帳簿の記入・保存も必要
受取側である飲食店は、発行側から交付される適格請求書だけでなく、定められた事項を記載した帳簿の保存も必要となる。記帳方法は、現行の区分記載請求書等方式と同様で以下の通り。
・課税仕入における取引先の氏名または名称
・取引年月日と取引内容(軽減税率の対象品目を明記)
・取引の金額
また卸売市場での生鮮食料品等の譲渡など、適格請求書の交付が免除されるケースもある。その場合、受取側が仕入明細書を作成し保存することで、仕入税額控除の要件を満たすことが可能。
仕入明細書を作成する場合には、適格請求書と同様に以下の事項を記載することが必要となる。
・仕入明細書の作成者の氏名または名称
・取引年月日と取引内容(軽減税率の対象品目を明記)
・税率毎の合計金額と適用税率
・税率毎の消費税額等
・適格請求書発行事業者の氏名または名称と登録番号
税額計算の方法は2種類
インボイス制度では、売上や仕入れの消費税を算出する際に2種類の計算方法から選択できる。
1つは「積上げ計算」で、適格請求書等に記載された消費税額等を積み上げていく方法。請求書毎の消費税を足し、かつ1円未満の端数については切り捨てることが可能なので、取引の回数が多いほど消費税額が少なくなる。売上税額をこの方法で算出するには、適格請求書発行事業者であることも必要だ。
もう一方は「割戻し計算」で、課税の対象となる売上や仕入れの合計金額(税込)から適用税率を掛ける方法。それぞれ標準税率と軽減税率で別々に計算するものの、課税標準額や課税仕入れの合計から算出するので、請求書が多くなるほど端数が積み上げられて元の消費税額よりも高くなる可能性がある。
また売上税額と仕入税額で選択できる計算方法には、一定の制限がある点に注意。具体的には、
・売上税額で積上げ計算を選択、仕入税額は積上げ計算のみ
・売上税額で割戻し計算を選択、仕入税額は積上げor割戻しで選択可
となる。
紙媒体での管理がより困難に
現在でも紙媒体で請求書を作成し、郵送・FAXなどでやりとりしている企業は多い。しかし2019年の軽減税率の導入に始まり、2023年10月からのインボイス制度では適格請求書への変更なども求められるため、書類管理の負担が増加しているのが現状。
たとえ飲食店といった受取側であっても、適格請求書や帳簿の管理、仕入税額控除の計算などの事務作業量が増えることは明白だ。
そこで挙げられる対策としては、「BtoBプラットフォーム請求書」などのシステムの導入。同システムは電子帳簿保存法に対応しており、請求書の発行や受取を電子データでやり取り可能なので、入力作業や数値管理の自動化や作業の効率化を実現できる。
免税事業者等から仕入れる際の経過措置・注意点
消費税の納付が免除されている免税事業者は、適格請求書発行事業者への登録ができないので、インボイス制度に対応した請求書を交付できない。つまり受取側である飲食店などは、この免税事業者から原材料や備品などを仕入れると、その金額分の仕入税額控除も不可能となる。
しかしいきなり仕入税額控除が不可になるわけではなく、制度が施行される2023年10月1日から最大で6年間の経過措置として、定められた割合の仕入税額控除が可能となる。
【経過措置の期間と割合】
・2023年10月~2026年9月:80%控除可能
・2026年10月~2029年9月:50%控除可能
飲食店でインボイス対応を進めるためには?
インボイス制度の導入により、飲食店・外食企業では請求書管理を始めとした経理業務の煩雑化が想定される。これを機に、インボイス制度に対応したクラウド請求書サービスの導入も検討してみよう。例えば『BtoBプラットフォーム 請求書』は、請求書インボイスが発行でき、また請求書の「発行」・「受取」双方を電子化することが可能だ。
参照:『BtoBプラットフォームシリーズにおけるインボイス制度への取り組みについて』
早めのインボイス対応で消費税の負担を軽減
インボイス制度の導入後に区分記載請求書等方式のまま仕入税額控除を行なっていると、意図せぬうちに未納や脱税してしまう恐れがある。
そうした事態を防ぐためにも、早めにインボイス制度への対応は済ませておくべきだ。加えて仕入先からの適格請求書の交付などについては、あらかじめ相談して消費税の負担を増やさない対策を講じることも重要と言える。直前になって対応に追われないために、今後もインボイス制度の対応理解を深めて早めの準備を進めておきたい。