくなるが、インターネット環境を整える必要があり、サービス利用に継続的な費用が掛かる場合もあるため、費用対効果をしっかりと検証した上で取り組むことが重要だ。
FAX受注をデジタル化する具体的な方法
FAX受注のデジタル化には、主に2つの方法が挙げられる。
クラウド型の受発注サービスを利用する
1つ目は、 「クラウド型の受発注サービスで注文データを送受信する」という方法だ。受発注システムを利用することで、取引先からのFAXをデータとして受け取れる。システムの通知やメールなどで受信を確認し、パソコンなどから作成した書類を送信することで従来のようなやりとりが可能だ。
こちらは、パソコンやスマホなどから簡単に接続できるため、専用のFAX機器を設置するなどの導入コストを抑えられる。基幹システムと連携することで、受注データの入力作業を省ける点も大きいだろう。
例えば「TANOMU 」は、スマホのLINEアプリを使って注文受付から商品案内、集計機能なども備えている受発注システムである。取引先からのFAX受注をOCRでデータ化できるため、Web発注が難しい企業からの受注にも対応しやすい。加えてスマホやタブレット端末から操作が可能となっており、テレワークや外出先での受注業務に対応できる点も大きなメリットだ。
FAXの文字をデータ化し、受注処理する
2つ目は、 「FAXの文字をデータ化して受注処理する」というものだ。具体的には、既存のFAX機でプリントした書類をスキャンすることでデジタルデータに変換できる。FAX機にスキャナーが搭載された複合機があるとスムーズにデータ化しやすい。
前提としてFAXやスキャナー、もしくは両方の機能を兼ね備えた複合機などが必要になる。すでに設備がある場合には導入コストがかからず、取引先に発注方法を変更してもらうなどの手間もかからないだろう。ただし、受信したFAX用紙をいちいちスキャンする手間がかかるが、FAX複合機なら紙で出力せず画像のまま受信するので手間を省ける。
取引先がFAX発注のままでも、OCRシステムで対応可能
取引先が既存のFAX発注を希望していても、受注をデジタル化できるツールとして挙げられるのがOCRによるFAX注文書の処理サービスだ。
「発注書AI-OCR 」では、取引先ごとに異なる書式の発注書であっても対応できる。加えて、手書きの注文書でも高い精度で読み取れるため、入力ミスや修正作業に追われる心配も少ない。販売管理システムなどと連携すれば、注文内容の入力作業も削減できるメリットがある。
自社のデジタル化を推し進めつつ、取引先からのFAX受注にも柔軟に対応したいなら、「TANOMU」や「発注書AI-OCR(invox)」といったOCR化が可能なクラウドサービスの活用がおすすめだ。
デジタル化を進める際の注意点
FAX受注のデジタル化を推し進める上で注意したいのが、クラウドサービスを導入する際の取引先の協力だ。特に中小企業の場合、発注方法を変えることの懸念もあり、「デジタルへの移行は難しい」「受発注業務はFAXで十分間に合っている」と回答するお得意様も出てくるだろう。
食品業界の特徴を押さえ、自社に最適なDXを推し進めよう!
FAXのデジタル化移行は、業務の効率化に加えてコスト削減や様々な関連業務の簡略化に役立つ手段であると言える。しかし取引先からの協力が必要な場合もあるため、事前にしっかりと相談した上で導入することが望ましい。
特に食品業界では個人経営や小規模な飲食店なども多く、デジタル化への移行にコストやリソースを割けないというケースが考えられる。そうした企業からの要望へ柔軟に対応するためにも、利用するサービスの選定DXへの取り組み方はしっかり検討していくべきだろう。