【Q】神田といえば下町というイメージもありますが、ワインはすぐに受け入れられたのでしょうか。
東京の山手線沿線のなかでも、特に神田や新橋は、“オヤジの街”というイメージを持たれている方も多いと思います。それでも女性だってもちろん沢山いますし、そもそも男性だからワインを飲まないということは無いと思っていました。
むしろ、お酒好きは多いわけですから、1度馴染んでしまえば、ワインのファンにもなってくれるだろうなと。それでも最初は苦労しましたね。
「とりあえずビール」という方にも「最後に一杯だけワインを飲んでみませんか?」と勧めてみたり、「次にいらっしゃったら飲んでみてください」とお願いしたり、とにかく色々やっていました。
その時はまだ、ワイン居酒屋というよりもバルに近い雰囲気で、スタッフも全員ソムリエの資格を持っていたのですが、まずフロアスタッフ全員のソムリエのバッジを外してもらいました。
【Q】どういうことでしょうか?
つまり、まずワインに馴染んでもらうために「ソムリエとしてお客様と接するな」と。コンセプトはワイン“居酒屋”ですから、ワインの品種や、産地がどうだとか云う“うんちく”よりも「自分で飲んでみたら、美味しかったんですよ」と勧めてくれる方が、親しみが持てるじゃないですか。
もちろん、詳しく聞いていただければ、ちゃんと答えられますけどね。そういうさりげなさも、ちょっとカッコいいかなと(笑)
現場を離れてもお客様が付いている。それが真のマネージャー
【Q】店がオープンしてから、早い段階で現場を離れられていますね?
僕は、他の店で雇われのマネージャーをしている時から、自分のコピーをどう作っていくかをテーマにしてきました。
自分ひとりでお客様を集めて、店を拡大するには限界があるんです。それにその状態では、僕が1日も店を休めなくなってしまいますからね(笑)。
ですから自分のファンのお客様には、どんどん他のスタッフを紹介して、自分と同じように、良い関係性を築いていってもらいます。最終的に自分が店に居ても居なくても、店を繁盛させること。それを考えるのが、マネージメントする人間の役目だと考えています。
【Q】具体的にスタッフにはどのように育って欲しいですか?
特に若いスタッフには、お客様に可愛がられるには、確かな知識と技術、経験の裏付けが必要と伝えています。若い頃というのは、スタッフの『キャラクター』だけで通用してしまう部分も多いのですが、30代ともなるとお客様の見る目が変わってきます。『面白いだけのスタッフ』では通用しないことも多くなる。
ですからスタッフには、とにかく早い段階から色々な勉強してもらったり、現場で新しい経験を積んでもらったりしています。