改正女性活躍推進法による事業者への義務項目と対策

法令対策2026.07.06

改正女性活躍推進法による事業者への義務項目と対策

2026.07.06

改正女性活躍推進法による事業者への義務項目と対策

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2026年4月1日、改正女性活躍推進法が施行され、男女の賃金差異や女性管理職比率などの公表を義務化する範囲が拡大された。

深刻な人手不足に加えて女性労働者の割合が他業界の平均より低い食品業界では、女性が働き続けられる職場環境の整備は喫緊の課題だ。改正の中身や義務化の内容、対策を解説する。

目次

改正女性活躍推進法の全体像と2026年4月の改正内容

改正法は何を目的とし、4月から何が変わったのか。まず法律の趣旨と、新たに義務となった情報公表の枠組みを整理する。

女性活躍推進法の目的

女性活躍推進法は、働く場面で女性が能力を発揮できる環境を整えることを目的とした法律である。正式名称を「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」という。2015年に制定された時限立法であり、当初は2026年3月末で効力を失う予定であったが、2025年の改正で有効期限が10年延長された。これにより、同法は2036年3月31日まで継続することになり、あわせて生理や更年期、不妊治療など、女性の健康への配慮が基本原則として明記された。

2026年4月改正で拡大した情報公表の義務

今回の改正では、公表義務の対象事業者は従業員101人以上に拡大した。規模ごとの項目は次のとおりである。

公表する項目従業員数
100人以下101~300人301人以上
●男女の賃金の差異努力義務義務義務
●女性管理職比率努力義務義務義務
●女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供
・採用した労働者に占める女性労働者の割合
・男女別の採用における競争倍率
・労働者に占める女性労働者の割合
・係長級にある者に占める女性労働者の割合
・役員に占める女性の割合
・男女別の職種又は雇用形態の転換実績
・男女別の再雇用又は中途採用の実績
努力義務義務
1項目以上を選択
義務
1項目以上を選択
●職業生活と家庭生活との両立
・男女の平均継続勤務年数の差異
・10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
・男女別の育児休業取得率
・労働者の一月当たりの平均残業時間
・雇用管理区分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間
・有給休暇取得率
・雇用管理区分ごとの有給休暇取得率
努力義務義務
1項目以上を義務

[参考]内閣官房「女性の職業生活における活躍推進プロジェクトチーム報告(令和7年3月26日)

公表は、自社のホームページまたは厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」で、求職者が確認できる形で行う。

食品製造業の現状と改正の背景

産業別に女性労働者の割合をみると、製造業では女性労働者の割合、女性正社員の割合、女性管理職の割合が平均を下回る。

産業分類女性労働者
(平均値)
女性正社員
(平均値)
女性管理職
(平均値)
女性の勤続年数
(平均値)
全産業27.2%21.2%12.6%9.9年
宿泊業,飲食サービス業40.7%30.3%14.9%8.7年
卸売業,小売業33.6%23.3%8.6%10.6年
製造業22.7%
(全体)
16.8%
(全体)
7.2%
(食料品製造業、
飲料・たばこ・飼料製造業)
10.4年
(食料品製造業、
飲料・たばこ・飼料製造業)

[参考]厚生労働省「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく認定制度に係る基準における「平均値」について(2025年6月9日)

また、男女間賃金格差が比較的大きい業種に挙げられている食品製造業では、食品産業センターからアクションプランが公表されている。

[参考](一財)食品産業センター「男女賃金格差解消アクションプランの策定」につきまして

自社は対象となるか。従業員規模で決まる義務の線引き

自社が義務の対象になるかは、従業員の人数規模で決まる。まず線引きを確認したうえで、努力義務の事業者が取るべき姿勢を整理する。

義務の対象は常時雇用101人以上の事業者

情報公表が義務づけられるのは、常時雇用する労働者が101人以上の事業者である。なお、101人以上の事業者には、以前から一般事業主行動計画の策定・届出も義務づけられている(2022年から)。今回の改正で新たに拡大したのは、情報公表の部分である。迷いやすいのが、人数の数え方である。常時雇用する労働者には、パートやアルバイトであっても、期間の定めなく雇用されている人や、1年以上継続して雇用されている人が算入される。人数が101人前後の食品事業者は、まず自社が該当するかを確認したい。

従業員100人以下の食品事業者は努力義務

従業員が100人以下の事業者は、情報公表も行動計画の策定も努力義務にとどまる。多くの小規模な食品工場や卸売業がこの区分に該当すると考えられる。そのため、2026年4月の段階で、公表や届出を直ちに法的に求められるわけではない。

