全国加重平均額は21年間で45%増額
全国加重平均額(全国の都道府県ごとの労働者数をA~Dのランク付けして割り出した平均額)の変動をみてみると、2002年度の663円から2022年度には961円となり、21年間で45%ほど増えている。
参考:厚生労働省「平成14年度から令和3年度までの地域別最低賃金改定状況」
参考:厚労省「地域別最低賃金の全国一覧」
地域別最低賃金
「地域別最低賃金」は、都道府県ごとに設定される最低賃金で、その地域における以下の3つの点を考慮して金額が決定される。
1.その地域における労働者の生計費
2.その地域における賃金
3.通常の事業の賃金支払能力
厚労省が最低賃金に関する重要事項を審議する「中央最低賃金審議会」では、上記3つの要素に加え、雇用者数、求人倍率、失業率、労働時間などの雇用指標や、経済状況を考慮して引き上げ額の目安を設定する。その金額をもとに各地方で開く「各地方最低賃金審議会」で、地域の経済などを踏まえた改定額が試算される。2022年度の地域別最低賃金時間額は下記のとおりだ。
2022年度の地域別最低賃金時間額
都道府県 | 最低賃金時間額(円) | 2022年度発効日 | |
---|---|---|---|
2021年度 | 2022年度 | ||
北海道 | 889 | 920 | 10月2日 |
青森県 | 822 | 853 | 10月5日 |
岩手県 | 821 | 854 | 10月20日 |
宮城県 | 853 | 883 | 10月1日 |
秋田県 | 822 | 853 | 10月1日 |
山形県 | 822 | 854 | 10月6日 |
福島県 | 828 | 858 | 10月6日 |
茨城県 | 879 | 911 | 10月1日 |
栃木県 | 882 | 913 | 10月1日 |
群馬県 | 865 | 895 | 10月8日 |
埼玉県 | 956 | 987 | 10月1日 |
千葉県 | 953 | 984 | 10月1日 |
東京都 | 1041 | 1072 | 10月1日 |
神奈川県 | 1040 | 1071 | 10月1日 |
新潟県 | 859 | 890 | 10月1日 |
富山県 | 877 | 908 | 10月1日 |
石川県 | 861 | 891 | 10月8日 |
福井県 | 858 | 888 | 10月2日 |
山梨県 | 866 | 898 | 10月20日 |
長野県 | 877 | 908 | 10月1日 |
岐阜県 | 880 | 910 | 10月1日 |
静岡県 | 913 | 944 | 10月5日 |
愛知県 | 955 | 986 | 10月1日 |
三重県 | 902 | 933 | 10月1日 |
滋賀県 | 896 | 927 | 10月6日 |
京都府 | 937 | 968 | 10月9日 |
大阪府 | 992 | 1023 | 10月1日 |
兵庫県 | 928 | 960 | 10月1日 |
奈良県 | 866 | 896 | 10月1日 |
和歌山県 | 859 | 889 | 10月1日 |
鳥取県 | 821 | 854 | 10月6日 |
島根県 | 824 | 857 | 10月5日 |
岡山県 | 862 | 892 | 10月1日 |
広島県 | 899 | 930 | 10月1日 |
山口県 | 857 | 888 | 10月13日 |
徳島県 | 824 | 855 | 10月6日 |
香川県 | 848 | 878 | 10月1日 |
愛媛県 | 821 | 853 | 10月5日 |
高知県 | 820 | 853 | 10月9日 |
福岡県 | 870 | 900 | 10月8日 |
佐賀県 | 821 | 853 | 10月2日 |
長崎県 | 821 | 853 | 10月8日 |
熊本県 | 821 | 853 | 10月1日 |
大分県 | 822 | 854 | 10月5日 |
宮崎県 | 821 | 853 | 10月6日 |
鹿児島県 | 821 | 853 | 10月6日 |
沖縄県 | 820 | 853 | 10月6日 |
全国加重平均額 | 930 | 961 | - |
厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」
特定最低賃金
「特定最低賃金」とは、職業別に設定される最低賃金で、食品製造や木材製造、金属製造などの製造業と、出版系、自動車小売業、自動車輸送業などの非製造系に分かれている。
参考:厚生労働省「最低賃金に関する報告書」(PDF)
参考:厚生労働省「最低賃金時間額の全国加重平均額 令和3年3月末現在」(PDF)
業務改善助成金の対象者
2022年9月、厚生労働省は中小企業や小規模事業者の生産性向上の支援の一環として、業務改善のためのコンサルティングや設備投資、人材育成のための研修費を補助する「業務改善助成金」を拡充した。
