固定残業代制度が違法になる場合とは?飲食店が抱える課題と対策

法令対策2023.03.03

固定残業代制度が違法になる場合とは?飲食店が抱える課題と対策

2023.03.03

固定残業代制度が違法になる場合とは?飲食店が抱える課題と対策

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企業の中には、固定残業代制度を採用していることがある。従業員ごとの残業代計算が不要になるメリットはあるものの、固定残業時間を超えた場合は超過分を支払わなければ労働基準法に違反する場合があったり、労働者側が残業代の支払条件を把握しておらず雇用後にトラブルへと発展したりする例が見られる。

固定残業代制度で違法になる状況は、どのように起こり得るだろうか。日頃の残業時間が多くなりがちな飲食店を例にとって対策を検討していこう。

目次

固定残業代とは?

固定残業代とは、毎月の残業代をあらかじめ設定している制度である。実働の残業時間が少なくても支払う残業代は変わらず、原則として同じ金額が支払われるのが特徴だ。

常に一定の金額が支給されるので、企業側では毎月のように変動する残業時間や報酬額を計算する手間が省ける。労働者側にとっても設定した残業時間以下でも一定の残業代を受け取ることができ、残業時間を超過した場合は、その分の残業代を上乗せして支払われる。

最も多い苦情・不満は「賃金に関すること(固定残業代を含む)」

ハローワークや民間職業紹介機関で最も多い苦情・不満は、「賃金に関すること(固定残業代を含む)」となっている。

出典:厚生労働省職業安定局調べ(平成27年度)

企業は人材を募集する際、募集要項や求人票に労働条件を正確に示すことが求められる。厚生労働省も固定残業代を適切に表示するよう求めており、明示すべき要件に以下3点を挙げている。

【固定残業代を採用する場合の記載事項】
(1)固定残業代を除いた基本給の金額
(2)設定した固定残業代の労働時間や金額の計算方法
(3)超過分の時間外労働、休日労働、深夜労働が発生した際に割増賃金を支払う旨

[参考]厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク(PDF)

固定残業代の計算方法

固定残業代は、通常の残業代と同じ計算方法で導き出せる。計算式は以下の通りだ。

固定残業代 = 1時間あたりの賃金 × 固定残業時間 × 割増率(25%以上)

例えば、1時間あたりの賃金が1500円、固定残業時間が40時間だった場合、1カ月の固定残業代は1500×40×1.25=75,000円となる。

時給制でない場合、以下のように1カ月の給与をもとに算出することが可能だ。

1時間あたりの賃金 = 1カ月の給与総額(月給) ÷ 1カ月の平均所定労働時間

1カ月の平均所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 1年間の所定労働日数(365-年間所定休日) ÷ 12カ月

固定残業代は、基本給とは別に算出する手当型と、基本給と合算する組込型の2種類がある。どちらも本質的には変わらないが、雇用契約書や就業規則へ記載する際には、それぞれ適した書き方も必要だ。

固定残業時間から超過した分の計算方法

あらかじめ設定した時間を超えて従業員が残業している場合には、その分の残業代も計算して支給する必要がある。計算方法は、固定残業代の式に超えてしまった実働時間を当てはめることで算出できる。

超過分の残業代 = 1時間あたりの賃金×超過した時間(実働残業時間ー固定残業時間)×割増率(25%以上)

割増率はいくらに設定すべき?

労働基準法では、固定残業代も時間外労働と同じように割増賃金を支払う必要がある。どの程度の値を設定するかは事業主次第だが、定められた割増率以上で算出しなければならない点に注意しておこう。

割増賃金の種類支払う条件割増率
時間外
(時間外手当・残業手当)
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき25%以上
時間外労働が限度時間(1カ月45時間・1年360時間)を超えたとき25%以上
時間外労働が月60時間を超えたとき50%以上※
休日
(休日手当)
法定休日(週1日)に勤務させたとき35%以上
深夜
(深夜手当)
22~5時までの間に勤務させたとき25%以上

※中小企業は2023年4月1日から適用
[参考]厚生労働省「事業者のための労務管理・安全衛生管理診断サイト

固定残業制を採用している場合でも、上記の条件のように法定休日に出勤させる、深夜労働をさせるのであればその分の割増賃金を支払わなければならない。

特に深夜労働は、時間外労働や休日労働と重なるとそれぞれの割増率を足し合わせる必要がある。例えば、時間外労働と深夜労働が重なると50%以上、休日と深夜労働が重なれば60%以上の手当になる。飲食店は夜遅くまで営業したり閉店後も残って作業したりすることもあるため、「気付かないうちに違反していた」とならないよう注意したい。

