人口減少という現実とウェルネスの市場性
青森市では2050年までに人口が40%減少するという予測がありますが、多くの経営者が抱きがちな『いつか何とかなる』という願望は戦略ではありません。確かな戦略を駆使して事業価値を高める必要があります。
そこで鍵となるのが『ウェルネス』という要素です。グローバル・ウェルネス・インスティテュートの調査によれば、世界のウェルネス市場は約807兆円に上る巨大な成長分野となっています。マズローの自己実現理論に照らせば、ウェルネスとは単なる病気予防を超え、自己実現や尊厳といった高次の欲求を満たすための一連のアクションを指します。
日本が得意としてきた従来のラグジュアリーサービスは、今や心身の充足を求めるウェルネスへとシフトしています。この変化を経営戦略に組み込むことで、顧客の支払意欲を高め、同時に従業員の採用力を強化することが可能になります。
蔦温泉が証明した高付加価値化の論理
2020年、新型コロナの影響で観光客が途絶えた際、八甲田山の麓にある蔦温泉も苦境に立たされました。しかし、そこで私たちが打ち出したのは、地域に根差した本質的な価値の再定義でした。世界中の富裕層が求めているのは、その土地固有の温泉や文化、そして新鮮な食材を用いたウェルネス体験であることに着目したのです。
具体的な施策として、高圧酸素ルームを備えた最高級の離れを新設しました。疲労回復を促すウェルネス体験を前面に押し出した結果、それまで1泊3~4万円程度だった宿泊単価を、1泊10~12万円へと引き上げることに成功しました。こうした高価格帯ながら、稼働率は30%をしっかりと確保し、高い付加価値を市場に認めさせています。
これは飲食業界にとっても大きな示唆となります。単に空腹を満たす場ではなく、その食事によって顧客がどのような健康状態や精神的充足を得られるか。そのストーリーを付加することで、不毛な価格競争から脱却できるはずです。