各事業所で働く時給額のうち最も低い額(事業場内最低賃金)と地域別最低賃金の差額が30円以内、事業場規模が100人以下の中小企業に支給する。事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額や、賃金を引き上げる従業員数によって助成金額が異なる。
賃金を引き上げる 従業員数 | 助成の上限額 | |||
---|---|---|---|---|
引き上げ額 30円以上 | 引き上げ額 45円以上 | 引上げ額 60円以上 | 引上げ額 90円以上 | |
1人 | 最大30万円 | 最大45万円 | 最大60万円 | 最大90万円 |
2~3人 | 最大50万円 | 最大70万円 | 最大90万円 | 最大150万円 |
4~6人 | 最大70万円 | 最大100万円 | 最大150万円 | 最大270万円 |
7人以上 | 最大100万円 | 最大150万円 | 最大230万円 | 最大450万円 |
10人以上 | 最大120万円 | 最大180万円 | 最大300万円 | 最大600万円 |
参考:厚生労働省「生産性向上のヒント集」(PDF)
飲食業界における業務改善助成金の活用事例
最後に、飲食業界における業務改善助成金の活用事例をいくつか見ていこう。
<従業員数5人の飲食業の事例>
課題 | 店内飲食が減少していたため、コンサルティングと設備投資により、販売増と業務効率化を検討した。 |
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実施 | デリバリーサイトへの掲載内容についてコンサルティングを受け、受注システム、配達用3輪バイク、二層フライヤーを導入した。 |
結果 | デリバリーの受注システム導入で電話対応がなくなり注文管理の正確性が向上 3輪バイクで1日の配達時間が1.5時間削減 二層フライヤーで6件の注文を1度に調理 従業員1人の時給を100円引き上げられた。 |
参考:厚生労働省「生産性向上のヒント集」(PDF)一部抜粋、以下同様
<従業員数30人の宿泊業の事例>
課題 | 手作業でのおにぎり作り、食器洗浄、炊飯器の設定などに時間を要していた。注文オーダーも、客席に出向いたあと厨房に戻って内容を伝達していたため、効率が悪かった。 |
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実施 | おにぎり製造機、食器洗浄器、自動炊飯器、QRコードでのオーダーシステムを導入した。 |
結果 | おにぎり製造の機械化で3人から1人で済み、ほかの業務に人員配置できるようになった。 自動炊飯器で設定が簡略化し炊飯時間も短縮 QRコードオーダーシステムの導入によりミスがなくなり、オーダー業務が時間短縮できた。 10人の従業員の時間給を平均149円引き上げられた。 |
<従業員数23人の卸売業の事例>
課題 | 在庫管理システムが旧式で最新OSに非対応だった。また在庫管理を手作業で行っていて、毎週の棚卸しに時間を要していた。 |
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実施 | 在庫数を常時パソコンで管理できる在庫管理システムを導入した。 |
結果 | システムの入れ替えで生産性が上がり、5人の従業員の時間給を30円アップした。 |
<従業員19人の食品製造業の事例>
課題 | 餅の製造や運搬を手作業で行っており、製造に時間がかかっていた。 外国人従業員に対して身振り手振りで作業を教えていたため教育効果が低かった。 |
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実施 | 助成金を活用して餅つき機やベルトコンベア、視聴覚機器、翻訳機を購入した。また、機械装置や照明、原材料、人的配置の見直しも行った。 |
結果 | 商品製造時間が15%削減され、商品ロスがほぼ0%になった。 4人必要だった製造作業が2人で対応できるようになった。 視聴覚機や翻訳機で写真を使った業務説明が可能になり、効果的に教育できるようになった。 19人の従業員の時間給を平均65円引き上げた。 |
<清酒製造業の事例>
課題 | 商品に貼るラベルを手作業で作成していたため、時間がかかっていた。 |
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実施 | ラベル発行のプリンターを導入し、製造年月日などの記載を機械化。 |
結果 | ラベルの作成時間や、記載ミスが削減され、製造や顧客管理などの業務に集中できるようになった。 |
業務効率化をして最低賃金引上げに対応しよう
近年の原価高騰の煽りや最低賃金の引き上げによって経営が厳しくなる事業者も少なくないだろう。
そのような時は、業務改善助成金を活用してコンサルティングを受けたり、システムや製造機器を導入したりして、業務改善を検討するのもひとつの手だ。今一度自社の課題を見直し生産性を上げ、賃金の引上げをはじめ健全な企業経営につなげていきたい。
参考:厚生労働省「令和4年度 地域別最低賃金 答申状況」(PDF)