電子請求書システムを導入するメリット
電子請求書システムは、改正電子帳簿保存法やインボイス制度に対応するうえで必要になってくる。企業が導入することでどこが改善されるのだろうか。主に以下の3つの点が挙げられる。
物品コストの削減
例え1枚であろうと、請求書を作成して先方に郵送するまでには、少なくとも
・請求書の印刷代
・インク代、用紙代
・封筒代
・郵便料金
などの費用がかかっている。これ以外にも、作成や封入、発送作業には労力が必要なことも忘れてはいけない。場合によっては残業代も発生するだろう。これらを年間で考えると、請求書発行に関する業務だけでそれなりの費用がかかる。請求書システムを導入した場合、これらの作業のほとんどをシステム上で完結できるため、請求書の発行から郵送までにかかる費用を大幅に削減できる。
人件費の削減
請求書システムで作成した書類は、オンラインでそのまま先方に送ることが可能だ。そのため、人力による請求書のプリントアウトや折れ、封入、宛先のラベル貼り、発送などの作業は一切不要。今まで複数の人数で行っていた作業が、最小限の人数で短時間に処理できる。
人的ミスの軽減
システムの管理画面を更新・管理することで、人力で起こりがちな入力や発送のミス、宛先の間違い、請求漏れなどを防ぐことができる。間違いのない請求書の発行は、取引先からの信頼にもつながる。
さらに、取引先からの請求書をオンライン上で受け取り、CSV出力できるシステムであれば、経理ソフトにそのままデータを読み込ませることができる。手入力がなくなり、発行・受取・管理にかかる手間もミスも大幅に削減できるだろう。
適切な請求書システム選びのポイント
企業にとって大きなメリットが得られる電子請求書システムだが、実際に導入するとなると、どれを選べばいいのかわからないことが多いだろう。そのための検討材料として、以下3つのポイントは押さえておきたい。
(1)事業形態、効率化する範囲を明確にする
ひとことで電子請求書システムといっても、サービスによって利用者や特化している機能などが異なる。そのため、自社の事業形態をきちんと把握し、また作業のどの部分を自動化・効率化するのかなどを比較検討することが重要だ。
自社の事業形態と電子請求書システム選びのパターンとポイント
請求書 発行・受取数 | 効率化範囲 | 請求書システム選びのポイント |
---|---|---|
少なめ | 請求書作成のみ | ・作成と送付機能を持つシンプルなタイプで十分 ・紙の請求書のやり取りが多い場合、郵送代行サービスなどのオプション追加が可能なシステムかも検討 |
多め | 請求書作成、請求データの取り込み | ・請求書の一括送信機能があり、まとめて大量の請求書の送付が可能なものがよい ・経理システムなどほかのシステムと連携できるAPI連携タイプも検討 |
不問 | 請求後業務(入金消込、支払通知発行など) | ・請求先からの入金確認、未入金の場合の支払通知書の自動発行など、請求書発送後の業務にも役立つ機能が必要。銀行口座との付け合せ作業など、面倒な事務処理が大幅に削減できる。 |
事業形態と業務を効率化する範囲に合ったシステムの選択ができたら、さらに細かい機能について比較検討が必要だ。
(2)サービスの提供タイプと料金体系を確認する
ほとんどのシステムは電子請求書の発行以外にも、さまざまな機能を備えている。また必要な機能だけをオプションで追加することも可能だ。主に以下の機能があるので、自社で希望するものがあるかどうかをあらかじめ確認することが大切だ。
・請求書受け取り機能
・郵送代行
・請求書などの一斉作成・発行
・支払通知書の自動発行
・入金消込
・会計システム・販売管理システムと連携
・公共料金(運輸、電話など)などの請求書の自動取込み
・豊富な項目(日付、取引先、件名など)による検索
・関連書類(稟議書、領収書など)の添付 など
このほか、電子帳簿保存法や2023年に施行されるインボイス制度に対応していることも重視すべきポイントだ。その場合、請求書のやりとりを紙やPDFですると相手の経理処理で手作業が発生するため、効率が上がらない。インボイス制度を見据えるならば、『BtoBプラットフォーム請求書』のようにデジタルデータ型のシステムを選ぶべきだろう。
参考:国税庁「電子帳簿保存法関係」
参考:国税庁「インボイス制度」
2022年1月改正!電子帳簿保存法のへの対応
1998年に施行された電子帳簿保存法により、契約書、請求書、領収書、注文書、納品書、見積書、送り状などの国税関連書類は、従来の紙から、電子データ(電磁的記録)での保存が可能になった。
