最低賃金の引き上げ、10月から都道府県ごとに開始。業務改善助成金の拡充と活用事例

業界ニュース2022.09.21

最低賃金の引き上げ、10月から都道府県ごとに開始。業務改善助成金の拡充と活用事例

2022.09.21

最低賃金の引き上げ、10月から都道府県ごとに開始。業務改善助成金の拡充と活用事例

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企業が従業員に支払わなければいけない最低賃金について、厚生労働省は全国加重平均額を2022年10月から961円に改定すると発表した。改定後の最低賃金の最高額は東京都で1,072円、次いで神奈川県が1,071円となり、また大阪府も1,023円と1,000円を超えた。一方で最低額は青森県、沖縄県などの東北、四国、九州地方を中心とした10県で853円となった。

また、厚生労働省は今回の最低賃金の引き上げに向けて、特に中小企業の経営環境を整える必要があるとし、生産性向上を図る設備投資などに対して支給する「業務改善助成金」を拡充した。最低賃金上昇の背景と業務改善助成金の活用事例も踏まえて解説していく。

目次

全国加重平均額は21年間で45%増額

全国加重平均額(全国の都道府県ごとの労働者数をA~Dのランク付けして割り出した平均額)の変動をみてみると、2002年度の663円から2022年度には961円となり、21年間で45%ほど増えている。

参考:厚生労働省「平成14年度から令和3年度までの地域別最低賃金改定状況
参考:厚労省「地域別最低賃金の全国一覧

地域別最低賃金

「地域別最低賃金」は、都道府県ごとに設定される最低賃金で、その地域における以下の3つの点を考慮して金額が決定される。

1.その地域における労働者の生計費
2.その地域における賃金
3.通常の事業の賃金支払能力

厚労省が最低賃金に関する重要事項を審議する「中央最低賃金審議会」では、上記3つの要素に加え、雇用者数、求人倍率、失業率、労働時間などの雇用指標や、経済状況を考慮して引き上げ額の目安を設定する。その金額をもとに各地方で開く「各地方最低賃金審議会」で、地域の経済などを踏まえた改定額が試算される。2022年度の地域別最低賃金時間額は下記のとおりだ。

2022年度の地域別最低賃金時間額

都道府県最低賃金時間額(円)2022年度発効日
2021年度2022年度
北海道88992010月2日
青森県82285310月5日
岩手県82185410月20日
宮城県85388310月1日
秋田県82285310月1日
山形県82285410月6日
福島県82885810月6日
茨城県87991110月1日
栃木県88291310月1日
群馬県86589510月8日
埼玉県95698710月1日
千葉県95398410月1日
東京都1041107210月1日
神奈川県1040107110月1日
新潟県85989010月1日
富山県87790810月1日
石川県86189110月8日
福井県85888810月2日
山梨県86689810月20日
長野県87790810月1日
岐阜県88091010月1日
静岡県91394410月5日
愛知県95598610月1日
三重県90293310月1日
滋賀県89692710月6日
京都府93796810月9日
大阪府992102310月1日
兵庫県92896010月1日
奈良県86689610月1日
和歌山県85988910月1日
鳥取県82185410月6日
島根県82485710月5日
岡山県86289210月1日
広島県89993010月1日
山口県85788810月13日
徳島県82485510月6日
香川県84887810月1日
愛媛県82185310月5日
高知県82085310月9日
福岡県87090010月8日
佐賀県82185310月2日
長崎県82185310月8日
熊本県82185310月1日
大分県82285410月5日
宮崎県82185310月6日
鹿児島県82185310月6日
沖縄県82085310月6日
全国加重平均額930961

厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧

 

特定最低賃金

「特定最低賃金」とは、職業別に設定される最低賃金で、食品製造や木材製造、金属製造などの製造業と、出版系、自動車小売業、自動車輸送業などの非製造系に分かれている。

参考:厚生労働省「最低賃金に関する報告書」(PDF)
参考:厚生労働省「最低賃金時間額の全国加重平均額 令和3年3月末現在」(PDF)

業務改善助成金の対象者

2022年9月、厚生労働省は中小企業や小規模事業者の生産性向上の支援の一環として、業務改善のためのコンサルティングや設備投資、人材育成のための研修費を補助する「業務改善助成金」を拡充した。

