「106万円の壁」撤廃決定。アルバイト・パートのシフトが変わる!?飲食店が進めるべき生存戦略【2025年最新版】

法令対策2025.11.27

「106万円の壁」撤廃決定。アルバイト・パートのシフトが変わる!?飲食店が進めるべき生存戦略【2025年最新版】

2025.11.27

「106万円の壁」撤廃決定。アルバイト・パートのシフトが変わる!?飲食店が進めるべき生存戦略【2025年最新版】

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飲食店や飲食卸の経営者の皆様は、激変する雇用ルールへの対応に追われていることだろう。 特に、ランチタイムや週末の繁忙期を支えるアルバイト・パート従業員の確保は、売上に直結する死活問題である。

2025年の税制改正により、かつての「103万円の壁」は約160万円へと引き上げられ、税金を理由にした働き控えは過去のものとなった。 しかし、経営者が一息つく暇はない。むしろ、より巨大な変化が目前に迫っているからだ。

それが、「106万円の壁」の撤廃(2026年10月施行予定)である。

これにより、パート・アルバイトの社会保険加入ルールは根本から覆ることになる。撤廃までは残りわずか。この期間を単なる「猶予」と捉えるか、「準備期間」と捉えるかで、貴店の未来は大きく変わる。

本コラムでは、決定した「壁の撤廃」の詳細と、Xデーとなる2026年10月までに経営者が打つべき具体的な「移行戦略」について解説していく。

目次

第1章:税金の壁・社会保険の壁

まず、現状と決定事項を整理しよう。

1.  税金の壁は「103万円」から160万円に引上げ

2025年の改正により、所得税の納税義務が発生する「103万円の壁」は160万円に引き上げられた。また、配偶者控除や扶養控除の収入上限も103万円から123万円に引き上がられることとなった。

 

これまで

2025年分以降

所得税が発生する年収

103万円

160万円

配偶者控除・扶養親族控除の所得要件

103万円

123万円

19~23歳未満の子の控除の所得要件

103万円

150万円

2. 社会保険の壁:2026年10月の「106万円要件」撤廃

現在(2025年11月時点)現場で起きている「106万円の壁(月収8.8万円)」による働き控えは、来年秋の改正で根本から覆ることになる。2026年10月以降、社会保険加入の決め手となっていた「賃金要件」そのものが撤廃されるからだ。
その変化を整理すると以下のようになる。

項目現在 2026年10月以降
賃金要件月収8.8万円(年収約106万円)以上撤廃(年収に関係なし)
労働時間週20時間以上週20時間以上
加入判断月収と時間の「掛け合わせ」「時間」のみで判定
現場への影響給与調整による「加入逃れ」が可能週20時間働けば強制加入
(調整が不可能に)

※対象は従業員51人以上の企業等(学生特例等は除く)

3.「稼ぎ」ではなく「時間」がすべてになる

これまでは「時給×時間」を計算し、月収8.8万円以内に収める調整が通用していた。しかし2026年10月以降、その計算は無意味となる。
ルールは「週20時間働くなら、無条件で保険に入る」という極めてシンプルなものに変わるためだ。これは働く側にとっての大きな意識改革となるだけでなく、経営者にとっては対象者の拡大による法定福利費の激増を意味している。

第2章:撤廃までに現場で起きること

2026年10月まで、まだ時間ある。しかし、現場ではすでに以下のような混乱が予想されるため、先手を打つ必要がある。

1.「駆け込み働き控え」のリスク 

制度が変わる直前まで「ギリギリまで扶養内でいたい」と考えるスタッフは、2026年の秋まで徹底的にシフトを調整しようとするだろう。これでは人手不足は解消しない。

2.「制度疲れ」による離職 

「103万が変わったと思ったら、次は106万がなくなるの?」と、度重なる制度変更にスタッフが疲弊し、「もう面倒だから週20時間未満(雇用保険も加入しない超短時間)に減らす」という極端な労働時間短縮を選ぶリスクがある。これは店舗運営にとって最悪のシナリオだ。

第3章:Xデーに向けた経営者の「移行戦略」3ステップ

2026年10月に慌てて全員を加入させれば、現場は混乱し、会社のキャッシュフローは悪化する。 賢明な経営者は、この期間を使い、段階的に「社会保険加入が当たり前の組織」へと体質改善を図るべきだ。

ステップ1:現行の支援策を「使い倒す」 

2026年10月の完全撤廃以降、現在国が用意している手厚い支援策(年収の壁・支援強化パッケージ)が継続される保証はない。「壁」が存在している今だからこそ使える助成金がある。

  • キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)の活用: 今のうちにスタッフを社会保険に加入させ、手取り補填のために賃上げや手当支給を行えば、国から助成金が出る。 「2026年にはどうせ強制加入になる。ならば、助成金が出る今のうちに、好待遇で加入しませんか?」と提案するのが、最も合理的だ。

ステップ2:週20時間未満シフトの「構造改革」

 「週20時間以上=保険加入」が絶対ルールになる以上、中途半端なシフトは経営リスクになる。

  • Aパターン(ガッツリ働いてもらう): 週20時間を大きく超えて週30時間~40時間働いてもらい、保険料負担分以上の生産性を上げてもらう。
  • Bパターン(スポットで働いてもらう): ランチのピークタイムのみ(週15時間程度)に限定し、保険加入対象外とする。 この2極化を進め、曖昧な「週20時間前後」のスタッフを減らしていく作業が急務だ。

ステップ3:価格転嫁への準備

アルバイト全員が社会保険に入れば、人件費は約15%跳ね上がる。これを吸収するには、売上アップか値上げしかない。 2026年10月の施行に合わせて値上げをするのでは遅い。今から徐々にメニュー単価を見直し、人件費増に耐えうる収益構造を作っておく必要がある。

第4章:従業員への伝え方「来年からルールが変わります」

スタッフには、早めに正しい情報を伝えることが信頼に繋がる。
「2026年の10月からは、国の法律が変わって、年収に関係なく週20時間以上働く方は社会保険に入ることになります。 会社としては、皆さんに長く安心して働いてほしいので、今のうちから社会保険に入って、将来の年金を増やしたり、手厚い保障を受けたりする働き方に切り替えませんか? 今なら移行のための手当も出せます」
このように、「強制される」のではなく「会社の支援があるうちに切り替える」というポジティブな選択肢として提示することが重要だ。

まとめ:2026年問題は、今から始まっている

「106万円の壁」の撤廃は決定事項だ。もはや「壁対策」をして逃げ切ることはできない。 これからの飲食店経営は、「全従業員社会保険加入」を前提とした高収益モデルへと脱皮できるかどうかが勝負の分かれ目となる。
2026年10月になって「知らなかった」「赤字になる」と騒いでも後の祭りだ。 まだ助成金や準備期間がある今こそ、社労士などの専門家と連携し、組織の「骨格」を作り変えるラストチャンスである。

参照
年収の壁・支援強化パッケージ(厚生労働省)
社会保険適用拡大 特設サイト(厚生労働省)
短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大(日本年金機構)
No.1191 配偶者控除(国税庁)
No.1195 配偶者特別控除(国税庁)

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