補助金・助成金とは?
補助金や助成金は国や地方自治体が事業者などを支援する返済不要の制度で、それぞれ明確な区別はない。大まかな概要は知っていても、どのような書類を用意するのか、申請方法はどうするのか、どういった事業者が対象となるかなどは案件ごとに異なる。それぞれの特徴について紹介する。
補助金
補助金は経済産業省、地方自治体が管轄し、事業者の事業の拡大や設備投資などの支援を目的としているものが多い。事業者にとって設備などにかかるコストは大きな負担となる。補助金によって資金の問題を解決できれば、スムーズに事業を拡大し、利益を増やせる可能性が広がるだろう。
ただし、補助金は予算が限られていたり、定員が設定されていたりするケースがほとんどで、必ず受けられるというものではない。例えば10社の定員が設定されているところに、50社の申請があった場合、40社は採択されないことになる。
また、補助金の多くは後払い制のため、例えば500万円の設備投資に対して、1/2の補助が受けられる制度の場合、先に自らが500万円を支払う必要があることも注意が必要だ。
助成金
助成金は厚生労働省が管轄し、目的は雇用促進、職場改善のために支給されるものが多い。例えば、新規雇用のみでなく事業存続が困難になってしまった場合や、経営難、昨今の新型コロナウイルスなどで、想定外の理由によりやむなく一時休業せざるを得なくなってしまった場合、雇用者の収入を安定させるため、といった目的でも利用できる。
助成金は対象となる活動を行っているなど、特定の条件を満たしている事業者であれば提出書類に不備等がない場合、ほぼ確実に受給できるものが多い。補助金と比べて助成金は申請期間も長く、随時募集されているものも少なくない。
補助金・助成金の申請から受給までの流れ
前述の通り補助金と助成金には管轄や目的などの違いはあるものの、申請から受給までの流れに大きな違いはない。大まかな流れは以下の通りだ。
1 | 申請 | 補助金、助成金にはそれぞれ支給要件がある。その要件に合ったものを選び、必要書類を提出して申請を行う。活動内容、事業拡大や設備投資などの実施計画が必要となる場合もある。 |
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2 | 採択 | 補助金の場合、予算や定員が決まっているため、採択を受ける必要がある。ここで採択されなければ補助金を受けることはできない。助成金の場合、要件を満たしていれば、ほぼ確実に受けられるめ、採択を持つ必要はない。 |
3 | 計画の実施・ 支給申請 | 申請した計画を実施し、支給申請を行う。 |
4 | 受給 | 計画の実施が申請通りに要件を満たしていれば助成金・補助金の受給が受けられる。受給できる日は補助金や助成金によって異なるため、事前に確認しておく必要がある。特に助成金の場合は、先事業拡大や設備投資のために支出しなければならないため、資金繰りが厳しい場合、いつ受給できるのかを明確に把握しておくことが重要だ。 |
2023年5月現在で飲食店が申請できる補助金・助成金
ここからは実際に2023年5月現在、飲食店が申請することができる補助金や助成金をピックアップして詳しく解説する。
IT導入補助金
中小企業や小規模事業者の、ITツール導入を支援するための補助金。通常枠、セキュリティ対策推進枠、デジタル化基盤導入枠など複数の枠がある。飲食店においては、小規模な店舗でも導入しやすいセルフオーダーシステムや、タブレット端末など、スタッフの勤務管理、商品の受発注まで、さまざまなITツールの活用は必須となりつつある。その負担を抑えることができる補助金だ。
[制度概要]
枠・類型 | 通常枠 | セキュリティ対策推進枠 | デジタル化基盤導入枠 | ||
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A類型 | B類型 | デジタル化基盤導入類型 | |||
補助対象 経費区分 | ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 | サービス利用料(最大2年分) | ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 | ||
補助率 | 1/2以内 | 1/2以内 | 3/4以内 | 2/3以内 | |
上限額・ 下限額 | 5万円~ 150万円未満 | 150万円~ 450万円以下 | 5万円~ 100万円 | 下限なし~ 50万円以下 | 50万円超~ 350万円 |
受付期間 | 2023年3月20日~終了時期未定 | ||||