さらに2022年1月の改正で、帳簿書類の保存手続きなどが大幅に緩和された。中でも重要な変更点のひとつが「電子データでやり取りした書類は、紙による保管ではなく、電子データのまま保管」しなくてはならなくなったことだ。
つまり、自社が請求書システムを導入しておらず、取引先から送られて来たデジタルデータをそのままの状態で保存したい場合、自社でも請求書システムを導入しなければならないことになる。
参考:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました(PDF)」
システムにあると便利な電子帳簿保存法対応の機能
電子帳簿保存法の改正により可能になったデジタルデータの保存の実施には、国税庁が定める所定の要件を満たす必要がある。これから新しく請求書システムを導入する際は、以下の機能を搭載しているシステムを選ぶと便利だ。
保存データの真正性を示す機能
デジタルデータの場合、記録の偽装や改ざん、削除などが紙よりも容易であることが多く、その記録が残りにくい。そのため電子帳簿保存法では、書類の真正性を証明するために、以下のいずれかの方法を行うことが義務付けられている。
(1)タイムスタンプ(電子時刻証明)の付与
(2)データの修正や削除ができない、または訂正や削除の履歴が残る形で保存できるクラウドやシステムの利用
(3)「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」の備付けによる対応
上記の基準をクリアするには、①または②の機能を持つシステムを導入するのがいちばん簡単であり、現実的な方法といえる。
スキャン機能
例えば取引先が請求書システムを採用しておらず、紙による書類でやり取りしている場合は、その書類をスキャンしてデジタル化し、保存することが認められている。スキャンにはスキャナのほか、デジカメ、スマートフォンも含まれる。使用できるデバイスの要件は、国税庁の資料から確認できる。
参考:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】(PDF)」
指定項目による検索機能
デジタルデータで保存した書類は、税務職員の求めに応じて即座に開示できなければならない。そのため、請求書システムはデータの検索機能が求められる。2022年1月改正後の設定項目は「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3つで、日付や金額の範囲指定での検索、または2つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件で検索できれば問題ない。
参考:国税庁「電子帳簿保存法上の電子データの保存要件」
文字情報を自動認識しデータ化するOCR機能
電子帳簿保存法で定められているわけではないが、便利なのがOCR(光学式文字認識)機能だ。これは紙やPDF形式などで受け取った書類を、手入力することなく自動的にデジタルデータに変換する機能で、作業時間の短縮や、入力ミス低減に貢献する。
最近では、AI(人工知能)を使ったAI-OCR機能も登場。データの読み取りを重ねながら機械が学習していくことで、従来のOCRよりも文字認識性が向上するほか、フォーマットの違いによる読み取りミスの大幅な減少が期待できる。
システムのセキュリティとサポート体制
インターネット経由でやり取りやデータ保管などを行う請求書システムは、性質上、セキュリティリスクもある。利用しているサーバー環境はもちろんのこと、請求書システムサービスの安全性についても、事前に確認しておくといいだろう。主な確認ポイントは以下になる。
・通信データ暗号化の有無
・サーバー監視体制
・バックアップ体制
セキュリティだけでなく、サポート体制の確認も重要だ。例えば、システムに異常が起こった、使い方がわからないなど、問題が起こったときすぐに対応してもらえない場合、業務の遅延だけでなく、最悪の場合は損失につながるケースも考えられる。自社の作業時間内に問い合わせができるサービス会社を選択すると安心だ。
自社の要件に合ったシステム選択を
本記事では、電子請求書システムをメインに、導入のメリットやシステムの機能などについて解説してきた。そのポイントの多くは、システム全般を比較検討する際にも当てはまる。自社の業務内容や予算などのニーズにマッチしたシステムを選ぶために充分に比較検討することが重要だ。