人材確保と育成の実践例
AIやITを活用している具体的な例を紹介します。茨城県の大同青果は、社内データポータルを整え、営業が1週間の休みを取りやすいよう、引き継ぎ用のマニュアルを用意しています。マニュアルづくりには若手が関わり、ベテランのノウハウをAIで整理して文章化しました。こうした仕組みにより、突発的な欠員が出ても備えられる体制になりました。
長崎出島青果は、AIのチャットボットで一次面接を実施しています。これは面接官の主観を抑え、能力が高くても相性だけを理由に落とす事態を避けるためでもあります。
また、産地との連動では、小規模産地の農家の出荷予定を事前に把握できるツールが役立っています。これにより、営業員は当日判断を強いられたり、夕方の持ち込みに再対応したりする負担が減り、出荷量の事前把握・集計が可能となりました。市況見通しを農家へ共有して出荷調整に生かせるようになっています。ベテランの一部は否定的でしたが、実際にはスマホを使いこなす農家も多く、評価されています。そのため、インフォマートが提供する受発注システム『TANOMU』のようなシステムは、誤発注や間違いによる臨時配送を抑えられ、広がってきています。
業務効率化と外部リソースの活用
ITやAIは求人者に最も刺さる分野であり、働き方の見直しにも寄与します。余分な作業や待機時間を減らし、無駄な業務をなくすことで少人数でも回る運営体制を整えれば、人口減少が進む時代に対応できます。
業務用納品の強化も重要です。高齢者と単身世帯が増えても、外食と中食の需要は落ちない「手堅いマーケット」です。独立系飲食店への納入は、今後は体力のある卸売業者や大手納入業者へ依頼が増えていくと推測されます。ただし、アナログなやり方では手間暇がかかり、通常流通の品目担当者に兼務させると長時間労働を招くため、専任チームの設置が望ましいでしょう。
また、すべてを社内で抱え込まず、外部の力を取り入れる方法もあります。アナログ的な作業や、無駄な業務・間違いを引き起こしやすい業務については、システムツールの導入業者やコンピューターメーカーと組むなど、外部の力を借りた方がいいでしょう。ある仲卸では、経理担当者の退職が相次いだため、リクルートグループの経理代行の外注へ切り替えました。その結果、現在は社内1人で運用し、将来的には他社の経理を受託する構想まで描いています。
業界の未来に向けて
今後、自社ですべてを完結させようとする発想や、従来の方法を続けるだけでは、人口減少と需要変化に対応できません。同じことの繰り返しでは働き方改革も進まず、人が根づかないまま、さらに採用も難しくなる恐れがあります。
求人サイトでは、過去3年間の入社実績がゼロの青果卸が複数あり、5人入社して5人退職という事例もあります。こうした情報を見た求職者は応募をためらいます。経営者は日常業務に追われながらも、将来を見据えた改革を実行する必要があります。ベテラン社員の反発も予想されますが、会社の存続に必要だという説明を丁寧に行い、理解を得ながら実行に移していただきたいと考えます。












