紙に埋もれた日常業務をいかに効率化するべきか
【Q】御社の事業について教えてください。
当社は1990年の創業以来、「生産された美しい花を消費者に」をモットーとして、一貫して生花や鉢物の卸売りを行っています。東京都の大田市場をはじめ、世田谷市場や横浜南部市場、愛知や大阪の市場などで場内仲卸として6店舗を展開しています。
主な取引先は結婚式場ですが、生花店や葬儀社、お花の教室などともお付き合いがあります。こうした取引先からの注文を受けて、場内で生産者から花を仕入れ、配送するというのが基本的な業務内容となります。
ただ、それだけでは他の卸業者と変わりません。当社は単なる卸売りだけでなく、結婚式場に企画を提案したり、新しい花の売り方を考えたりと、花の生産・販売に関わる新しいビジネスモデルを常に模索して、花をより生活に密着したものにしたいという創業以来の思いを追い続けています。(山下真介常務取締役、以下同)
【Q】市場内にあるだけに朝が早いと聞きました。
やはり朝は早いですね。当社の採用情報を見ていただければ分かるのですが、業務時間は深夜の1時から午前10時までという勤務形態と、朝6時から午後3時までという勤務形態があります。
一方で配送業務は朝の8時から夕方までと、こちらは結婚式場やお花屋さんの時間に合わせなければなりませんので、会社全体としての稼働時間はどうしても長くなってしまいます。
また、受注は時間に関係なく入ってきます。顧客担当が、それぞれ電話や対面で注文を受けることもあります。いまは9割9分がFAXですね。あとはメールでの注文がわずかにあるくらいです。受注業務はどうしても発注側の都合が優先されてしまいます。こちらが深夜も動いているのを知っている取引先からは深夜でもFAXが流れてきますし、土日も人が動いているために、24時間365日、つねに注文を受け付けている状況です。
おもに受注を担当する者は各店に2~3人いますが、実質は仕入れスタッフも注文を処理しますし、顧客担当も担当する顧客の注文だけを受けるわけではありません。ほぼすべての従業員が何らかの形で受注業務に携わっています。
注文を受けたら、情報を基幹システムに入力します。そこから発注書を出力して、これをバインダーに挟んで現場に出て、発注書をみながら検品したり発送チェックに使ったりしています。事務所も現場も、紙であふれかえっていました。
【Q】紙ベースでの業務を改善するため、受注システムを導入されました。
受注システム『TANOMU』を導入しました。幸い初期投資も少なく、すぐに稼働できるということも魅力でした。スマホやタブレットで操作でき、商品の登録も簡単だし、これで現場での手作業の部分を少しでも軽減できると考えたのです。
実際の稼働はこれからですが、画面を見た限りでは結構細かく作られているという印象ですね。しかも最小限の機能に特化されているので、紙を電子化したい。という弊社が抱えている問題をクリアするには最適だと思っています。現在は稼働途中ですが、これが基幹システムと連動されれば、入力の手間もなくなります。
業界刷新の先駆けとなるために
【Q】社内業務の電子化は進みそうでしょうか。
社内で受注のFAXが減り、お客様も手書きの手間がなくなるのは間違いありません。それに付随して、紙では管理できない過去の受注履歴の検索、発注書の紛失や、FAXが読みにくいなどというストレスからも解放されることになりそうです。
もちろんすべての問題が解決するわけではありません。受注情報を基幹システムに入力できるようになったとしても、それを発注書、検品書、納品書の形で出力した用紙で現場の多くの業務が進んでいるので、プリント自体は必要です。
今後はこの部分をどうペーパーレス化するかが課題です。せっかく電子化したデータですので、それをそのまま発注書や納品書に変更したり、請求書として転用したりするような改善をしたいと思います。
【Q】業界全体のデジタル化には時間がかかりそうでしょうか。
そもそも卸業界は古い業種なだけに、全体的にアナログです。発注の9割以上がFAXという現状からも分かるとおり、デジタル化がほとんど進んでいません。電子メールでの発注すら、なかなか浸透しない状況にあります。
わたしたちがTANOMUのシステムを駆使したとしても、お客様が使いこなせない可能性もありますし、そもそもPCやタブレットの導入すら抵抗を示す取引先もいるでしょう。
旗振り役というと大げさですが、わたしたちがデジタルを駆使して成功すれば、業界全体にデジタル化が普及していくと思っています。そのためには少しでも早く習熟しておく必要があります。それも導入を決めた要因のひとつです。
【Q】次の展開については、どのように考えていますか。
じつは花の仲卸業界全体が抱える問題として、少子化があります。人口が減るわけですから、当然結婚式場の利用頻度も減っていきます。
ただでさえ結婚式をあげなかったり、家族だけで結婚式を行ったりという、いわゆる「ジミ婚」が一般的になっていて、10年先には、ブライダル業界そのものの取引金額は大幅な右肩下がりになるといわれています。
そのため今後はブライダル業界で自社の知名度をあげることはもちろん、売上が結婚式に偏らないように多岐にわたる販売チャネルを持っていることが必要になるのです。
わたしたちはバイヤーとして新しい商品を探し、これを既存の販売先に企画提案という形でもっていく。あるいは新規に販売先を開拓して、それぞれにあった独自の規格を策定し、一緒に販売しませんかとプッシュする必要があります。そういう外向きの営業活動にこそ力を入れるべきですし、それこそが仲卸業としての醍醐味なのです。
今回受注システムを新たに導入したことで、これまで手作業だった分の時間が空けられるはずですので、その分を販路拡大や新規の営業展開に当てていきます。
ゆくゆくは商品案内などの機能をつかい、販売面でも活用していくつもりです。ECサイトを作って連動することで、新たな営業展開ができることを期待しています。
株式会社プランツパートナー
住所:東京都大田区東海2-2-1
事業内容:生花鉢物の卸売
公式HP:http://www.plantspartner.co.jp/