実際、食材の使用量が守られていなかったり、歩留まりが予想より悪かったり、破棄したりと、理論値通りにいかないことも多い。そこに着目した竹内氏が取り組んだのは、食材の仕入れ額をベースにした「理論原価の低減」だ。
「私が目を付けたのは、出数ではなく仕入れ額です。まず、『BtoBプラットフォーム受発注』の発注データをダウンロードし、発注額が高い食材から順に並べます。
そのデータを元に、原価に対してその食材が占める『占有率』を出し、占有率の高い食材の値を下げるのです(図3)」
占有率の高いものから、商品を入れ替える、仕入れ先を見直す、スケールメリットを生かして交渉するなどを行い、この占有率の%を下げれば、目に見えて原価率は下がることになる、というわけだ。ちなみに、同社はデータ発注を行うことで、食材ごとの仕入れ額を計算する手間を一掃している。
データから明らかになる、見えないロスの判別法
「ロスは歩留まりなど捨てている食材というイメージですが、実際にはオーバーポーションや、賄いで食べていた(笑)というケースでも発生します。ところが、そういったロスは現場にいないと見えてきません。そこで私は、データからロスを見つけ出して削減したのです」
竹内氏の方法も、実際原価額と理論原価額の差からロスを算出するのだが、ここでもメニュー単位ではなく食材ベースで行っているところに特徴がある。
まず、Globridgeでは、使用食材や使用量など、メニューごとのレシピを『メニュー管理機能』に登録している。そこに、『BtoBプラットフォーム受発注』の仕入れデータを連携することで、「理論原価」が自動で算出されている(図4)。
「POSデータを使ってメニューの出数を調べ、牛肉なら牛肉の理論原価を合算することで、食材ごとの『理論原価』が出ます。その値と、『BtoBプラットフォーム受発注』で実際に発注した食材ごとの金額=『実際原価』を比べると、ギャップが計算できます。そのギャップこそ、食材ごとの『ロス』(図5)というわけです」
ロスの大きい食材が明らかになると、具体的な対処法は見えてくる。
「ロスの多い食材がわかったことで、要因を簡単に見つけられるようになりました。そして、例えばポーションが原因の場合は、現場にあらためて使用量を守るよう教育を徹底したり、肉のように歩留まりが問題の場合は、加工方法をあらためて教えたり、あらかじめカットされている商品に入れ替えたりといった方法で対処し、ロスを削減しました」
頭を働かせる環境づくりが原価以上の付加価値を生む
このようにGlobridgeは「原価改善」以外でも、データを活用して現場が抱える課題を見える化した。そして、スタッフにも自分事として取り組んでもらうことで、現場力を最大限に発揮した。そのことが利益率を押し上げ、V字回復という結果につながったのだ。
指揮をとった大塚氏は、最後にこんなメッセージで締めくくった。「飲食の世界で20年やってきて感じるのは、良いお店には頭を働かせるスタッフがいるということです。
そんなお店を作るために経営者がすべきことは、スタッフが自ら考えて実行できる環境を作ることだと思います。つまり、正確なデータを示したうえで、ロジックを教えてあげる。そうすれば、きっと彼らは原価以上の付加価値を自ら生み出して、お客様に提供してくれることでしょう」
株式会社Globridge
設立:2008年9月 事業内容:飲食店のプロデュースと運営
代表者:代表取締役 大塚 誠
本社所在地:東京都港区赤坂3丁目11番地3号 赤坂中川ビルディング2F
公式HP:http://www.globridge.co.jp/