飲食店の棚卸のコツとポイント
飲食店の棚卸を実施する際には、いくつかのコツやポイントもある。店舗の在庫を正確に管理し利益につなげるためにも、しっかりと頭に入れて棚卸を実施しよう。では具体的なポイントについて紹介する。
棚卸の頻度
飲食店においては、できるだけ細かい頻度で棚卸を実施することが重要だ。特に飲食店では数多くの食材を取り扱っているが、単価自体の変動が多々ある。中には、そうした食材の管理を正確に行うために毎日棚卸をしている店舗もあるが、従業員のリソースなどを考えると厳しい場合もあるだろう。
しかし棚卸をしていないと粗利や原価率が分からないため、きちんと利益が出ているかを把握できない。そのため、最低でも月に1回は棚卸を実施すべきだ。
価格の変動が激しい食材に注意
飲食店の中には、価格の変動が激しい食材を取り扱う店舗もある。例えば、高級肉を仕入れている焼肉店や、時価でメニューを提供している握り寿司などだ。
肉や魚を取り扱う場合、部位によって脂を取るなどの処理を施したり、保存方法が特殊であったりと様々なケースが存在する。すると余計に原価が変わってくることもあり、管理するのが大変だ。
対策としては「こまめに棚卸を行う」「管理しやすい表ソフトを利用する」「価格変動の激しい食材と、飲料や調味料などを分ける」などが挙げられる。
廃棄を少なくするためのコツ
飲食店で最も管理に気をつかうのが、「食材の廃棄につながってしまう行為」といえる。なぜなら、せっかく仕入れた食材を廃棄してしまうと、その分の仕入れ値がそのままマイナスになってしまうからだ。
例えば「たくさん出るメニューの食材を多めに発注したが注文が少なかった」「古い食材があるのに、仕入れたばかりの新しい食材を料理に使ってしまった」など。これらの理由により使われない食材が傷んでしまうと、廃棄せざるを得ない。なるべく食材の廃棄を少なくできるよう、上手く運営する必要がある。具体的には、
・季節毎や曜日毎に人気のあるメニューをしっかりと把握する
・古い食材から使用するよう、在庫の前出しや棚の管理など実施する
・冷蔵や冷凍、常温などの食材に適した保存場所をしっかりと確保する
などだ。また人によって調理時の仕込み量が違うケースや、従業員の調理ミスなどによる人的要因などもあり得る。無駄な廃棄を生み出さないよう「作業工程をマニュアル化し誰が行っても適切な量にする」「スタッフの教育体制を整える」などにも気を配ることが重要だ。
在庫管理表の作成
在庫管理表を作成しておくと、棚卸時の計算や食材の仕入れ管理が楽になる。なぜならエクセルなどの表計算ソフトを利用すれば、在庫の数を入力するだけで数値が算出されるからだ。さらにデータをもとに1日の消費量を予測できれば、次の仕入れ日や仕入れ量が数値化しやすい。主な記入事項としては、
・食材の品番や品目
・入庫数や出庫数
・現在の在庫数
・消費期限
などが挙げられる。ひと月の出庫数に対して経過日数(28~31日)で割ると、1日あたりの消費量も大まかに算出することが可能だ。そして週末や曜日などで消費される割合を設定することで、より精度の高い消費量を求められるだろう。
また消費期限を入力しておけば「いざ調理する際に食材が使えなかった」などの事故防止にもつながるはずだ。
在庫の適正量とは?
在庫を適正量に保つためには、できるだけ食材のロスが少なく、かつ、品切れにならない程度に在庫を保つことが重要だ。
しかし食材ロスを気にして在庫量を少なくしすぎると、来店客が増えた際に品切れを起こしてしまう。逆に在庫量が多すぎると、古い食材が傷んでしまい、廃棄につながる。
そのため、定期的な棚卸を行うことで、常に最適な在庫量を把握することが必須となる。例えば、
・過去の棚卸データから季節毎や曜日毎に1日の食材の消費量を算出する
・廃棄の多い食材をピックアップする
・在庫管理表に食材の消費期限などを記入しておく
などだ。また、時期によって消費期限が短く、傷みやすい食材もある。そういった場合には「発注する間隔を短くする」「予備の在庫を少なくする」などの対策も必要だ。
仕入れの無駄を省くためにも定期的な棚卸を
棚卸は在庫の管理だけでなく、店舗の利益や損失を把握するためにも欠かせない作業といえる。特に飲食店では、数多くの食材を使用することや単価の変動などがあり、こまめな在庫管理が欠かせない。
しかし、中には従業員が不足しているなどの理由により、定期的な棚卸が困難なケースもある。そんなときには、在庫管理表の作成や、専用の会計ソフト、棚卸機能を持った食材の受発注システムを活用し、効率化や無駄な入力作業を削減するなどの工夫も必要だ。
仕入れの無駄や食材の廃棄を減らすためにも、定期的な棚卸を実施し店舗の利益を高めよう。