各事業所で働く時給額のうち最も低い額(事業場内最低賃金)と地域別最低賃金の差額が30円以内、事業場規模が100人以下の中小企業に支給する。事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額や、賃金を引き上げる従業員数によって助成金額が異なる。

賃金を引き上げる
従業員数
助成の上限額
引き上げ額
30円以上
引き上げ額
45円以上
引上げ額
60円以上
引上げ額
90円以上
1人最大30万円最大45万円最大60万円最大90万円
2~3人最大50万円最大70万円最大90万円最大150万円
4~6人最大70万円最大100万円最大150万円最大270万円
7人以上最大100万円最大150万円最大230万円最大450万円
10人以上最大120万円最大180万円最大300万円最大600万円

参考:厚生労働省「生産性向上のヒント集」(PDF) 

 

飲食業界における業務改善助成金の活用事例

最後に、飲食業界における業務改善助成金の活用事例をいくつか見ていこう。

<従業員数5人の飲食業の事例>

課題店内飲食が減少していたため、コンサルティングと設備投資により、販売増と業務効率化を検討した。
実施デリバリーサイトへの掲載内容についてコンサルティングを受け、受注システム、配達用3輪バイク、二層フライヤーを導入した。
結果デリバリーの受注システム導入で電話対応がなくなり注文管理の正確性が向上 3輪バイクで1日の配達時間が1.5時間削減 二層フライヤーで6件の注文を1度に調理 従業員1人の時給を100円引き上げられた。

参考:厚生労働省「生産性向上のヒント集」(PDF)一部抜粋、以下同様

 

<従業員数30人の宿泊業の事例>

課題手作業でのおにぎり作り、食器洗浄、炊飯器の設定などに時間を要していた。注文オーダーも、客席に出向いたあと厨房に戻って内容を伝達していたため、効率が悪かった。
実施おにぎり製造機、食器洗浄器、自動炊飯器、QRコードでのオーダーシステムを導入した。
結果おにぎり製造の機械化で3人から1人で済み、ほかの業務に人員配置できるようになった。 自動炊飯器で設定が簡略化し炊飯時間も短縮 QRコードオーダーシステムの導入によりミスがなくなり、オーダー業務が時間短縮できた。 10人の従業員の時間給を平均149円引き上げられた。

 

<従業員数23人の卸売業の事例>

課題在庫管理システムが旧式で最新OSに非対応だった。また在庫管理を手作業で行っていて、毎週の棚卸しに時間を要していた。
実施在庫数を常時パソコンで管理できる在庫管理システムを導入した。
結果システムの入れ替えで生産性が上がり、5人の従業員の時間給を30円アップした。

 

<従業員19人の食品製造業の事例>

課題餅の製造や運搬を手作業で行っており、製造に時間がかかっていた。 外国人従業員に対して身振り手振りで作業を教えていたため教育効果が低かった。
実施助成金を活用して餅つき機やベルトコンベア、視聴覚機器、翻訳機を購入した。また、機械装置や照明、原材料、人的配置の見直しも行った。
結果商品製造時間が15%削減され、商品ロスがほぼ0%になった。
4人必要だった製造作業が2人で対応できるようになった。
視聴覚機や翻訳機で写真を使った業務説明が可能になり、効果的に教育できるようになった。
19人の従業員の時間給を平均65円引き上げた。

 

<清酒製造業の事例>

課題商品に貼るラベルを手作業で作成していたため、時間がかかっていた。
実施ラベル発行のプリンターを導入し、製造年月日などの記載を機械化。
結果ラベルの作成時間や、記載ミスが削減され、製造や顧客管理などの業務に集中できるようになった。

業務効率化をして最低賃金引上げに対応しよう

近年の原価高騰の煽りや最低賃金の引き上げによって経営が厳しくなる事業者も少なくないだろう。
そのような時は、業務改善助成金を活用してコンサルティングを受けたり、システムや製造機器を導入したりして、業務改善を検討するのもひとつの手だ。今一度自社の課題を見直し生産性を上げ、賃金の引上げをはじめ健全な企業経営につなげていきたい。

参考:厚生労働省「令和4年度 地域別最低賃金 答申状況」(PDF)

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