申請方法 | 一般社団法人サービスデザイン推進協議会「IT導入補助金」 |
IT導入補助金制度を活用することで、DXや業務効率化に必要なツールにかかるコスト負担を大きく軽減できる。特に今後は電子帳簿保存法や2023年10月開始のインボイス制度など、ITツールでの対応が望まれている。
例えばIT導入補助金制度の対象となるインフォマートサービスの中には、インボイス制度対応の請求書システム『BtoBプラットフォーム 請求書』、食品卸の受発注・販促支援システム『TANOMU』などがある。ITツール導入を検討している中小企業や小規模事業者の経営者は検討してよいだろう。
雇用調整助成金
国による助成金制度で、事業主が雇用している従業員に対して支払う休業手当などの一部を助成する制度だ。2023年までで新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例措置は終了し、通常制度へと移行することが決まっている。
申請条件は、経済上の理由で直近3か月の平均売上高(または生産量)が前年同時期と比較して10%以上減少しており、かつ、従業員に平均賃金の6割以上を休業手当として支給していることとなる。
[制度概要]
補助額 | 1人1日当たり最大8,355円 教育訓練を実施したときの加算額:1人1日当たり1,200円 |
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助成率 | 中小企業:2/3 中小企業以外:1/2 |
受付期間 | 随時 |
申請方法 | 厚生労働省「雇用調整助成金」 |
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者を対象として、新たな販路開拓、生産性向上といった取組を支援するための補助金だ。通常枠のみでなく、賃金の引き上げや創業枠もあるため、これは飲食店を開業する際にも利用できる。
[制度概要]
類型 | 通常枠 | 賃金引上げ枠 | 卒業枠 | 後継者支援枠 | 創業枠 |
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補助率 | 2/3 | 2/3 (赤字事業者は3/4) | 2/3 | ||
補助上限 | 50万円 | 200万円 | |||
インボイス特例 | 50万円※ ※インボイス特例の要件を満たす場合は、上記補助上限額に50万円を上乗せ | ||||
受付期間 | 13回:2023年9月7日 | ||||
申請方法 | 全国商工会連合会「小規模事業者持続化補助金」 |
事業再構築補助金
中小企業がコロナ禍により売り上げが減少したことによる、事業再構築を支援するための制度だ。飲食店も対象となっており、通常枠、大規模賃金引上枠、回復再生応援枠、最低賃金枠、グリーン成長枠、緊急対策枠などさまざまな枠が用意されている。
後述の産業雇用安定助成金の受給要件として、この事業再構築補助金の交付が決定しているという点がある。そのため、併せて申請することを検討してみるのもいいだろう。
[制度概要]
補助額 | 最大1億5000万円 |
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助成率 | 最大3/4 |
受付期間 | ~2023年6月30日 |
申請方法 | 事業再構築補助金事務局「事業再構築補助金」 |
産業雇用安定助成金
新型コロナウイルスの影響によって、事業の規模などを一時的に縮小しなければならなくなってしまった際に、出向などによって雇用を維持するための助成金だ。事業の一時的な縮小を余儀なくされた事業主と、該当の雇用者を受け入れる事業主が対象となる。
申請時に提出する計画届などの内容は時期によって異なるため、その都度確認が必要だ。
[制度概要]
出向初期経費助成 | 助成額:出向元・出向先各10万円/1人あたり(定額) 加算額:出向元・出向先各5万円/1人あたり(定額) |
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出向運営経費助成 | 中小企業:最大9/10 中小企業以外:最大3/4 上限:12,000円/1日当たり |
出向復帰後訓練助成 | 経費助成:実費(上限30万) 賃金助成:1人1時間あたり900円(上限600時間) |
受付期間 | 随時 |
申請方法 | 厚生労働省「産業雇用安定助成金」 |
補助金・助成金で飲食店経営をより安定したものに
補助金や助成金を理解し上手に活用することで、資金繰りに関する悩みを解決できる可能性がある。それぞれの案件は補助額や受付期間等が異なるため、しっかりと確認し、活用していただきたい。