労働力をコストではなく価値を生み出す資産と捉える
事業会社にとって、働く人は材料や経費ではなく、感情労働によって顧客体験を生み出す最も価値ある資産です。労働力を機能面だけで見てコストだと考えてしまうようなお店に、今の時代人は集まりません。チェーンストアビジネスにおける人材は、これから先AI社会になったとしても、リアルな感情労働によって体験を生み出すことができる最も価値ある存在です。お店で働く人を自社ブランドのファンにすることができれば、お客様の体験は向上し、人手不足の悩みも消えていくことになります。
お金よりも人を重視する求職者の本音
では、働く人は一体どんなことを考えて仕事先を選んでいるのでしょうか。最近の求職者に関する調査を見ると、彼らの価値観が浮き彫りになります。アルバイト先を探すにあたって、時給よりも優先されるのは損をしたくないという思いや人間関係の当たり外れです。評価が曖昧な環境や特定のスタッフに負担が偏る職場からはすぐに人が離れていきます。退職理由の多くも会社への不満ではなく、所属する店舗の人間関係や店長との相性が合わないことにあると言えるでしょう。育った時代によって優先する基準は変わりますが、お金よりも人という根本は決して変わりません。経営陣が報告書を鵜呑みにせず、自ら現場に赴いて働き手の価値観や育った背景までを深く理解する姿勢が不可欠となります。
給与以外の情緒的価値を提供する
顧客満足度を高めるためには安さや早さといった機能的価値だけでなく、接客やデザインといった情緒的価値の提供が必要です。これは働き手に対する価値提供にもそのまま当てはまる法則と言えます。労働の対価である給与の高さだけに依存した採用は、結果的にコスト負担を増大させるだけで長続きしません。
働き手にとっての付加価値とは、給与に加えて感動体験やスキル習得といったプラスの価値から、人間関係の摩擦などの嫌な体験を差し引いたものです。この満足度がマイナスになれば離職を招き、退職後に自社ブランドのファンになってくれることもないでしょう。価値に含まれるものの中で最も重要な感動体験とは、お客様からの感謝や仲間からの称賛、必要とされているという自信、自己肯定感を高める成長体験の総量です。経営トップが現場の声を聞き、いかに精神的な報酬を仕組みとして提供できるかが今後の鍵を握っています。










