「新業態の開発・出店はお金がかかるため、企業としてある程度体力が必要です。社会全体の流れとして、2008年にはリーマンショック、2011年には東日本大震災と、先行きが見えなかった期間が続きました。ここを耐え抜いた企業が、景気が回復してきて業態開発を行える余裕がでてきたタイミングが2015年~2017年だったのだと思われます」
一般社団法人日本フードサービス協会が発表している外食産業市場規模の推移を見ても、1997年のピーク以降長く縮小傾向にあった市場規模が、2012年から増加に転じ、2015年に25兆を超えて以降は、堅牢な回復傾向が続いている。
業態別にみると、2年間を通して多いのは、ベーカリーカフェとサラダ専門店だ。年ごとだと、2016年はパスタ専門店、2017年はラーメン店が目立つ。
「まず、麺類は原価が安いという特徴があります。サラダ専門店は近年のトレンドで、「クリスプ・サラダワークス」が人気を呼びました。外食産業の特性として、ひとつのお店が流行るとそのお店と似た業態が増える傾向があります。料理には著作権が存在しないので、初期投資さえできればいわばコピーペースト業態で参入が容易なのです。しかし、うわべだけを真似しても長続きはしません。大事なのは自社の強みが何であるか見極めることです」
たとえば、セルフサービス業態が流行っているからといって、フルサービスで成長してきた企業が安易にセルフサービスの業態を出店したり、またその逆であっても強みは生かせないという。
「うまくいっている例に、セルフサービスの『ドトールコーヒー』を主力とするドトール・日レスホールディングスが、2011年から展開している『星乃屋珈琲店(国内220店舗)』があります。このモデルはドトールの持つコーヒーの強みと、日レスのファミレス事業の強みを重ねて、コメダ珈琲店ブームから始まる大型店舗・フルサービス型の喫茶店のフォーマットが踏襲できているといえます。
また、ワタミの『ミライザカ(108店舗)』、『三代目鳥メロ(28店舗)』は、若い世代や女性でも入りやすいネオ居酒屋のトレンドを取り入れました。既存のワタミを改装するため、店舗数を増やすのが早いという強みで近年、一歩抜きん出ています」
その他に、新規の商業施設のオープンなどにあわせて、ここだけの業態をつくってほしいという商業施設側からの要望で1店舗のみの出店をする場合もある。
「なんでも食べられる」から専門業態化、細分化へ
飲食店の新業態開発は、古くから行われてきた。そもそも、飲食店の新業態はどのような歴史を歩んできたのだろうか。