データ活用で進化する店舗運営~数字に基づく意思決定と行動改革~J-Connect

J-Connectは海鮮居酒屋、餃子酒場、おでん酒場など30店舗を展開している。
コロナ禍で宴会需要が激減し大箱の総合居酒屋業態が通用しなくなったため、少人数がコンセプトの業態へと転換した。
この過程で磯貝社長は「勘や経験に頼った経営には限界がある」と痛感したという。
数字の可視化と店舗教育――J-Connectが挑んだ業務効率化の第一歩
J-Connectでは、現場の負担軽減と業務効率化を目的に、店舗運営に必要なデータを統合・可視化できる仕組みを導入に踏み切った。仕入データは『BtoBプラットフォーム 受発注』、売上データは各店舗のPOS、勤怠データは勤怠管理システムから引き出して店舗管理システムに集約させた。

代表取締役社長 磯貝 拓麻 氏
代表取締役社長 磯貝 拓麻 氏「各システムを自動連携させることで、売上・勤怠・仕入れの重要指標を日次で把握できるようになりました。
これにより、店長が毎日の営業終了後30分以上かけてエクセルに入力していた作業がなくなったのです。さらに、正確性も上がってマネジメントの質向上につながっています。
今後はKPI設計や評価制度の整備を通じて、数字に基づく運営体制のさらなる強化を考えています」

原価を制する者が利益を制す――ドリンク構成を見直したABC分析
J-Connectが取り組んだ次のステップは、蓄積されたデータを活かした利益改善だ。低価格を売りにした餃子酒場でドリンクの原価率が想定より高かったため、ABC分析をもとにメニュー構成を見直した。
磯貝「POSの機能でABC分析をしたところ、当社のほかのブランドよりもビールの販売数が想定を超えて多く、ドリンク全体の原価率が上昇していたのです。フードメニューでは原材料の単価変更が多いため、原価が変わりやすいうえレシピの変更に時間がかかります。そこで、ドリンクメニューの見直しをしました。
ハイボールやレモンサワーをメニュー表で目立つデザインに変更したことで、結果としてビール以外の注文が増え、ドリンク原価率は大幅に改善されたのです。システムを使うことで現状の課題がすぐわかり、データに基づいた改善をすることでメニュー構造を変えられたのです」
数字が語る撤退と再生――地方都市店舗の業態変更事例
出店の意思決定においても、J-Connectは数字を重視した。地方都市の駅前ビルに居抜き物件が出て出店したものの、客数が悪化したため業態変更を決断した。
磯貝「もともと同一ビルですでに居酒屋を出店していたので、新店舗の業態も売上目標も同じようにして出店したのです。しかしマーケットが小さい町のため、新店舗は2カ月で客数が伸び悩みました。そこで、業態変更したのです」
地方都市店舗の業態変更・店舗ブラッシュアップによるデータ推移
時期 | オープン時目標 | 業態変更前 | 業態変更後 | 現在 |
---|---|---|---|---|
売上 | 4,000千円 | 2,710千円 | 3,287千円 | 4,980千円 |
客数 | 1,000人 | 680人 | 1,291人 | 1,831人 |
客単価 | 3,500~4,000円 | 3,985円 | 2,546円 | 2,720円 |
食材費 | 23% | 22.60% | 40.20% | 32.90% |
磯貝「低価格をコンセプトにした業態に変更したことで客数は伸び、手応えを感じました。一方で、原価率が高くなってしまったことが明確な課題となったのです。
そこで、日次で客数が下がらないことを確認しながら、食材費や販売価格を見直しました。食材費は急激に変えてしまってはお客様の満足度に影響するので、慎重に調整します。その結果、半年後には客数増、食材費改善、客単価微増という理想的なバランスに到達しました。データの可視化と活用が撤退判断ではなく再生判断につながりました。
根拠のある数字を把握して、意思決定をスピーディに行ったことが、退店リスクの最小化と利益改善の両立につながったと考えています」
J-Connectの取り組みは、システム導入によるデータ分析にとどまらない。データを根拠に行動ですることが本質だ。
磯貝「便利なツールで店舗のPLデータ集計はとても楽になりました。その分、我々はデータをどう活かすかが重要になります。疑いの目を持って原価や客単価のデータを見て、課題に気付き、仮説と検証を繰り返し、従業員にどうブラッシュアップさせるかが鍵になります」
交通インフラを支える現場に学ぶ~誰でも回せる業務づくりとV-Manage活用術~日の丸サンズ

高速道路のサービスエリアで飲食・物販事業を展開する日の丸サンズは、タクシー事業で知られる日の丸自動車工業のレストラン部門から独立した。
現在は7か所のSAに事業所を構え、従業員数は約516名。交通インフラを支える同社だが、人手不足と業務の属人化が進む現場では、誰でもできる業務づくりが大きな課題となっていた。
そこで導入したのが、インフォマートが提供する店舗のタスク管理ツール『V-Manage』。業務指示のデジタル化、属人化排除、教育コストの削減など、現場の効率化を進めていった。
情報共有の属人化を脱却。誰でも使えるチャット&掲示板
かつては紙や口頭で伝達していた連絡事項は、漏れやタイムラグが発生しがちだったという。