固定残業代制度で違法になる場合

固定残業代を支払っていても、従業員罰則などが課される可能性もあるため、どういうケースが違法になるのか、詳しく見ていこう。

残業時間の超過分が支払われていない

従業員が設定している固定残業時間を超えて残業していた場合、その超過分を適切に支払わなければならない。経営者は従業員の労働時間をしっかりと記録することが重要だ。特に本部と店舗が離れている場合、現場の実態に気付かないこともある。

年俸制を導入している場合でも、実際の労働時間が1週または1日の労働時間の法定労働時間を超えれば、時間外手当を支払わなければならない。未払いのままだと、労働基準法第37条違反として6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金に科される恐れがある。

[参考]
e-Gov法令検索「労働基準法
厚生労働省「労働基準法に関するQ&A

基本給が最低賃金より低い

最低賃金制度とは、企業側は国が定めた最低賃金額以上の賃金を従業員に支払わなければならないとする制度だ。この最低賃金は固定残業代を除いて計算する必要がある。このため基本給に固定残業代を組み込んで支払っている場合、最低賃金を下回っていないか気をつけなければならない。

最低賃金の対象となるのは、基本給と諸手当(皆勤・通勤・家族手当を除く)のみだ。これらの月給から1時間あたりの賃金を算出し、各都道府県の最低賃金を下回っていないか確認した上で固定残業代を設定する。

【最低賃金の計算方法】

月給(基本給+諸手当)÷1カ月の平均所定労働時間≧最低賃金

最低賃金法に違反すると、50万円以下の罰金が科されることがある。自社の地域の最低賃金は、厚生労働省のWebサイト「地域別最低賃金の全国一覧」を参照してほしい。

[参考]
厚生労働省「最低賃金制度とは
厚生労働省「最低賃金の対象となる賃金
厚生労働省「最低賃金額以上かどうかを確認する方法

就業規則や契約書に明記されてない

労働基準法では、労働者を採用する際に賃金や労働時間などの条件を明示する必要がある。その中でも、就業規則や労働契約書などの書面に記載する必要があるのは以下の通りだ。

【書面での交付が求められる明示項目】
・労働契約の期間
・就業場所や業務内容
・始業と終業時刻、休憩時間や休日、残業の有無など勤怠に関する項目
・賃金の決定や計算方法、支払いに関する事項
・退職に関する事項

[参考]厚生労働省「労働条件の明示(第15条)

固定残業代についても、これらの労働条件に該当する項目だ。書面での明記がされていない場合、30万円以下の罰金が科されることがある。

[参考]e-Gov法令検索「労働基準法 第百十七条

上限を超えて残業時間が設定されている

労働基準法で定められた法定労働時間1日8時間、週40時間を超えて働かせるには36協定を締結し、労働基準監督署への届け出が必要になる。36協定を締結していると、1カ月の残業は45時間(年間360時間)が上限となる。

固定残業代制度を設定する際にも、この法律で定められた時間を超えて働かせることは原則できない。違反した場合には、罰則として6か⽉以下の懲役、または30万円以下の罰⾦となることがある。

ただし繁忙期や新店舗オープンなどの必要な時期であれば、特別条項付きの36協定を届け出ることで45時間を超えて残業することも可能だ。その場合でも、年間720時間以内、最大で6カ月までが限度となる。ただし長時間労働による過労は従業員の健康を損なう恐れがあるため、できる限り避けるべきだろう。

[参考]厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」(PDF)

違法にならないための対策

固定残業代を採用するにしても、企業側には違法にならないよう勤怠時間の記録、労働賃金の計算などが求められる。紙の管理だと日々の手間が増えるため、勤怠管理にはITツールを活用したほうがよいだろう。

また、そもそもの原因は人手不足や業務過多、属人化した作業を続けることが多いため、作業の標準化や自動化など労働環境の整備も必要だ。たとえば店舗オペレーション管理ツールを導入することで、日々のタスク・スケジュール管理など様々な業務を整理できる。ITによるサポートで業務の時短ができれば、従業員の長時間労働の改善にも繋げられるだろう。

従業員に正当な対価で報い、働きやすい職場環境を整える

固定残業代を曖昧な知識で運用していると、法律違反になるなどのリスクがあるため、しっかりと把握した上で導入・運用しなければならない。事前に従業員への周知や書面による交付はもちろんのこと、万が一超過した際の支払いについても誠実に行うことが重要だ。

働きやすい労働環境の構築は従業員の生産性向上やモチベーションアップ、離職率の低下といったメリットも出てくる。結果的に企業の利益に繋がるため、経営者は改善に取り組んでほしい。

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