努力義務でも今から動きたい理由

しかし、努力義務であることは、何もしなくてよいという意味ではない。食品の製造や包装、配送の現場では、パートを含め多くの女性が活躍している。人材の確保と定着が課題となるなかで、女性が働き続けられる職場づくりは、企業の規模を問わず経営の基盤になる。 加えて、事業の拡大で従業員が101人以上になれば、その時点で公表などの義務が生じる。早い段階から自社の数値を把握し、環境を整えておくことが、後の負担を抑えることにつながるだろう。

食品事業者が取るべき3つの対策

これまでの改正内容を踏まえ、食品事業者が今後取り組むべき対策を3点に整理する。いずれも専門知識を要さず、自社の体制のなかで進められる。

1.自社の女性活躍の状況を数値で把握する

最初に着手したいのは、自社の現状を数値で把握することであり、次のような項目の算出が推奨されている。

  • 女性労働者比率
  • 女性管理職比率
  • 男女の賃金の差異
  • 平均勤続年数(または継続雇用割合)

厚生労働省は、数値の算出方法を示した資料や、同業種・同規模の平均と比較できる「男女間賃金差異分析ツール」を公開している。企業が情報を登録・公表できる「女性の活躍推進企業データベース」も整えており、様式に沿って入力すれば、効率的に数値を整理できる。

数値を把握した後は、同業種平均との比較や部署ごとの状況確認を行い、自社の課題を整理したい。たとえば、女性管理職比率や勤続年数に差が見られる場合は、要因を確認することで、今後の取り組みにつなげやすくなるだろう。

2.働き続けられる職場の環境を整える

次に、女性が働き続けられる環境の整備である。特に今回の改正では、生理や更年期、不妊治療といった女性の健康面への配慮が求められている。食品事業の現場では、製造ラインの固定シフトによる時間的制約や、配送業務における荷役の身体的負担などが女性の定着を阻む要因になりやすい。対策として、短時間勤務や柔軟なシフト交代制の導入、物流現場でのアシストスーツ活用や荷物の軽量化といった「現場環境の改善」とあわせ、健康相談窓口を設けることが、定着率向上へ直結するだろう。一般事業主行動計画を作る際は、自社の課題に沿った目標を一つ定め、現場で無理なく継続できる施策から始めていくのが望ましい。

3.公表と認定制度を活用する

最後に、把握した数値の公表と、認定制度の活用である。義務の対象となる事業者は、女性の活躍推進企業データベースなどを通じて、所定の項目を公表する。取り組みが優良な事業者は、申請により厚生労働省の「えるぼし」認定を受けられる。認定企業は、公共調達で加点評価を受けられるほか、日本政策金融公庫の融資を低金利で利用できる。また、女性の健康支援に取り組む企業を対象とした「えるぼしプラス」認定も新設された。認定マークは、商品パッケージや求人票に掲載できる。特にパートや若手の求職者が職場を選ぶ際、「働きやすさの客観的な証明」がある企業は選ばれやすい。小規模な工場や卸売業であっても、大手との採用競合において大きな差別化要素となるだろう。

女性が働き続けられる職場づくりが人材確保の前提になる

2026年4月に施行された改正女性活躍推進法により、常時雇用する労働者が101人以上の事業者で、情報公表の義務が拡大された。とくに101人以上300人以下の事業者でも、「男女の賃金の差異」と「女性管理職比率」が新たに必須項目に加わった点が大きい。100人以下の事業者は引き続き努力義務にとどまるが、対応が不要というわけではない。人材の確保が課題となるなかで、女性が働き続けられる職場づくりは、義務の有無や企業規模にかかわらず、これからの経営を支える取り組みとなる。自社の現状を数値で把握し、職場環境を整え、公表や認定制度を有効に活用するという3つの対応は、専門的な知識がなくとも自社の体制のなかで着手できる。早い段階から動いておくことが、人材の確保と将来の義務化への備えにつながっていくといえる。

[出典]
e-Gov法令検索「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律
厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ
厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース
内閣府男女共同参画局「女性活躍推進法に基づく男女の給与の差異の公表
厚生労働省「認定制度に係る基準における平均値(雇均発0609第3号 令和7年6月9日)
内閣官房「女性の職業生活における活躍推進プロジェクトチーム報告(令和7年3月26日)

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