消費者庁、食品表示のデジタルツール活用検討状況と展望を解説

セミナー・イベントレポート2026.01.27

消費者庁、食品表示のデジタルツール活用検討状況と展望を解説

2026.01.27

消費者庁、食品表示のデジタルツール活用検討状況と展望を解説

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食品事業者にとって食品表示の適正な管理は重要な責務である。近年、原材料調達の不安定化や表示事項の増大に伴い、従来の容器包装(パッケージ)への直接表示のみでは、情報の正確性と視認性の両立が困難になりつつある。こうした中、消費者庁は食品表示のデジタルツール活用に向けた本格的な検討を進めている。

本稿では、2025年12月に開催されたインフォマート主催「BtoBプラットフォーム 規格書20周年記念セミナー」において、消費者庁担当者が事業者向けに解説した最新の検討状況と、将来的な制度設計の方向性を紹介する。

目次

制度検討の背景と実証事業の成果

消費者庁 食品表示課 衛生調査官 品質表示担当 坊 英哲 氏 セミナー登壇写真
消費者庁
食品表示課 衛生調査官
品質表示担当 坊 英哲 氏

食品表示を巡っては、義務表示事項の増加によりパッケージの表示面積がひっぱくし、「見にくさ」が課題となっている。消費者からは個別のニーズに応じた情報提供が求められており、デジタルツールを活用してこれらの課題を解決することが事業の背景にある。

消費者庁は2020~21年度にかけて実証事業を実施した。JANコードをキーとし、スマートフォンでJANコードを読み取ることで詳細情報を表示する仕組みを検証し、以下の機能の有用性を確認している。

  • 個別最適化された情報提供
    事前に登録したアレルギー情報に基づくアラート表示。
  • 視認性の向上
    ユーザーによる文字サイズの変更や、表示項目の並べ替え。
  • 動的な情報活用
    栄養成分表示において、1日当たりの摂取目安量に対する割合の算出。

一方で、事業者ごとに提供データのフォーマットが統一されていない点や、デジタル表示と現物商品の1対1対応をどう担保するかといった課題も浮き彫りとなった。

検討分科会による制度設計の基本方針

2024年度から開始された「食品表示へのデジタルツール活用検討分科会」では、国際的なガイドライン(コーデックス委員会)の動向を踏まえ、技術的・制度的課題の取りまとめが行われた。主な方針は以下の通りである。

  • 実施の任意性
    デジタル表示の導入は事業者の任意とされ、既にシステム導入等により商品情報をデータ化している事業者を主なターゲットとして制度設計が行われる。
  • 管理体制
    国が一元管理するデータベースではなく、事業者が自社や既存のシステム等でデータを管理する「分散管理方式」が現実的であると判断された。
  • 使用ツール
    スマートフォン等を用いて二次元コード(QRコード等)を読み取る方法が妥当とされた。
  • 商品とデータのひも付け(1対1対応)
    デジタル表示が義務表示の代替となる以上、商品とデータの正確な一致が不可欠である。正確性担保のため、直接表示画面へ遷移する方式に加え、ロット番号等を選択して表示させる方式も許容される。以下の2パターンが容認される見通しだ。
    •パターン1
    二次元コードから直接、該当商品の表示データへ遷移する。
    •パターン2
    商品ページを経由し、消費者が手元の商品の賞味期限やロット番号を選択して表示を確認する。これにより、容器包装を変更せずに、原材料の変更等に合わせた柔軟な表示更新が可能となる。

[参考]消費者庁「食品表示へのデジタルツール活用検討分科会取りまとめ」(2025年12月)

広告等その他情報との棲み分けルールと監視体制

デジタルツール活用特有の懸念点に対し、以下のルール作りが検討されている。

  • 広告等その他情報との棲み分けルール
    義務表示情報が優先的に表示されるべきであり、消費者の視認を妨げるポップアップ広告や、表示より先に広告が現れる構成は不適切であり、制限される方向である。ただし、表示の見やすさを損なわない範囲でのバナー表示などは、現状の容器包装における欄外表示と同様に許容される見込みである。
  • 修正履歴の保存
    データの書き換えが容易となるため、表示内容の修正履歴を一定期間保管することを要件化とする方向で、監視の体制を担保する方針である。
  • データの形式
    将来的なシステム間連携を見据え、全角・半角の統一など、入力方法の統一したルールが必要となる。

[参考]消費者庁「食品表示へのデジタルツール活用検討分科会取りまとめ」(2025年12月)

[参考]消費者庁「食品表示へのデジタルツール活用検討分科会取りまとめ」(2025年12月)

今後の主な論点

最大の議論の焦点は、表示事項のうち「何をパッケージに残し、何をデジタルに移行するか」である。コーデックスの議論では、名称、アレルゲン、消費・賞味期限などの安全・栄養に直結する情報は引き続きパッケージへ表示し、それ以外をデジタル代替の対象とする方向性が示されている。日本における具体的な項目の仕分けは、2026年度以降に本格的な議論が行われる予定だ。

事業者が準備すべきこと

直ちに表示がデジタル化されるわけではないが、実務を円滑化するために以下の準備を進めていくことが望ましい。

  • 自社内における商品情報のデジタル管理体制の構築
  • 消費者庁が今後作成する詳細なガイドラインに適合したデータ運用の検討

デジタル化が実現すれば、原料調達の変更に伴う包材変更コストの削減や表示ミスの迅速な修正が可能なことなど、品質管理・生産管理上の大きなメリットが期待される。今後の動向を注視する必要がある。

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