原価率40→35%、年間500万円のコストを削減した仕入のIT管理術~ステーキハウス88(沖縄テクノクリエイト)

飲食・宿泊2024.10.31

原価率40→35%、年間500万円のコストを削減した仕入のIT管理術~ステーキハウス88(沖縄テクノクリエイト)

2024.10.31

原価率40→35%、年間500万円のコストを削減した仕入のIT管理術~ステーキハウス88(沖縄テクノクリエイト)

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88(ハチハチ)の愛称で親しまれている沖縄の老舗ステーキ店「ステーキハウス88」。運営する株式会社沖縄テクノクリエイトは同店以外にも焼肉やハンバーグ、しゃぶしゃぶ、日本そばなど、26店舗を展開している。

店舗拡大とともに課題となっていた従業員の棚卸や仕入のミス、経理負担の問題をITツールで解決。ミスの削減だけでなく、原価率や年間の仕入額も改善した。

目次

多店舗展開にともなう人為ミス・どんぶり勘定からの脱却

【Q】沖縄で長い歴史がありますね。

株式会社沖縄テクノクリエイト 総務部 部長 仲里 太陽 氏
株式会社沖縄テクノクリエイト
総務部 部長 仲里 太陽 氏

総務部 部長 仲里太陽氏(以下同):当社の創業は1955年にさかのぼります。当時、沖縄に派遣されていた米兵向けのバー「CLUB88」を営んでいました。1972年の沖縄返還後、日本人向けの商売に転換する必要がありました。ステーキ文化が根付き始めていたこともあり、1978年に「CLUB 88」から名前を取って「ステーキハウス88」をオープンしたのです。

  

 

 

【Q】コロナ禍中に店舗数を拡大されています。

2019年からのコロナ禍で観光客が激減したことから、地元のお客様向けの業態を増やす戦略に変更したのです。1000円でステーキを気軽に楽しめる「ステーキハウス88Jr.(ジュニア)」をはじめ、ハンバーグ店、焼肉店、しゃぶしゃぶ店などの出店を増やしました。それまでの13店舗から26店舗に拡大し、コロナ禍をなんとか乗り越えることができました。
 

ただ、店舗拡大のスピードが速く、管理運営の課題が目立つようになりました。仕入や棚卸などで日常的なミスが目立ってきたのです。また、一気に食材が増えたことで、経理の作業も増加しました。当社はコロナ禍の前からこうした非効率的な業務の見直しを始めていて、業務ミスをカバーするITツールを導入していきました。
 

仕入の課題解決策として、受発注システムを導入

【Q】当時の課題はどれほど深刻でしたか?

最も深刻だったのが棚卸です。毎月末の棚卸で、無視できないほどの差異が出ていました。スタッフごとの多少のオーバーポーションでは説明がつかないほどの額だったのです。しかし、仕入や在庫管理は各店舗に任せており、紙の伝票でしか確認してない状況で、まさにどんぶり勘定でした。肉の仕入額が高騰し始めていたこともあり、正確に原価管理したいという思いがありました。

そのために見直したのが仕入の管理方法です。当時、仕入品はFAXで発注しており、商品の間違いや発注漏れが発生していました。紙の作業だったため、経理担当の納品書と請求書の金額照合も大変でした。発注書をFAXで送信した後、わざわざ電話で内容が届いているか確認するという無駄な作業もありました。また、店舗とセントラルキッチンとの間で起きる発注数量の間違いも課題でした。

その他にも、全店で使用する食材の統一も悩みの種でした。店舗ごと、発注する人ごとに、仕入品や価格が異なっていたのです。例えば、あるスタッフは300円の醤油を仕入れる一方で、別のスタッフは500円するブランド醤油を使い続けることもありました。

【Q】どのように解決していったのですか?

FAX発注でなくインターネットで発注できるツールがあることを知り、検討しました。さまざまな受発注システムがある中で、当社が基幹システムとして使っている東芝テックの店舗管理システムと仕入データが連携できるものを探していました。

中でもインフォマートの『BtoBプラットフォーム受発注』が飲食業界で広く使われているので、仕入先の協力が得られやすいだろうと、2019年2月に導入を決めました。

IT化で原価率40→35%に改善。年間500万円の仕入コストを削減

【Q】受発注システムの使用で混乱はありましたか?

メニュー例:特上サーロインステーキ
特上サーロインステーキ

最初に取引業者を集めて、受発注システムを使うという説明会を開きました。取引先のうち半数がすでにインフォマートを使用していましたが、残りの半数はこれから導入していただく必要がありました。協力を要請するにあたって、当社のスタンスとしてはご協力いただけないのなら取引は断念してもらわなければならないという覚悟がありました。

結果的にほとんどの取引先がインフォマートを使った受発注に賛同していただきました。当社の覚悟をご理解いただいた上でのご決断だと思い、本当に感謝するばかりです。

メニュー例:テンダーロインステーキ
テンダーロインステーキ

稼働するまでには、発注品のマスタを各店に登録し、社内に受発注システムを使うよう周知しました。こういった準備に3カ月ほどかかりました。準備さえクリアできれば、あとはもうすべてが良い方向に向かっていったという印象です。社内の70代のベテランスタッフも、最初は「画面が見えない」「面倒だ」と言っていたのが、今では自在にスマホを操って、何の苦労もなく発注しています。

【Q】導入効果はありましたか?

まず発注作業が楽になりました。発注履歴の見える化で作業が容易になっただけでなく、食材の統一化も図れました。システムの画面上から発注品を外したり追加したりすることで、スタッフごとに違っていた調味料なども統一できるようになりました。

全店の仕入品を統一した結果、年間の仕入額が500~600万円も削減できたのです。実質的に、導入初年度でシステム使用料をペイできた計算です。原価率もそれまで40%前後だったものが35%に改善されています。今後も食材の整理・見直しを行うことで、随時原価率の改善は見込めると思います。

また、基幹システムとして使っているPOSとインフォマートの仕入情報をCSVデータで連携できるようになったので、月次の原価計算や棚卸計算が速く正確になりました。会計ソフトへの入力についても、CSVデータの読み込みで入力作業は大幅に削減されましたし、納品書と請求書の金額照合も簡略化されました。

受発注システムの導入による全店での仕入の見える化と一連の作業効率化で、コスト削減、原価率改善、棚卸の正確性向上が果たせました。またセントラルキッチン、仕入業者、各店舗間の受発注方法も確立されたことで、人為的なミスもありません。

ES向上で時代の変化に対応する

【Q】業務改善以外にどのような変化がありましたか?

IT化で従業員の業務負担が軽減されたことで職場環境は明らかに改善され、従業員のストレスも軽くなりました。従業員の満足度を向上させることは、多店舗経営する上で必須です。従業員が一丸となっていれば、どんな時代変化にも対応していけると思います。IT化による業務改善は、今後も続ける必要があると痛感しています。 

株式会社沖縄テクノクリエイト

本社所在地:沖縄県那覇市辻2-8-21
設立:1994年1月(創業1955年)
代表者:代表取締役 金城康次
事業内容:飲食店の経営
公式ホームページ:https://s88.co.jp/

 

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