パワハラ防止法、2022年4月から中小企業にも義務化。知っておきたい定義や対応策

法令対策2022.04.13

パワハラ防止法、2022年4月から中小企業にも義務化。知っておきたい定義や対応策

2022.04.13

パワハラ防止法、2022年4月から中小企業にも義務化。知っておきたい定義や対応策

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2022年4月1日より労働施策総合推進法、通称「パワハラ防止法」の改正が施行され、大企業だけでなく中小企業にも適用されることとなった。

そもそもパワハラ防止法とは何を定めた法律なのか、企業はどのような対策を講じるべきなのか、厚生労働省の資料を参考に解説していく。

目次

パワハラ防止法とは

パワハラ防止法(労働施策総合推進法)は2020年6月1日に施行された。このとき対象となったのは大企業だったが、2022年4月1日からは中小企業にも範囲が広がった。

遵守しないことに対する具体的罰則は設けられてないものの、対策を講じない場合は後々損害賠償責任を問われるトラブルに見舞われるケースもある。パワハラ問題はブランドイメージの低下や従業員の意欲の低下、退職の発生など不利益が多く、パワハラ防止法を守ることは企業を守ることに直結する。

パワハラの定義

職場におけるパワーハラスメントは、厚生労働省によって下記の3つの条件がすべて揃った場合と定義されている。

・優越的な関係を背景とした言動

・業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動

・労働者の就業環境が害される

 

正社員、契約社員、派遣社員、アルバイト・パートなど雇用形態に関係なく、同じ職場で働くすべての人が対象となる。また、上司から部下に対するパワハラの他、部下から上司に対する「逆ハラスメント」も存在するなど、パワハラは実にさまざまな形で発生する可能性がある。

パワハラ防止法の対象となる中小企業

2022年4月1日より、下記条件に当てはまる中小企業はパワハラ防止法の義務化対象となった。中小企業の定義は、中小企業基本法により下記①または②のいずれかを満たすものとなる。

 業種分類①資本金または出資金の総額②常時使用する従業員の数
製造業その他3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
小売業5千万円以下50人以下
サービス業5千万円以下100人以下

 

中小規模の食品メーカーや飲食店に求められる対応とは

パワハラ防止法では、具体的にどのような対応が求められるのだろうか。厚生労働省が公開している「職場におけるハラスメント関係指針(PDF)」をもとに整理していく。

①事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

③職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

④上記の措置と合わせて講ずべき措置

 

①事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

雇用主が労働者に対して、パワハラを許さない方針を明確化する。パワハラの具体的内容を明文化し、積極的に周知・啓発することも求められる。パワハラ行為を行った人物は厳正に処罰することを就業規則等に規定することも必要だ。

②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

パワハラを受けた労働者が相談できる窓口を社内に設置し、窓口担当者が適切に対応できる環境を整える。

③職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

パワハラが起きた際は事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者に配慮した適正な措置を取る。事実関係が明らかになった後、パワハラ行為を行った人物には就業規則に準じた適正な措置を行うと同時に、再発防止に向けた対策を講じる。

④上記の措置と合わせて講ずべき措置

パワハラ被害者および、パワハラ加害者のプライバシーを保護する措置を講じ、他の労働者にも周知する。また、パワハラ被害を相談したことで社内の立場が悪くなるなどの不利益は生じないことを定め、周知・啓発する。

今すぐすべきパワハラ対策

パワハラのない組織を作るためには、事業主側の工夫だけでは不十分だ。特に中小規模の飲食店は本部と店舗が離れていることが多いため、店長や従業員一人ひとりの協力が必要不可欠となる。会社一丸となってパワハラ対策を講じていこう。

①パワーハラスメントに関する理解を深める

まず、厚生労働省が定めているパワハラの定義を従業員に対して周知し、理解を促進することが必要だ。身体的な暴行だけでなく、暴言や名誉棄損などの精神的な攻撃もパワハラにあたる。

また、過大すぎる・過少すぎる仕事の割り振りもパワハラになるほか、プライベートに立ち入ることもパワハラと認定されることもある。パワハラ加害者は自身の行動に自覚がないことが多いため、日ごろの労働状況を振り返る機会を設けるとよい。

②社内研修やパワハラ講習を実施する

パワハラの具体的な発生原因や事例を用いて、社内研修やパワハラ講習を実施し、積極的な参加を促そう。パワハラは立場の違いによって発生するため、一般スタッフ向けの研修とマネジメント向けの研修で分けて行うとより効果的だ。

③社内の相談窓口を周知する

パワハラ発生時に対応する担当者が誰なのか、社内のどこに問い合わせればよいかを従業員に周知しよう。このとき、相談内容は他言しないこと、告発した人物の不利益には繋がらないことを従業員に固く約束することが大切だ。

加えて、パワハラに対応する担当者の負担も考慮する必要がある。会社としてマニュアルを準備することはもちろん、パワハラ担当者向けの研修や社内エスカレーションの整備を行い、担当者がスムーズに業務に従事できる環境を整えることが重要だ。

パワハラ防止法に対応するならプロに相談を

パワハラ防止法の事前対策を講じる際や、万が一パワハラが発生した際は速やかな対応が求められる。正しく迅速に対応するために、専門家の協力を得ることも有効だ。以下にパワハラに関する相談先と主な相談内容を示すので参考にしてほしい。

 相談先相談内容
社会保険労務士・就業規則作成、社内ルール策定など防止措置を実施する場合
労働委員会

・パワハラが紛争に発展し社内解決が難しい場合

・会社と従業員間の和解を目指す「あっせん」を希望する場合

弁護士・パワハラによって仮処分や訴訟の申し立てを受けた場合

パワハラ防止措置を講じて優れた労働環境へ

これまで適用対象ではなかった中小企業にとっては、今回の法令対応で少なからず負荷がかかるだろう。しかし、企業側は労働者が安全して働ける環境を作ること、また、労働者もハラスメントについて関心を持ち理解を深めることで、より良い労働環境を築くことにつながる。双方が協力し、パワハラに対してしっかり対策を講じていこう。

[参考]
厚生労働省「職場におけるハラスメント関係指針」
厚生労働省「労働施策総合推進法の改正(パワハラ防止対策義務化)について」


飲食店のパワハラ防止法対策

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