事務管理 マネージャー
友光 和茂 氏
日の丸サンズ株式会社 事務管理 マネージャー 友光 和茂 氏「特にパート・アルバイト層には行き届かず、コミュニケーションロスが慢性化していました。以前使用していた連絡ツールが規約変更により有料化となったため、『V-Manage』を導入しました。
『V-Manage』は従業員単位の費用でなく事業所単位の費用だったので、社員だけでなくパート・アルバイトさんもアカウントを取得できます。何より、従業員の連絡手段だけでなく業務改善もできることで、先を見据えて採用を決めました」
ツールの導入後は、チャット機能で日常的な業務連絡を周知。また、重要な連絡事項や長期間周知すべき内容は掲示板機能に投稿し、確実に目に留まるようにした。
友光「かつては休憩室に張り紙を貼って告知していましたが、立ち寄る時間が短いスタッフも多く、見落とされがちでした。今ではスマホでいつでも確認でき、情報の伝達精度が格段に上がりました。属人化を防ぎ、全員が同じ情報を共有できる体制が整ったと感じています。
さらに、年配層やスキマバイトなど、ITリテラシーに差がある現場でもスムーズに運用が進んでいます。80歳近い従業員の方も、画面が見やすい、スマホが1台あれば簡単に使えると言っていて、手間がかからずとても助かっています」

タスク管理で「誰でもできる」を実現。初日のアルバイト・パートでも行動可能に。
『V-Manage』では、開店準備、レジ精算、トイレ清掃など毎日、毎週決まった時間にすべき業務内容をタブレットやスマートフォンで一覧化できるため、現場の誰もがやるべきことを即座に把握できる。さらに、作業を行った後は担当者が実施済みのチェックを入れる仕組みになっており、本部が現場の実施状況を把握できる。
友光「定時タスクは初めて業務するアルバイトやスキマバイトでも迷わずできるように何をするか説明を書いています。事業所毎にあった内容にできますし、スタッフの自己流による手順変更も抑制され、統一された品質での業務遂行へとつながりました」

HACCPや検品もデジタルで可視化。チェックシート機能でペーパーレス
冷蔵庫の温度記録や清掃チェック、仕入れの検品など、紙での記録・保管が当たり前だったチェックシート類も、『V-Manage』でデジタル化できる。
友光「HACCP関連の帳票類は紙で保管するとなると、ものすごいファイル数になります。こうした書類は『V-Manage』でデジタル保管し、必要になった際にすぐ確認できるようにしています。
他にも、仕入品の賞味期限チェックシートを作成して運用しています。サービスエリアでは毎日たいへん多くの種類のお土産品が入荷されます。過去に賞味期限に印字ミスのある商品が納品されたことがあり、検品の見落としを防ぐために運用しています。検品時に商品ごとの賞味期限をチェックシートに入力するほか、商品に印字された賞味期限の写真を撮影して、『V-Manage』に保存します。この取り組みを3カ月続けて、同様のミスは発生していません」
チェックシート類をデジタル化することにより、紙の保管場所が不要になっただけでなく、ファイリングの手間や管理者の押印作業も簡略化された。さらに、本部が離れた事業所すべての記録を即時確認できるため、現場への巡回や資料の取り寄せといった工数も削減されている。紙管理から脱却することで現場の負担軽減と業務品質の向上を同時に実現したといえる。

動画マニュアルで教育時間を短縮。若手・スキマバイトにも対応

日の丸サンズでは、様々なパートやスキマバイトへの教育時間を削減すべく、動画マニュアルの作成も進めている。洗い場での食器洗浄手順などは、現場で録画した動画をタブレットで視聴できるように整備した。
友光「スキマバイトの方が業務開始前にスマホで視聴していただく運用も想定しており、『人が教える手間』を最小限に抑える仕組みを構築しています。今後は社内で共通化されたマナーや基本動作についても動画共有を進め、全事業所で教育水準を平準化します」
人手不足と原価高騰を乗り越える鍵はデータ活用にあり
J-Connectと日の丸サンズの事例は、人手不足、原価高騰、業務の属人化、従業員教育といった飲食業界の課題に対し、データ活用が有効であることを示している。J-Connectは仕入・売上・勤怠を一元化し、迅速な課題把握と対策を可能に。日の丸サンズは業務の属人化を解消し、再現性のある店舗運営を構築。どちらの取り組みにも共通しているのは、システムを入れて終わりではなく、現場が使いこなすための仕組み化・体制づくりだ。
データは、見えるだけでは意味がない。誰でも使える、誰でも見られる環境を整え、組織全体で改善を目指す行動が必要だ。