2025年度の最低賃金、地方圏で8%引き上げ。実施時期は地域差

法令対策2025.10.17

2025年度の最低賃金、地方圏で8%引き上げ。実施時期は地域差

2025.10.17

2025年度の最低賃金、地方圏で8%引き上げ。実施時期は地域差

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2025年度(令和7年度)の地域別最低賃金が改定され、全国加重平均で66円増の1,121円(改定前1,055円)となることが発表された。改定額は昨年に続いて企業経営に大きな影響を与える水準であり、特に地方圏や人件費比率の高い業界はコスト構造や作業効率の見直しが求められそうだ。

目次

都道府県ごとの最低賃金と引き上げ時期

北海道・東北

都道府県名

最低賃金時間額(円)

引上げ額(円)

引上げ率(%)

発効日

北海道

1,075(1,010)

65

6.4

2025年10月4日

青森

1,029(953)

76

8.0

2025年11月21日

岩手

1,031(952)

79

8.3

2025年12月1日

宮城

1,038(973)

65

6.7

2025年10月4日

秋田

1,031(951)

80

8.4

2026年3月31日

山形

1,032(955)

77

8.1

2025年12月23日

福島

1,033(955)

78

8.2

2026年1月1日

※()内は改定前の地域別最低賃金額

関東・甲信

都道府県名

最低賃金時間額(円)

引上げ額(円)

引上げ率(%)

発効日

茨城

1,074(1,005)

69

6.9

2025年10月12日

栃木

1,068(1,004)

64

6.4

2025年10月1日

群馬

1,063(985)

78

7.9

2026年3月1日

埼玉

1,141(1,078)

63

5.8

2025年11月1日

千葉

1,140(1,076)

64

5.9

2025年10月3日

東京

1,226(1,163)

63

5.4

2025年10月3日

神奈川

1,225(1,162)

63

5.4

2025年10月4日

山梨

1,052(988)

64

6.5

2025年12月1日

長野

1,061(998)

63

6.3

2025年10月3日

※()内は改定前の地域別最低賃金額

北陸

都道府県名

最低賃金時間額(円)

引上げ額(円)

引上げ率(%)

発効日

新潟

1,050(985)

65

6.6

2025年10月2日

富山

1,062(998)

64

6.4

2025年10月12日

石川

1,054(984)

70

7.1

2025年10月8日

福井

1,053(984)

69

7.0

2025年10月8日

※()内は改定前の地域別最低賃金額

東海

都道府県名

最低賃金時間額(円)

引上げ額(円)

引上げ率(%)

発効日

岐阜

1,065(1,001)

64

6.4

2025年10月18日

静岡

1,097(1,034)

63

6.1

2025年11月1日

愛知

1,140(1,077)

63

5.8

2025年10月18日

三重

1,087(1,023)

64

6.3

2025年11月21日

※()内は改定前の地域別最低賃金額

近畿

都道府県名

最低賃金時間額(円)

引上げ額(円)

引上げ率(%)

発効日

滋賀

1,080(1,017)

63

6.2

2025年10月5日

京都

1,122(1,058)

64

6.0

2025年11月21日

大阪

1,177(1,114)

63

5.7

2025年10月16日

兵庫

1,116(1,052)

64

6.1

2025年10月4日

奈良

1,051(986)

65

6.6

2025年11月16日

和歌山

1,045(980)

65

6.6

2025年11月1日

※()内は改定前の地域別最低賃金額

中国

都道府県名

最低賃金時間額(円)

引上げ額(円)

引上げ率(%)

発効日

鳥取

1,030(957)

73

7.6

2025年10月4日

島根

1,033(962)

71

7.4

2025年11月17日

岡山

1,047(982)

65

6.6

2025年12月1日

広島

1,085(1,020)

65

6.4

2025年11月1日

山口

1,043(979)

64

6.5

2025年10月16日

※()内は改定前の地域別最低賃金額

四国

都道府県名

最低賃金時間額(円)

引上げ額(円)

引上げ率(%)

発効日

徳島

1,046(980)

66

6.7

2026年1月1日

香川

1,036(970)

66

6.8

2025年10月18日

愛媛

1,033(956)

77

8.1

2025年12月1日

高知

1,023(952)

71

7.5

2025年12月1日

※()内は改定前の地域別最低賃金額

九州・沖縄

都道府県名

最低賃金時間額(円)

引上げ額(円)

引上げ率(%)

発効日

福岡

1,057(992)

65

6.6

2025年11月16日

佐賀

1,030(956)

74

7.7

2025年11月21日

長崎

1,031(953)

78

8.2

2025年12月1日

熊本

1,034(952)

82

8.6

2026年1月1日

大分

1,035(954)

81

8.5

2026年1月1日

宮崎

1,023(952)

71

7.5

2025年11月16日

鹿児島

1,026(953)

73

7.7

2025年11月1日

沖縄

1,023(952)

71

7.5

2025年12月1日

※()内は改定前の地域別最低賃金額

[参考]厚生労働省「令和7年度地域別最低賃金の全国一覧

平均6.3%、地方圏は8%超の賃上げ

今回の改定で注目すべき点は、地方圏における引上げ率の高さだ。最低賃金の水準が相対的に低い地域では、水準是正の動きが働き、8%を超える大幅な引き上げとなった。

秋田、熊本、大分、岩手、愛媛、長崎、福島、山形など、多くの県で70円台後半から80円台の引き上げとなり、熊本は82円増で8.6%の上昇率、秋田も80円増で8.4%の上昇率となった。地方圏の企業は、既存の給与体系はもとより、人時生産性やコスト構造をあらためて見直す必要がある。

企業が取るべき戦略的対応

対象はアルバイト・パート、派遣社員、正社員問わずすべての従業員となる。採用難と人件費高騰が続く日本経済において、賃上げはコストアップだけではなく、生産性向上のための変革の機会と捉えるべきだろう。

(1) 発効日に合わせた給与体系の総点検

多くの都道府県では2025年10月から12月、一部は2026年1月から3月に発効日を迎える。

● パート・アルバイト
昇給対応だけでなく、通勤手当などを含めても最低賃金を下回らないか、特に注意深く確認する必要がある。

● 正社員(月給者)
月給を時間給に換算し、最低賃金との差額を確認する。特に基本給が低い職種は、是正が必須だ。

(2) IT・デジタル化による時給単価の向上

最低賃金が上がるということは、従業員一人あたりの時給単価の価値が上がったことを意味する。このコスト増を吸収するには、労働生産性の向上が不可欠になる。

● 単純作業の自動化
定型的な事務作業やデータ入力のRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)導入。

● 店舗・現場の省人化
セルフレジ、モバイルオーダー、請求書などの帳票管理、在庫管理のデジタル化など。

(3) 待遇改善を機とした人材定着戦略

賃上げは、優秀な人材の獲得・流出防止に直結する。最低賃金を上回る魅力的な賃金に加え、以下の非金銭的な待遇改善を組み合わせることで、エンゲージメント向上につながる。

● 柔軟な働き方
テレワーク、フレックスタイムの導入
● スキルアップ支援
資格取得や研修費用の全額補助
● 明確な評価制度
賃上げが評価と連動していることを明示し、従業員のモチベーションを維持

企業は猶予なく、各地域の発効日までに具体的な対策を実行に移す必要がある。今回の最低賃金改定は、単なるコスト増ではなく、日本の働き方と生産性を次のフェーズへ移行させるための不可避な投資と捉えるべきだろう。

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