IT導入補助金の概要
IT導入補助金制度は、DXを推進する事業者には効果的だ。補助される事業にはいくつかの類型があり金額も異なるが、対象となるITツールを導入した際に費用の一部が補助される。
対象となる事業者
IT導入補助金の対象となるのは、国が定めている中小企業の定義に含まれる企業で、資本金または従業員数で判断される。
参照:ライトアップ資料(2022年7月)
「サービス業なら資本金5,000万円以下または従業員数100人以下の、どちらかを満たしていれば問題ありません。年商などには特に制限がないため、中小企業が幅広く活用できる制度です」(ライトアップ加藤氏、以下同)
申請の流れ
IT導入補助金は、一般的な補助金とは異なり、ITツールベンダーが申請を行う。事業者がツール導入に関する補助金を申請する際は、補助金受給までをツールベンダーと連携しながら申請することを推奨する。
参照:ライトアップ資料(2022年7月)
「補助金申請はITツールの選定からスタートしますが、採択前に購入や契約を行ってしまうと、補助の対象外となってしまうため、注意が必要です。まずは『このツールを買おうと考えています』という申請を行い、採択が決まってからツールを購入する必要があります」
申請枠の種類
IT導入補助金の申請は、基本的に年度単位で少しずつルールが変わっている。2022年度は大きく分けて2つのコースがあり、デジタル化基盤導入類型は2年分、通常枠は1年分の月額費用が補助される。補助率や上限額は下記表のとおりだ。
参照:ライトアップ資料(2022年7月)
●機能数
ITツールに必要な機能の数。下記のコードのうちひとつを満たせば1機能としてカウントされる。複数のITツールを導入した場合、合計機能数としてカウントできる。
<コードと機能数>
コード | 内容 |
---|---|
共P-01 | 顧客対応・販売支援 |
共P-02 | 決済・債権債務・資金回収管理 |
共P-03 | 供給・在庫・物流 |
共P-04 | 会計・財務・経営 |
共P-05 | 総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス |
各業種P-06 | 業種雇用プロセス |
汎用P-07 | 汎用・自動化・分析 |
●賃上げ
従業員の賃上げをすると申請時に加点される制度で、通常枠に設定されている。
●導入関連費
初期設定代行費用、マニュアル作成費用、操作研修費用、運営保守費用、運用サポート費用など。
●ハード
PC、タブレット、プリンター、スキャナ、複合機、POSレジ、券売機など。デジタル化基盤導入類型のみ対象。
「導入関連費、ハードは単独申請できず、ITツールとのセットで申請する必要があります。デジタル化基盤導入類型と通常枠は併用して申請することもできます。基幹システムと会計システム、基幹システムと受発注システムなど、基幹システムのほかにもうひとつの入れ替えも検討している場合は、2種類とも申請すると補助金をフル活用できます」
採択されやすくなる審査項目とポイント
IT導入補助金を申請するにあたって重要なのは、「事業面審査項目」を網羅し、どれだけ加点を獲得できるかにあると加藤氏は語る。
参照:ライトアップ資料(2022年7月)
「申請にあたって、ITツールを導入することでどれだけ自社にとって利益があるのかを示す『シナリオ』を作成します。こういった部分で課題を解決できます、利益がありますという相関性を説明したり、DXによる内部プロセスの高度化を実現したりすることを示す資料になります。
また、クラウド製品の選定やインボイス制度への対応、賃上げなどのプラスアルファがあると、『政策面審査』で加点対象になる可能性があります。これらの要素を組み合わせていくことで、合格の可能性が高まります」
不採択になる理由
採択されやすくなるポイントがある反面、書類不備や必要条件の不足などがあると、採択に落選しやすいともいう。
<必要書類>
■取り組み当初 | ■採択後 |
---|---|
・履歴事項証明書(直近3ヶ月以内取得) ・法人税の納税証明書(その1またはその2) ・SECURITY ACTION自己宣言ID ※個人事業主は身分証や確定申告書、納税証明書等が必要 | ・発注・支払い等の証憑書類 ・その他必要な書類 |
<考えられる不採択理由例>
1. 書類不備(履歴事項全部証明書、納税証明書、身分証明書等) 2. 必須要件を満たしていない(機能数等) 3. 非現実的な申請内容(労働生産性等) |
「特に多いのは申請する際の書類のミスです。履歴事項全部証明書、納税証明書、身分証明書などの書類不備や、定められた要件を満たしていない申請などは採択されない可能性が高いです。履歴事項全部証明書は直近3か月以内のもの、法人税納税証明書は「その1」または「その2」が必要になります。労働生産性などの申請内容が非現実的な数値だと落ちてしまう可能性が高まります。地に足をつけた、実現可能な内容で申請することが重要です。
この他にも、電子申請には「GビズID(無料)」が必要です。デジタル庁ホームページから取得できるので、事前準備しておくことをおすすめします。そのほか、『事業者自らが情報セキュリティ対策に取り組む』と宣言する、「SECURITY ACTION自己宣言ID」も必須項目となります」
補助金の入金は比較的早い
採択が決まり、購入金額を証明する書類を提示すると、事前に申請したIT導入補助金が入金される。他の補助金のサイクルより早い点もIT導入補助金の特徴だという。
「ものづくり補助金など、他の補助金は、入金まで1年後~などのサイクルが多く、支払った金額が戻ってくるまでに時間がかかります。一方で、IT補助金は毎月締切りが来て翌月に採択結果が発表されるため、申請は期間内であればほぼいつでも可能となります。採択が決まってから4か月程度で入金されるのは、企業にとって嬉しいポイントでしょう」
自社に必要なシステムを検討し、ITツールベンダーに相談しよう
IT導入補助金制度を活用することで、DXや業務効率化に必要なツールにかかるコスト負担を大きく軽減できる。特に今後は電子帳簿保存法や2023年10月開始のインボイス制度など、ITツールでの対応が望まれている。
例えばIT導入補助金制度の対象となるインフォマートサービスの中には、インボイス制度対応の請求書システム『BtoBプラットフォーム 請求書』、飲食店と食品卸の受発注システム『TANOMU』などがある。現在、一般的にIT導入補助金制度の採択率も比較的高いため、ITツール導入を検討している中小企業や小規模事業者の経営者は、ぜひ活用を検討してみてはいかがだろうか。